中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

ルイ15世が催した大祝宴(世界史レッスン第16回)

2006年05月30日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」に連載中の「世界史レッスン第16回」は、「指揮棒に殺された作曲家」。フランス宮廷でおもうさま権勢をふるった作曲家リュリの、不運な死因について書いた。⇒http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2006/05/post_71cc.html#more

 ところで未来のルイ16世とマリー・アントワネットのために、ルイ15世が催した大祝賀行事は、たださえ財政悪化のフランスをさらに傾かせることになった。

 有名なエピソード。
 祝宴が終わって大満足の15世が、財務総監に聞いた、「予の催した宴はどうであった?」
 総監の返事 --「陛下、想像を絶して(アンペイヤーブル)おりました」

 このアンペイヤーブルという言葉には、「支払不能」の意味もある。総監の苦虫を噛み潰した表情が見えるようだ。

 もうひとつ、もっとよく知られたエピソード。

 晩餐会はヴェルサイユ宮殿「オペラの間」で、王を含めた22人がテーブルを囲んだ(このテーブル、8,5メートル×4,25メートルの巨大さ)。

 花婿ががつがつ食べているのを案じた15世が、「おまえは今夜はあまり胃に負担をかけてはならぬ」と言うと、返ってきた答えが、「なぜです?夕食をたくさんとった方がよく眠れますが」。

 そしてたっぷり眠った彼は、新婚初夜の翌朝、手帳に「リヤン(何ごともなし)」と書き付けたのだった。

 どう考えてもアントワネットが可哀そう・・・


♪♪♪「メンデルスゾーンとアンデルセン」⇒http://www.saela.co.jp/isbn/ISBN4-378-02841-7.htm
コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オペラ「エウゲニ・オネーギン」と映画「オネーギンの恋文」

2006年05月26日 | 音楽&美術
 前回の続き。

 実はオペラの「オネーギン」には重大な欠点がある。タイトルロールでありながら、オネーギン役のバリトン歌手に、ろくなアリアが与えられていないのだ。

 ビゼーの「カルメン」を大いに買っていたチャイコフスキーは、4人の男女の性格の違い、声のアンサンブル(悪女カルメンはメゾ、清楚な乙女ミカエラはソプラノ、破滅する恋人ホセはテノール、自信満々の闘牛士エスカミーリョはバリトン)といった、くっきりした色分けを「オネーギン」にも取り入れた。

 人生を醒めた眼で見るオネーギン(バリトン)、見果てぬ夢に憧れるタチアーナ(ソプラノ)、単純なロマンティストの青年レンスキー(テノール)、人生の上澄みだけを気楽に味わう美人のオリガ(メゾソプラノ)--ここまではよかった。

 オリガは完全な脇役だからまだしも、あとの3人には聴かせどころがなければはじまらない。タチアーナは延々20分もの「手紙の場」という大アリアがある。レンスキーには決闘を前に死を予感してうたう、切々たるアリアがある。おまけに最後の幕にほんのわずか登場するだけのグレーミン公爵でさえ、忘れがたいアリアがある。なのにオネーギンには、2重唱や4重唱しかなく、単独のアリア2つは短すぎてアリアとは呼びがたい!

 これはチャイコフスキーが、あまりにタチアーナへ傾倒してオネーギンを嫌ったせいだと言われる。真相はわからないが、せめて初登場の場で人生の倦怠をうたわせるか、タチアーナと再会したとき恋の苦しさをうたう長大なアリアを与えていれば・・・ああ、惜しいなあ、全く残念。というわけで、このオペラは評価が分かれているのです(わたし個人は偏愛しているのだけれど)。

 まるでそうしたものを補うかのようにできたのが、イギリス映画「オネーギンの恋文」(マーサ・ファインズ監督)。オネーギンの心理の微妙な動きが丹念に描かれ、若さの傲慢、焦り、そして悲恋へと一直線で、泣けます・・・

