中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

サッチャー元イギリス首相の宝石占い(世界史レッスン第59回)

2007年04月17日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の『世界史レッスン』第59回目の今日は、「アンデルセン、占い師のもとへ行く」⇒http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2007/04/post_c3e4.html#more
 少年時代のアンデルセンが占い師に励まされた話をを書きました。

 占いは若い女性の専売特許のように言われるが、大っぴらに、しかも遊びの要素を加えているので目立つだけで、実際は大金払って真剣に占い師のもとを訪れるのはほとんど男性らしい(知人の中国占星術師の言)。

 政治の世界でも占いはあなどれない力を持っているようで、ヒトラーやレーガンが星占いで政局を決定したこともあるというのは、わりに知られている。
 
 ヘンリー八世は当たった占い師を殺している。ゲーテは完全に星占いを信じ、自分の出生時の星の配置について長々解説しているが、これらについてはいつか「世界史レッスン」で書こうと思う。

 「鉄の女」サッチャー元首相の自伝を読んでいてびっくりしたのは、若いころ彼女は宝石占いをしてもらい、「あなたはチャーチルと並ぶ大政治家になるでしょう」と言われた、と書いてあった下り。彼女自身は占いなど信じていないと明言していたけれど、わざわざこの出来事を記しているということに、複雑な思いを感じる。合理主義だけでは片づかないこともあると、感じたのだろうか?それとも政治家特有の自慢?

☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

怖い絵
怖い絵
posted with amazlet on 07.07.14
中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」

☆角川文庫「マリー・アントワネット」(画像をクリックするとアマゾンへ)
☆☆「星の王子様」の訳者・谷川かおるさんによる書評はこちら⇒http://www.meiji.ac.jp/koho/meidaikouhou/20070401/0704_8_book_nakano.html
☆☆☆ミュージカル「マリー・アントワネット」が上演中なので、アントワネットへの関心はまだまだ続きそうで嬉しいな♪
マリー・アントワネット 上 (1) マリー・アントワネット 下 (3)

◆マリー・アントワネット(上)(下)
 シュテファン・ツヴァイク
 中野京子=訳
 定価 上下各590円(税込620円)
 角川文庫より1月17日発売
 ISBN(上)978-4-04-208207-1 (下)978-4-04-208708-8


  

  
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ナポレオンと凱旋門(世界史レッスン第58回)

2007年04月10日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」に連載中の「世界史レッスン」第58回目の今日は、「ナポレオン<百日天下>に右往左往の彫刻家」を書きました⇒http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2007/04/post_e958.html#more
 ナポレオンの全身像を受注しながら、政変のためけっきょくルイ18世像を作らざるを得なかった彫刻家コルトーについてのエピソードです。

 ナポレオンもまた、自分で建設を命じたエトワール凱旋門の完成を見ずに死んでしまい、1840年になってようやく、16頭の馬に引かせた棺の中の遺体として、門をくぐることになったのだった。

 ところでこのエトワール凱旋門だが(パリに行ってここを訪れない人はまずいないだろう)、コルトーはこの門の表側、左柱にナポレオンを彫刻した。右柱はというと、フランソワ・リュードの「ラ・マルセイエーズ」で、こちらの方が有名である。一群の兵士たちが行進する上を、翼をひろげた勝利の女神が鼓舞している、という浮き彫り彫刻だ。

 ここで誰もが真っ先に目をとめるのは、兵士たちの中央にいるふたりーー顎ヒゲをはやした逞しい中年男性(鎧をまとっている)と、初々しい12歳くらいの少年(兜と靴以外は丸裸!)。ヒゲは少年の肩を抱き、「さあ、俺と戦場へ行こうじゃないか」と促しているのだろうし、少年は憧れに満ちた眼差しで彼を見上げ、「はいっ!」と返事をしているのだろう。

