中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

「チャーリーとチョコレート工場」のベッド

2006年03月29日 | 映画
 ロアルド・ダールの原作は皮肉たっぷりでなかなか面白かった。ジョニー・デップ主演のこの映画は、さて、面白いような大して面白くないような・・・面白い理由の大部分は原作の魅力によるものかな、という感じ。

 それはさておき、ベッドだけれど、とっても貧乏なチャーリーの家族は今にも倒壊しそうな家に住み、毎日キャベツのスープばかり食べていて、両親のそれぞれの親(おじいさんふたり&おばあさんふたりの計4人)は、たったひとつのベッド、たぶんシングルベッドに寝ているのだった。

 ベッドに家族で雑魚寝は、ヨーロッパ中世ではそう珍しくなかったらしい。ものの本によれば、「ジューンブライド」がなぜ良しとされたかというと、そんな寝室事情では落ち着いて?子作りができなかったので必然的に青空のもとでの愛のいとなみとなり、そのためには初夏の結婚が万事つごうよかったということらしい。

 で、また話しは飛んで、かつてのベストセラーでありヒット映画「マディソン郡の橋」のベッド。アメリカの片田舎で鬱屈していた主婦が、夫の留守に、ふらりと流れてきたカメラマンと束の間の恋をするという、あの中年不倫ストーリーだが、わたしがぎょっとしたのは、この女性がそのカメラマンを、夫婦の寝室の、他ならぬ夫婦のベッドへ引き入れたこと。

 中世ではあるまいし、広い邸にはソファもあるし、客用ベッドもあるでしょう。なのにどうして・・・

 この女性は夫がドアをばたんと音たてて閉めることに神経を苛立たせられるほど繊細である、というように描かれており、それだけになお、この無神経ぶりにあっけにとられてしまったのだが、これは寝具に対する彼我の違いなのか?少なくともわたしにとってはこの一点において、彼女も彼女の情事も、ずいぶん薄汚いものに感じられたものだった。

☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

怖い絵
怖い絵
posted with amazlet on 07.07.14
中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」

☆ツヴァイク『マリー・アントワネット』、なかなか重版分が書店に入らずご迷惑をおかけしました。今週からは大丈夫のはずです。「ベルばら」アントワネットの帯がかわゆいですよ♪
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マリー・アントワネット 上 (1) マリー・アントワネット 下 (3)
「マリー・アントワネット」(上)(下)
 シュテファン・ツヴァイク
 中野京子=訳
 定価 上下各590円(税込620円)
 角川文庫より1月17日発売
 ISBN(上)978-4-04-208207-1 (下)978-4-04-208708-8


 







コメント (1)
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