 とりわけスケートのシーンが美しい。
 --オネーギンを見つめながら、公爵夫人となったタチアーナがすべってくる。声をかけてもらえるかもしれないと期待に身をふるわせる彼の前を、彼女は無言ですうっと横切ってゆく。

 とらえそこねた恋。

☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

怖い絵
怖い絵
posted with amazlet on 07.07.14
中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」

♪♪「恋するヒロイン--オペラにみる愛のかたち」⇒http://book.asahi.com/special/TKY200602280388.html

 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

恋を失うことでしか成長できない(チャイコフスキー「エウゲニ・オネーギン」

2006年05月25日 | 音楽&美術
 モスクワからサンクトペテルブルクまで列車で走ったことがある。車窓からの風景は底知れぬ広大さで、ちっぽけな人間など飲み込まれてしまいそうだった。

 かつてロシアの地主階級は、雪が降ると隣が近くなると喜んだという。橇を使えば早いからで、田舎ではそれほど近隣が遠かったのだ。そんな単調な暮らしでは、若い娘は、自分にふさわしい相手がどこにいるのか、はたして運命の相手に会えるのか、不安でしかたがなかったろう。夢見る文学少女タチアーナがそうだったように。

 「エウゲニ・オネーギン」(原作プーシキン)は、タイトルとは裏はらに、主人公はオネーギンではなく、むしろこのタチアーナだ。彼女のやるせない恋の破局、取り返しのつかない青春の幻滅が、美しく叙情的な音楽とあいまって切々と胸を打つ、これはチャイコフスキーの最高傑作オペラである。

 物語は、19世紀初頭、オネーギンがタチアーナの家を訪問したときに始まる。叔父から莫大な遺産を相続したオネーギンは、社交界でさんざん浮名を流してきた、いわゆる高等遊民で、若くて才能がありながら、世間を斜に構えてしか見られない皮肉屋だ。

 けれど彼の都会的で洗練された様子は、地主未亡人の娘で夢みがちなタチアーナを圧倒する。周りには彼のような男性はひとりもいなかった。彼女は一途な乙女心から、彼こそ長い間待ち望んでいた運命の人と確信し、会ったその夜にもう長い手紙を書き、燃える思いを打ち明ける。

 しかしオネーギンにとって、タチアーナはただの田舎娘にすぎない。これまで出会った女性たちとはどこか違うと感じながらも、彼は自分のスタイルを貫くため、冷たく、いかにも分別ありげに、彼女をこう諭す、恋などというものは結婚した瞬間、色褪せるものだ、自分は結婚には向かない相手だ、と。

 数年後、長い国外旅行から帰国したオネーギンは、相変わらず何に対しても退屈しつつ、知人のグレーミン公爵が主宰する大夜会へ顔を出す。その席で老グレーミンから紹介された彼の若い夫人こそ、誰あろう、あのタチアーナだった。

 何という優雅さ、女王のごとき威厳、華やかな美しさ、まるで別人である。こんど圧倒されるのはオネーギンの方だった。こんど長い恋の手紙を書くのもオネーギンの方だった。タチアーナは無視する。

 オネーギンはストーカーのように、彼女のあとをつけまわさずにはいられない。そしてついに恥も外聞もなくタチアーナの前へひざまずき、愛を乞う。揺れる心を抑えていた彼女は、その情熱にいったんは屈しかけたが、夫へ操をたてたいと、オネーギンに永遠の別れを告げる。

 ここに彼女は青春の恋と決別し、オネーギンは今さらながら自分の愚かしさに気づくのだ。

 恋を失うことでしか成長できなかったふたり。2度とやり直しのきかない過去 --

 とはいえよく考えてみると、あの時点でタチアーナがオネーギンと結ばれても幸せにはなれなかっただろう。彼女が現在、愛のない結婚をしていると解釈するのはまちがいで、オネーギンにまだ官能的に惹かれているにせよ、それと穏やかな結婚生活を交換するほどではなかった。

