ケイの読書日記

個人が書く書評

津村記久子「この世に たやすい仕事は ない」

2016-05-10 10:59:31 | 津村記久子
 なんとも背筋がピンと伸びるようなタイトルですね。

 主人公は大学卒業後14年間、同じ職場で医療ソーシャルワーカーとして働いてきたが、あまりにも激務で、燃え尽き症候群のようになって辞めてしまう。いつまでも家でブラブラしている訳にもいかず、職安に行き仕事を探す。
 1年で5つの異なる仕事を遍歴することになるが、どの仕事もそれなりの難しさがあり、ちょっと不思議な未知な部分もある。

一つ目 ターゲットの部屋に隠しカメラを取り付け、モニター画面を見て不審な動きがないか見張る。うっそーーー! それって違法じゃあ? そうだ、これは「お仕事ファンタジー小説」だった。時給は良いが、目がパシパシして、長くは続けられないね。
 
二つ目 利用客が少ないバス路線で、停留所近くのお店の宣伝アナウンスをいれ、広告費で収益をUPさせようとする仕事。そのCMアナウンスの文章を作ったり、音声を収録する。

三つめ 二つ目の仕事ぶりを認められ、おかき会社にリクルートされる。おかきの裏袋に「ちょっと良い話」みたいな情報が印刷されていたりするが、その文章を企画して書く。この仕事は主人公にあっていたらしく成功するが、苦手な人が同僚になりそうだったので、あわてて退職する。

四つ目 お店や民家に貼ってあるポスターの貼り替え。ほら、よくある「水は大切に」「町の緑化にご協力を」とかのポスター。最初は、全くの単純労働で楽勝かと思われたが、ヘンテコな宗教がかったボランティア団体のポスターと鉢合わせすることが多くなり、険悪な雰囲気に。でも、主人公の活躍で、見事解決!!(その地域では)

五つ目 広大な自然公園内にある小さな小屋で、公園管理のお手伝い。個人的には、この仕事が一番気に入った。時給は安いが、すごくアバウトな雰囲気で、管理棟には上司が数人いるが、小屋には基本一人。小さなキッチンもついて、昼にはそこで自炊できる。森の中には、柿、いちじく、パンノキ しいたけ、栗 などが自生し、常識の範囲内なら、取って食べてもOK。この自然公園は、日本の食糧自給率を上げようとしているらしい。
 食糧が豊富なので、どうもホームレスの人が住み着いちゃったらしく…。そうだよねぇ。私も一人用テントを持って住み着きたいです。
 

 この自然の中の仕事で、エネルギーをチャージした主人公は、また元の医療ソーシャルワーカーの仕事に戻っていこうとする、そこでこの「お仕事ファンタジー小説」は終わっている。

 後ろの奥付を見ると、2015年10月15日、第1刷。 私が借りた本は2015年12月22日第4刷。 よし!! 売れてるね! やっぱり良い本は売れる。(私は図書館で借りたけど、ごめん)
 津村記久子さん、これからも良い作品をお願いします。


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