幸せになろうね 改め しあわせだね

日々の生活の中のほんの小さな出来事をどう捉えるかで
私達はすぐにも幸せになれるのです。

それは物語

2014年04月18日 23時36分14秒 | ひとりごと
 それは春というにはまだ寒い、けれど確実に
お日様の力が復活しているのを感じる朝でした。

 



 JRの普通電車しか止まらない小さな駅のプラットホーム。
通勤ラッシュのピークは過ぎているものの
その駅にしては、まだかなりの人が電車を待っていました。

 やがて
定刻通り電車は到着し、人々は乗り込みます。
発車の合図のベルが響き渡ったとき
数人の学生が階段を駆け下りてきて電車に滑り込みました。

すかさず車掌のアナウンスが入ります。

「駆け込み乗車は危険です。おやめください。」


 実際に駆け込みがあった、なかったにかかわらず
必ずと言ってよいほどこのアナウンスは入ります。



「一分でも惜しい朝の時間だもの、
 駆け込むなという方が無理かもね・・・」


 などと思いながら見ていると
さっきからちゃんと待っていらたしたひとりのご婦人が
車内に入らずに扉の外に立っているではありませんか。

もう閉まろうとしている扉を片手で抑え
階段の方を気にしています。


 そこには
一生懸命に降りてくるおばあさんの姿がありました。

本人は急いでいるつもりなのでしょうが
その思いと動作は一致しません。

あと二段!!

あと一段!!!


 きっと、さっき駆け込んだ学生たちより先に改札を通ったはずなのに
彼女だけ間に合いそうになかったのです。

階段の近くで待っていらしたご婦人はおばあさんに気づいたのでしょう。

だから
安全確認をする車掌に見える位置に立ち
扉が閉まらないように手で押さえ
おばあさんを待ってあげたのです。


 



 おばあさんが乗り込むと
ご婦人は車掌の方に向かって
両手を合わせながら笑顔で頭を下げました。
そうして、ご自分もすぐに車内へと滑り込みました。



 間もなくピィーーーッと笛が鳴り響き、扉が閉まり
電車は何事もなかったかのように動き始めました。


 この
わずか数十秒のできごとは
私の心を春の日差しのように暖かく包んでくれました。


 


 少し前の人々にとっては当たり前だった思いやりも
今では与えることも受けることも難しくなっています。
それでも
本当にその思いがあれば
こんなにもスマートにできるものだということを
この方は見せてくださったのです。