 彼女はよく知っていたはずだ。蛹が蝶になるようにみごとな変身をとげられたのは、誰のおかげかということを。自分のことで精一杯のオネーギンとなら、とてもこうはゆかない。

 グレーミン公爵は、戦場で足に傷を負った老将軍。肉体は不具でも精神は健やかで、心の不健康なオネーギンとは正反対だ。彼と妻の過去のいきさつを知らないグレーミンは、オネーギンの前でタチアーナへの深い思いを語る、「彼女によって再び命を与えられた」こと、「運命に鍛えられた白髪の軍人の情熱ははかりしれない」ことを。

 グレーミンのような男性が恋の勝利者になることを、観客は納得するに違いない。「運命に鍛えられた」彼は、白髪になっても情熱のとりことなり、妻を恋し、大きな愛情で彼女をつつみ、かくれていた彼女の魅力を最大限に引き出した。成熟とはそういうことをいうのであろうし、それは必ず報われる。

 オネーギンもタチアーナに拒絶されたことで、やっと成熟への一歩を踏み出せたのではないか。だとしたらグレーミン公爵は、数十年後のオネーギンの姿であるかもしれない。


♪♪♪拙著「恋するヒロイン - オペラにみる愛のかたち」⇒http://book.asahi.com/special/TKY200602280388.html


































コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ナポレオン御用達画家ダヴィッドの盛衰(世界史レッスン第15回)

2006年05月23日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkids ぷらざ」に連載中の<世界史レッスン第15回>は、「いつの時代もファッションは」。ナポレオン時代に流行したシュミーズドレスについて書いた。このファッションはもともとイギリス発祥らしく、映画「プライドと偏見」(オースティン原作「高慢と偏見」)でもヒロインが着ていたのを覚えている人は多いだろう。⇒http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2006/05/post_acc1.html#more

 さて<世界史レッスン>でとりあげた、「ナポレオンの戴冠式」のジャック・ルイ・ダヴィッド(1748-1825)だが、彼はナポレオン御用達といっていいほど、ナポレオンのプロパガンダ的肖像画を山ほど描いた画家である。

 商人の息子として生まれたダヴィッドは、画家になりたてのころはルイ16世のために制作したりした。革命が起こると政治活動に没頭し、16世の処刑に賛成票を投じたことで知られる。

 やがてロベスピエールがギロチン台で首を切られると、ダヴィッドも投獄され、あわやというところを王党派だった妻のとりなしなどで釈放される。その後ナポレオンが登場すると熱狂的な支持者となり、この英雄の真実の姿というよりは「そうあってほしい」姿を何度も画布に描くようになった。

 個人的にはダヴィッドの硬直したような絵画スタイルはあまり好きではない。しかし「ナポレオンの戴冠式」はもっとも彼のスタイルにあい、成功例だと思う。

 とはいえこれも現実の戴冠式そのままの情景ではなかった。

 よく知られるようにナポレオンは、法王ピオ7世をローマから呼んだにもかかわらず、ノートルダム寺院での戴冠式では法王からではなく、自らが自らの頭上に王冠を置いたのである。

 ダヴィッドは、そのような不遜な態度を描くのはまずいと判断したのだろう。ナポレオンがジョセフィーヌに冠をかぶせるというシーンに書き換えた。権力がめまぐるしく変わる様子を間近に見てきたダヴィッドらしい判断といえよう。

 彼が恐れたとおり、再び権力の交代がおきた。ワーテルローの闘いでナポレオンが敗退するや、ダヴィッドはブリュッセルへ亡命。その地で10年生きたが、もはや絵を描く力は残っていなかった。


☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

怖い絵
怖い絵
posted with amazlet on 07.07.14
中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」

