特別企画展『かこさとしの世界』(8月21日まで)展へ行ってきました。
こおりやま文学の森資料館で開かれています。
かこさとしさんは、私の好きな絵本作家の一人。
1960年代に出版された「だるまちゃんとてんぐちゃん」や「だるまちゃんとかみなりちゃん」は、
我が家の子供たちも大好きで、よく読み聞かせをしていました。
かみなりちゃんの住む町のあらゆるものが〈かみなり型〉になっていて、
“あっ、ここにも、ここにも、”
かみなりマークを見つけては、親子ではしゃいでいたものでした。
懐かしさもあったのでしょうか、50歳を越した娘と息子も、観てきたようです。
こおりやま文学の森資料館の敷地内には、鎌倉にあった久米正雄邸が
移築復元されていて、内部も公開され、資料の展示等がなされています。
梅雨の晴れ間の柔らかい日差しの入るレファレンスルームで、
私は、ひとり ゆったり、と展示されていた『矢村のヤ助』を味わいました。
《むかし
山に かこまれた
山の村 矢村に、
ヤ助という
おやこうこうの
わかものが、
としをとって
あるけなくなった
おっかさんと
すんでいました》
ある年の暮れ、や助は、一羽の山鳥のいのちを助けます。
年が明けて、アカネという きれいな娘が や助の家を訪れます、
やがて二人は一緒になり…………………………、
ここまでは、よくある異類婚の おはなし。
やがて、村には悪い鬼が現れて、村人を苦しめます。
アカネは、自分が いのちをたすけてもらった山鳥であることを ヤ助に打ち明け、
自分の羽で、強い矢を作り 鬼を退治するようにと ヤ助に頼みます。
アカネは、十三ふしの尾羽を残して去っていきました。
や助は、あずさの木でつくった つよい弓を きりっきりっとひきしぼり
「やーつ!」
と、十三ふしの山鳥の矢を射、鬼を退治しました。
しずかになった村で、
ヤ助とおっかさんも、以前の様に、二人だけの暮らしになりました。
山の畑には、日がてり、風がふき、雲が流れて……………。
《ときおり みじかいしっぽの メスの山鳥が
そばに あそびにきたりします。
あぜにすわった おっかさんは それに きづくと
かならず そのこえや すがたに ほほえみ
りょうてを あわせました。
しかし ヤ助は
口をきっと むすんだまま、
だまって いっしんに
クワを うちつづけていたということです。
山ぐに、矢村のヤ助のおはなしは
これで おしまいです。
さようなら。》
だまって、きりりと口を結び、クワを振り上げている や助の姿。
悲しみを、全身で こらええているヤ助と一緒に、
わたしは、泣きました。
悲しいような、うれしいような涙を、
ポロポロと、
ポロポロと、
とても とても贅沢な時の流れの中で、
ポロポロと。
(「矢村のヤ助」かこさとし著・2014.3.31 かこさとし米寿記念出版・非売品)
こおりやま文学の森資料館で開かれています。
かこさとしさんは、私の好きな絵本作家の一人。
1960年代に出版された「だるまちゃんとてんぐちゃん」や「だるまちゃんとかみなりちゃん」は、
我が家の子供たちも大好きで、よく読み聞かせをしていました。
かみなりちゃんの住む町のあらゆるものが〈かみなり型〉になっていて、
“あっ、ここにも、ここにも、”
かみなりマークを見つけては、親子ではしゃいでいたものでした。
懐かしさもあったのでしょうか、50歳を越した娘と息子も、観てきたようです。
こおりやま文学の森資料館の敷地内には、鎌倉にあった久米正雄邸が
移築復元されていて、内部も公開され、資料の展示等がなされています。
梅雨の晴れ間の柔らかい日差しの入るレファレンスルームで、
私は、ひとり ゆったり、と展示されていた『矢村のヤ助』を味わいました。
《むかし
山に かこまれた
山の村 矢村に、
ヤ助という
おやこうこうの
わかものが、
としをとって
あるけなくなった
おっかさんと
すんでいました》
ある年の暮れ、や助は、一羽の山鳥のいのちを助けます。
年が明けて、アカネという きれいな娘が や助の家を訪れます、
やがて二人は一緒になり…………………………、
ここまでは、よくある異類婚の おはなし。
やがて、村には悪い鬼が現れて、村人を苦しめます。
アカネは、自分が いのちをたすけてもらった山鳥であることを ヤ助に打ち明け、
自分の羽で、強い矢を作り 鬼を退治するようにと ヤ助に頼みます。
アカネは、十三ふしの尾羽を残して去っていきました。
や助は、あずさの木でつくった つよい弓を きりっきりっとひきしぼり
「やーつ!」
と、十三ふしの山鳥の矢を射、鬼を退治しました。
しずかになった村で、
ヤ助とおっかさんも、以前の様に、二人だけの暮らしになりました。
山の畑には、日がてり、風がふき、雲が流れて……………。
《ときおり みじかいしっぽの メスの山鳥が
そばに あそびにきたりします。
あぜにすわった おっかさんは それに きづくと
かならず そのこえや すがたに ほほえみ
りょうてを あわせました。
しかし ヤ助は
口をきっと むすんだまま、
だまって いっしんに
クワを うちつづけていたということです。
山ぐに、矢村のヤ助のおはなしは
これで おしまいです。
さようなら。》
だまって、きりりと口を結び、クワを振り上げている や助の姿。
悲しみを、全身で こらええているヤ助と一緒に、
わたしは、泣きました。
悲しいような、うれしいような涙を、
ポロポロと、
ポロポロと、
とても とても贅沢な時の流れの中で、
ポロポロと。
(「矢村のヤ助」かこさとし著・2014.3.31 かこさとし米寿記念出版・非売品)