 どうしてこの子は裸なのかな。これじゃ戦えまい。でも西洋人はヌードが好きだしなあ、アレゴリーで抽象をむりやり人間の裸体に変えてしまうし・・・などと日本人は感性の違いに辟易するだけなのだけれど、どうやらこれをスキャンダラスと感じる西洋人もいるみたい。

 『天使の手の中で』などで知られるフランスの作家ドミニク・フェルナンデス(彼は以前からカミングアウトしている)が、ヒゲと少年の関係を明らかにユピテルとガニュメデス、ミケランジェロとカヴァリエリだというのだ(日本でいえば、信長と森蘭丸かな)。なるほど、そう言われればそう見えないこともない、というより、そうとしか見えなくなってしまう。世界各国の観光客はどう感じているのかしらん?

☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

怖い絵
怖い絵
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中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」

☆角川文庫拙訳「マリー・アントワネット」(画像をクリックするとアマゾンへ飛びます)
☆☆この本の中にも若き日のナポレオンが登場し、フランス革命の混乱を覚めた目で見据えていた。確かにルイ16世が彼を雇用していたら、事態はいくらか変化した可能性も・・・
☆☆☆明治大学広報での紹介はこちら⇒ http://www.meiji.ac.jp/koho/meidaikouhou/20070401/0704_8_book_nakano.html

マリー・アントワネット 上 (1) マリー・アントワネット 下 (3)

◆マリー・アントワネット(上)(下)
 シュテファン・ツヴァイク
 中野京子=訳
 定価 上下各590円(税込620円)
 角川文庫より1月17日発売
 ISBN(上)978-4-04-208207-1 (下)978-4-04-208708-8






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ゾフィア・ドロテアの悲劇(世界史レッスン第57回)

2007年04月03日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第57回目の今日は、「妻を32年も幽閉したジョージ1世」。⇒http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2007/04/post_a415.html#more
イギリスの4人のジョージ王のうち、嫌われ度最高のジョージ1世について書きました。

 ゾフィア・ドロテアとジョージ1世は、6歳違いのいとこだった。とうぜん小さなころから互いを知っていたが、ドロテアはジョージ(当時はゲオルク)が粗野で無神経なのを嫌っていた。彼の方は、ドロテアの母が名門出身でなかったのを馬鹿にしていたという。

 ふたりの結婚はお定まりの政略結婚である。ドロテアの父は名誉が、ジョージの親は金が欲しかった。両家にとってはこれ以上望ましい縁談はなかったわけだが、16歳のドロテアは泣いて嫌がった。酷い運命を予感したのだろうか?

 宮廷に入ってすぐ、ドロテアの試練は始まった。姑と小姑が実験をにぎり、陰に日に彼女を苛めたし、夫は子どもふたりできた段階で完全に床を別にした。離婚も拒否した。

 ドロテアはスウェーデン貴族との駆け落ち失敗後、28歳から60歳まで幽閉され、子どもとの面会すら許されなかったのだ。国民が彼女に同情するのも無理はない。

 ジョージ1世のような粘着質の人間は、現代でもけっこういるものだ。愛情はとっくになくなっているのだから、いっそ離縁して相手にも再婚を許してやればいいのに、愛とは別の執着がそれを妨げる。

 日本でも、某著名人の正妻が別居ウン十年になっても戸籍上の妻の座を明け渡さず、彼の死後、愛人とお骨の取り合いをしていたっけ。寂しい心だなあ・・・

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中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
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⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」

☆拙訳「マリー・アントワネット」(画像をクリックするとアマゾンへ飛べます)
☆☆スウェーデン貴族は、このドロテアといいアントワネットといい、他国の王妃になぜか受けがいいみたいですね♪
マリー・アントワネット 上 (1) マリー・アントワネット 下 (3)

◆マリー・アントワネット(上)(下)
 シュテファン・ツヴァイク
 中野京子=訳
 定価 上下各590円(税込620円)
 角川文庫より1月17日発売
 ISBN(上)978-4-04-208207-1 (下)978-4-04-208708-8






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