♪♪アサヒコムで紹介の拙著一覧⇒http://book.asahi.com/special/TKY200602280388.html




 
コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

メンデルスゾーンのオラトリオ「エリア」 -- サイトウキネン・フェスティバル松本

2006年05月21日 | 音楽&美術
 今夏のサイトウ・キネン・フェステイバル松本では、メンデルスゾーンの「エリア」が演目に入っている。この作品は、ヘンデルの「メサイア」、ハイドンの「天地創造」とともに、3大オラトリオ(聖譚曲)のひとつとされているが、日本での上演機会はそう多くなかった。

 オラトリオは演奏会用の作品だが、サイトウ・キネンはフィレンツェ歌劇場との合同制作によって、オペラ的な演出をほどこすというので楽しみだ。

 エリア(エリヤ)というのは旧約聖書に登場する、ヘブライの預言者。キリストの先がけともいわれ、旱魃の襲来を予言したことで知られる。
 
 数々の奇跡をおこない、民を救ったが、最後は「おお、主よ、足れり、我が命を召したまえ」と神に祈り、シナイ山から火の馬の引く火の車に乗って旋風の中、天へのぼっていったという。
 なかなかドラマティックな生涯なので、オペラ風な演出にぴったりだろう。

 メンデルスゾーンがこのオラトリオを作曲しているさいちゅう、奇しくもドイツでは現実に旱魃による凶作が続き、各地で飢餓の報告が相次いでいた。1848年には農作物の高騰に怒った人々が暴動まで起こしている。
 彼は手紙に「今の世にエリヤのような神の預言者がいてくれたら、どんなによかったでしょう」と書いている。

 初演は英語訳による、イギリスのバーミンガムでだった。メンデルスゾーン本人が指揮し、圧倒的な成功をみたが、彼の体調はこのころから崩れだす。各国と演奏契約を結びながら、急死によって果たせなかった。

 ウィーンでのコンサートは、こんなふうにおこなわれたーー演奏者はみんな喪服を着て、指揮台はふたつ用意された。メンデルスゾーンが指揮するはずだった指揮台には黒布がかけられ、その上に月桂冠と楽譜が置かれた。

偉大なる音楽家への敬意が、こうやって示されたのである。

☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

怖い絵
怖い絵
posted with amazlet on 07.07.14
中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」

♪♪「メンデルスゾーンとアンデルセン」⇒http://www.saela.co.jp/isbn/ISBN4-378-02841-7.htm




















コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヒトラーのルーヴル美術館占拠(映画で学ぶ世界史③)

2006年05月20日 | 映画
 アナトール・リトヴァク「将軍たちの夜」(1966年米)は、第二次世界大戦の混乱の中で起こった娼婦連続猟奇殺人事件を軸に、戦争が解き放った<異常>を描いて見ごたえがある。

 発端は、ナチ占領下のワルシャワ。下町で売春婦が惨殺され、捜査にあたったドイツ人少佐は、目撃証言などから容疑者を3人のナチ将軍にしぼりこむ。だが犯人を特定しないうち、上層部からパリへ異動させられてしまう。

 やがてそのパリもドイツに占領され、将軍たちも移ってきて、またも売春婦が殺される。少佐はいっそう闘志を燃やすが、将軍のふたりはヒトラー暗殺計画<ワルキューレ作戦>を指導していたと判明。ここでようやく犯人が明らかになり、少佐はその男のもとへ駆けつけるのだが・・・(かなりの映画的びっくりが用意されています)。

 ところでピーター・オトゥール演じる犯人像が鮮烈で、半ば地でやっているのでは、と思ってしまうほどインパクトが強い。病的な不潔恐怖。戦場にありながら、部下の靴の汚れさえ許さないこの男の世界観においては、ユダヤ人も弱者も娼婦もすべて不潔なゴミでしかない。ゴミは一掃すべしと信じ、将軍という立場を利用して不必要なまでに町を破壊し、敵を殺戮し、まだ足りなくて深夜ひそかに女性の肉体を解体する。

