ひとこと・ふたこと・時どき多言(たこと)

〈ゴマメのばーば〉の、日々訪れる想い・あれこれ

《お花が散って、実が熟れて、》

2015-11-02 06:31:01 | 日記
その詩を目にして、私は「んっ」と、立ち止りました。

   『木』
                 金子 みすゞ
   お花が散って
   実が熟れて、

   その実が落ちて
   葉が落ちて、

   それから芽が出て
   花が咲く。

   そうして何べん
   まわったら、
   この木は御用が
   すむかしら。

「こおりやま文学の森資料館」の特別企画展『金子みすゞの世界』へ行ってきました。
金子みすゞは、好きな詩人の一人です。
平易なことばと表現の中に、優しさも、怖さも、そして希望も持ち合わせていますから。

会場の門を入ってすぐ、入り口前のアプローチに、
上記の『詩』が、金子みすゞの自筆字体で掲示されていました。

〈芽が出て、花が咲き、実が生り、やがて朽ちて行く〉
…………それは多くの人間も、また木と同じです。
このところ、先輩の訃報に接したり、友人が病を得て入院したらしい、
などとの噂が伝わってくることが多くなりました。

年齢から言えば、決して不思議ではありません。
でも、若く元気だったころを知っているだけに、
何か淋しさを通り越した不条理すら覚えてしまうのです。
“あんなに いい人が、どうして”
とか。

そんな心模様の季節を過しているからでしょうか、
   …………………
   …………………
   そうして何べん
   まわったら、
   この木は御用が
   すむかしら。
が、妙に「死」というリアリティを持って迫って来たのでした。

郡山市ゆかりの作家・久米正雄氏宅を、鎌倉市より移築復元した記念館の庭のモミジが、
赫く、しずかに燃えていました。
秋でした。
明るい秋の日の午後でした。
友人の、あの人 この人も、「青春」・「朱夏」・を過ごし、
今、「白秋」から「玄冬」の季節を生きています。

そうして何べん
まわったら、
この木は御用が
すむかしら。
は、私の心に「玄冬」を思い起こさせたのかもしれません。

クロガネモチの木が、大きく空に枝を広げ、小さな赤い実をたくさんつけていました。
                                    〈ゴマメのばーば〉
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