本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

反戦小説

2012-12-08 10:27:42 | Weblog
 今日は太平洋戦争勃発の日というが、現場主義からすれば、その日は前日の12月7日だ。
 つまり、攻撃の火ぶたが切られた真珠港(湾ならばbayであるはずだ。harborは港だ)は日付変更線の向こう側にある。

 それはそれとして、大岡昇平の『野火』は反戦文学の最高峰のひとつだろう。
 フィリッピンのレイテ戦で敗残兵となったひとりの日本兵の悲惨な物語である。飢えと疲労と敵からの恐怖という極限状況にあって密林をさ迷う。なかでも飢えは人肉喰いの問題に行き付く。

 高校生のころ、戦争体験者の教師が、飢餓にあって一番おいしかったのは塩、一番まずかったのも塩だ、と語ってくれたことがある。なんとも理解しにくい言葉だったが、苦汁の思いが伝わったのは『野火』の印象があったからだ。
 今は戦争について見聞きすることが少なくなった。戦争とはどんなことなのか、『野火』を読んでほしいと思わずにいられない。