 彼がルーヴル美術館へ行くシーンが見ものだ。当時、ここはナチが占拠して一般人を締め出していた。彼は部下から解説されながら、いかにも無関心に足早で名画の前を通ってゆくのだが、ゴッホの自画像(現在はオルセー美術館蔵)の前へきて、呪縛されたかのように身体がフリーズしてしまう。

 それはゴッホが錯乱の恐怖に怯えながら、病院で描いたもの。険しい目つき、尖った頬、猛々しい髪と頬髯、妙に歪んだ左肩ーーどれも尋常ならざる負のエネルギーを放射し、背景の渦とともにまがまがしさを増幅させていた。

 彼はこの絵に魅入られたように動けない。自分の内面と共鳴して、烈しい軋み音をたてているのであろう。カメラはゴッホの目と、オトゥールの驚くほど薄い色した眼を交互に映し、異様な、不快な音楽をかぶせる。まさに背筋も凍るとはこのことだ。

 ところがおもしろいのはこの先で、異常なのはこの男だけではないのだ。彼を執拗に追う少佐が、時間の経過とともにどんどん奇妙さを増してゆく。彼は自分の上官を少しも恐れず、いや、そればかりか戦況が自国の不利へ傾こうと、ヒトラーが暗殺されかかろうと、全く興味を示さない。娼婦殺しを挙げたいとの一念にこりかたまり、ことの大小が測れなくなっている。

 そこには正義を追求するというのとは微妙に異なる、何かしら尋常ならざるもの、ゴッホや将軍にも通じかねない、底知れぬ無気味さがたゆたい、彼らはもしかして同質の人間なのではと、しみじみ怖ろしくなるのであった。

☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

怖い絵
怖い絵
posted with amazlet on 07.07.14
中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」






♪♪♪アサヒコムで紹介の,拙著一覧です⇒http://book.asahi.com/special/TKY200602280388.html





 












 







コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「アーレントとハイデガー」 --哲学者たちの恋

2006年05月19日 | 
 エルジビェーター・エティンガー「アーレントとハイデガー」がめちゃくちゃおもしろい。著者はポーランド人で、ワルシャワ・ゲットーを生きのび、現在アメリカの大学教授。ふたりの哲学者の長く続いた恋に焦点をしぼって描いている。

 ハンナ・アーレントがマールブルク大学哲学教授だった35歳のマルティン・ハイデガーに出会ったのは、18歳のとき。たちまち恋に陥り、不倫の関係へ。

 やがてヒトラーが政権を握り、ユダヤ人だったアーレントはアメリカへ亡命。一方ハイデガーは親ナチだったから学長へとのぼりつめ、自分の師フッサールやヤスパースを追放する。戦後、アメリカで華々しく活躍するアーレントによって、ハイデガーの立場はいわば「救われる」。

 ふたりの恋は大きく3期に分けられる。第1期は、官能的な恋の2,3年。戦争をはさんで、その後の中年期(これがドロドロ)、最後はふたりが死ぬまでの1,2年だ。アーレントが亡くなるのは1975年、その5ヵ月後にハイデガーは他界する。

 不思議な関係だ。真実なのだろうか。つまりこれほどの卑劣漢を、これほど長く愛し続けたアーレントの思いの深さとは何なのか。しかも彼女はどうしようもなくハイデガーに惹かれながら、夫のブリュッヒャーなしでは生きられないほど支えられてもいる。

 ハイデガーは悪の魅力をふりまいていたのだろうか。砂糖壷みたいに女性たちを周りに集めたし、男性に対してもカリスマ的磁力があった。ヤスパースなど、ひどい目に合わされながら、なおも彼との和解を望んでいたほど。

 戦後の禊をすませたハイデガーは、再び権力を手にする。そのとたん、またも男尊女卑が頭をもたげ、アーレントの活躍を認めたがらなくなる。こうして恋人どうしは哲学者としての闘いを始めるのだが、これはアーレントの勝ちかもしれない。「ナチに近づいたのは共産主義からドイツを守るためだった」と自己弁明していたハイデガーに対し、アーレントは代表作「全体主義の起源」の中で、ナチも共産主義も同一線上に置いて批判したのだ。

 傑出した頭脳の持ち主たちの恋のありようは、複雑きわまりない。40すぎたアーレントがハイデガーに書き送った詩の一節、「あなたにわたしは誠実でありつづけ/そして不実でもありました/どちらも愛のゆえに」

 互いに愛憎半ばする思いを、生涯持ち続けたのであろう、フォークナーの言うように、「過去は決して死なない。それは過ぎ去ってすらいない」。




 


























コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アポロンと天照大神、ルナと月読命(つきよみのみこと)

2006年05月18日 | 雑記
 諸外国では太陽は男神、月は女神というのがほとんどだ。アポロンとルナのように。

 日本はこれが逆になっている。誕生のしかたというのが--

 <イザナギの命(みこと)が死者の国、黄泉へおもむき、死の穢れに触れた。もどってきてから川で禊(みそぎ)をする。そのとき左目を洗うと、日の神、天照大神(あまてらすおおみかみ)が、右目を洗うと、月の神、月読命(つきよみのみこと)が生まれた>

 古代の日本人は太陽に女性を、月に男性を感じたのだろう。実はドイツもそうなのでおもしろい。

 ドイツ語の名詞には男性・女性・中性という3つの性があり、太陽は女性名詞,月は男性名詞なのだ。この珍しさを使ったミステリまであって--
 
 <世界大戦中のイギリスが舞台。ひとりのイギリス女性が恋をする。相手はとかくの噂があり、ドイツ人のスパイではないか、との情報まで。しかし彼は完璧なキングスイングリッシュを話すし、マナーもイギリス風で、とてもドイツ人とは思えない。やがて彼の方も彼女を真剣に愛すようになり・・・(ボロが出るわけですね)。

 恋するふたりは夜の庭園を散歩した。美しい月が出ているので、彼は思わず、「Look at the moon! 」そして言わずもがなの一言、「He is so beautiful! 」。
 ここで彼女は悟るわけです。ああ、この人はやはりドイツ人だったのだ、と>

 なんとならば、先に触れたようにドイツ語では月は男性名詞、したがってそれを受ける人称代名詞は「he」に相当する「er」で、彼は「Er ist・・・」をそのまま「He is・・・」と直訳してしまった。(「It is・・・」とすべきなのに)

 まあ、スパイになったら恋はしないことですね。


 ☆「怖い絵 泣く女篇」(角川文庫)~「怖い絵2」の文庫化で~す♪
     ユーチューブ⇒ http://www.youtube.com/watch?v=3e4N7-9aR0I
 怖い絵 泣く女篇
(画像をクリックするとアマゾンへいきます)

☆「芸術家たちの秘めた恋 ―メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代 (集英社文庫)
オッターヴァの清水清さんがHPで紹介してくれています
⇒ http://blog.ottava.jp/ottava_moderato/2011/07/post-7f75.html

芸術家たちの秘めた恋 ―メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代 (集英社文庫 な 53-1)

☆「印象派で「近代」を読む ~光のモネからゴッホの闇へ~」(NHK新書)2刷になりました♪

印象派で「近代」を読む―光のモネから、ゴッホの闇へ (NHK出版新書 350)

☆『中野京子と読み解く 名画の謎 ギリシャ神話篇』(文藝春秋) 2刷になりました♪

 中野京子と読み解く名画の謎 ギリシャ神話篇
(画像をクリックするとアマゾンへゆきます)
文春「本の話」から、「自著を語る」(「謎が解けたら、絵画は最高のエンターテインメントになる」)はこちら

http://www.bunshun.co.jp/jicho/1104nakano/index.htm


☆「残酷な王と悲しみの王妃」(集英社) 2刷中。
 レンザブローで本書についてインタビューが載っています。お読みくださいね!⇒ http://renzaburo.jp/(「特設サイト」をクリックしてください)

残酷な王と悲しみの王妃

 
☆「『怖い絵』で人間を読む 」(NHK出版生活人新書) 7刷中。

「怖い絵」で人間を読む (生活人新書)

☆「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」(光文社新書)
14刷中。NHKBSに出演番組がユーチュブで見られます♪⇒ http://www.youtube.com/watch?v=SX6wndSD6fA

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)


☆光文社新書「名画で読み解く ブルボン王朝12の物語」3刷中。

名画で読み解く ブルボン王朝 12の物語 (光文社新書 463) 


☆「怖い絵」16刷中。

怖い絵

☆「怖い絵2」、9刷中。

怖い絵2

☆「怖い絵3」 6刷中。

怖い絵3


☆「危険な世界史」(角川書店) 5刷中。
危険な世界史


「おとなのためのオペラ入門」(講談社+α文庫)
おとなのための「オペラ」入門 (講談社プラスアルファ文庫)

☆「恐怖と愛の映画102」(文春文庫)
 
 恐怖と愛の映画102 (文春文庫)

☆「歴史が語る 恋の嵐」(角川文庫)。「恋に死す」の文庫化版です。

歴史が語る 恋の嵐 (角川文庫)

sai

 






 






コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クリミア戦争の副産物(世界史レッスン第14回)

2006年05月16日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」にて連載中の「世界史レッスン」第14回は、「<足るを知らず怒れる者>と呼ばれて」⇒http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2006/05/post_cd1a.html

 クリミア戦争はもともと宗教戦争だった。エルサレムの聖地管理権をめぐって、カトリックとギリシャ正教が争い、それぞれにフランス、ロシアという支援者がつき、けっきょくこの2カ国の他に、トルコ、イギリス、サルジニアまで参戦するにいたった。

 この戦争は、その後長きにわたってヨーロッパからロシアを排除するという、大きな意味をもったが、もうひとつの大きな成果は、何といってもナイチンゲールの働きによって、看護婦という職業が確立されたことである。

 それまで看護婦は半ば娼婦扱い、下層階級の飲んだくれの女性がおこなう、卑しい低賃金労働でしかなかった。
 レディと呼ばれる女性が末端の兵士たちの包帯を巻いてやったとき、がちがちの階級社会に組み込まれていた人々がどれほど驚いたかは想像に難くない。看護という仕事の聖性イメージは、まさにナイチンゲールあってのものなのだ。(リットン・ストレイチー「ナイチンゲール伝」必読!)

 クリミア戦争にはもうひとつ、副産物がある。紙巻タバコである。
 それまでヨーロッパの兵士たちはパイプを使っていたが、戦場でそんな悠長なことはやっていられない。トルコ兵士たちがパピルスにタバコを巻いて吸っていたのを見てその便利さに目覚め、それを帰国後、お国に持ち帰ったという次第。

☆「怖い絵 泣く女篇」(角川文庫)~「怖い絵2」の文庫化で~す♪
     ユーチューブ⇒ http://www.youtube.com/watch?v=3e4N7-9aR0I
 怖い絵 泣く女篇
(画像をクリックするとアマゾンへいきます)

☆「芸術家たちの秘めた恋 ―メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代 (集英社文庫)
オッターヴァの清水清さんがHPで紹介してくれています
⇒ http://blog.ottava.jp/ottava_moderato/2011/07/post-7f75.html

芸術家たちの秘めた恋 ―メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代 (集英社文庫 な 53-1)

☆「印象派で「近代」を読む ~光のモネからゴッホの闇へ~」(NHK新書)2刷になりました♪

印象派で「近代」を読む―光のモネから、ゴッホの闇へ (NHK出版新書 350)

☆『中野京子と読み解く 名画の謎 ギリシャ神話篇』(文藝春秋) 2刷になりました♪

 中野京子と読み解く名画の謎 ギリシャ神話篇
(画像をクリックするとアマゾンへゆきます)
文春「本の話」から、「自著を語る」(「謎が解けたら、絵画は最高のエンターテインメントになる」)はこちら

http://www.bunshun.co.jp/jicho/1104nakano/index.htm


☆「残酷な王と悲しみの王妃」(集英社) 2刷中。
 レンザブローで本書についてインタビューが載っています。お読みくださいね!⇒ http://renzaburo.jp/(「特設サイト」をクリックしてください)

残酷な王と悲しみの王妃

 
☆「『怖い絵』で人間を読む 」(NHK出版生活人新書) 7刷中。

「怖い絵」で人間を読む (生活人新書)

☆「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」(光文社新書)
14刷中。NHKBSに出演番組がユーチュブで見られます♪⇒ http://www.youtube.com/watch?v=SX6wndSD6fA

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)


☆光文社新書「名画で読み解く ブルボン王朝12の物語」3刷中。

名画で読み解く ブルボン王朝 12の物語 (光文社新書 463) 


☆「怖い絵」16刷中。

怖い絵

☆「怖い絵2」、9刷中。

怖い絵2

☆「怖い絵3」 6刷中。

怖い絵3


☆「危険な世界史」(角川書店) 5刷中。
危険な世界史


「おとなのためのオペラ入門」(講談社+α文庫)
おとなのための「オペラ」入門 (講談社プラスアルファ文庫)

☆「恐怖と愛の映画102」(文春文庫)
 
 恐怖と愛の映画102 (文春文庫)

☆「歴史が語る 恋の嵐」(角川文庫)。「恋に死す」の文庫化版です。

歴史が語る 恋の嵐 (角川文庫)

sai




コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハムレットとハムレット城と大男の国

2006年05月12日 | 雑記
 前回ハムレットについて触れたので、思い出したこと。

 シェークスピアはハムレットをデンマーク王子に設定した。エアスン海峡最狭部にあるヘルシングーアという小さな町(すぐ向こう岸にスウェーデンのヘルシンボリが見える。5キロしか離れていない)のクロンボー城。かつてここに居住していたAmleth王子の名前を借りたのだ。語尾のhを前に持ってきて、HAMLET王子というわけ。

 4,5年前の晩秋、この城を訪れた。青空から時おりアラレがぱらぱら降ってくる寒い日で、見物客はまばら。岬の先端ということもあり、風がごうごうと吹きすさんで、荒涼たるものである。

 「こんなところに住んでいたら、性格も悪くなるだろうなあ」

 同行者が思わずもらした言葉に大いに共感を覚えた。
 それにヨーロッパの中世の城はどこもそうだが、何世紀にもわたる血がこびりつき、昼日中であろうと幽霊が出そうな雰囲気というか・・・(実際には何度か建てかえているのだけれど)

 ところでデンマーク滞在中、2晩だけだが、非常に古いホテルに泊まった。洗面所で手を洗いながら、ふと前の鏡を見ようとしてびっくり。アールヌーヴォ風の凝った楕円型鏡は、あまりに高い位置にあるため、顔が半分しか映らない!

 浴室のシャワーも同じ。手が届かない!わたしは身長163センチで、まあ、ごくふつうか、ふつうより少し高いくらいだと思うので、こんなことは初めて。じっさい、このあと泊まった他の新しいホテルではそんなことはなかった。

 北欧が大男大女たちの国であることを実感した瞬間だった。
 ハムレットも大きかったのかな。大きな身体で、「to be, or not to be 」と悩んだのね。

♪♪♪アサヒコムで紹介中の本です⇒http://book.asahi.com/special/TKY200602280388.html
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする