Gikuri

ギクリのブログ。たまに自意識過剰。

3000m障害の五輪代表選考について

2021-06-12 | 走る若人が好き
私の好きな選手がいっぱいいる
(というか主要選手だいたい好き)
男子3000mSCの五輪代表選考争いの
状況について、日本選手権を前に
調べました。長いから見出し付き。
好きじゃなきゃ6000字も書けん。

要項誤読したり計算間違ったりして
嘘書いてたらすまん。まさかこんな
ブログなんか見てないとは思うけど
関係者は鵜呑みにしちゃイヤよ。

1.世界陸連の出場資格ルール

五輪の参加標準記録は8:22.00です。
この記録を突破した選手は、世界全体で
他に何人突破していても、各国で代表と
して認められれば出場可能だそうな。
3000mSCの世界全体での出場枠は45
(1か国3人以内)と定められています。
参加標準を突破した代表が45人か
それ以上いれば参加標準突破者のみが
出場することになりますが、現在この
参加標準突破者が45人に満たない状況で、
最終的に突破者で45人が埋まらなければ
(3000mSCは全部埋まらない気がする)
残りの分はワールドランクの上位から
出場資格が認められることになります。

ワールドランクはその選手の期間内の
出場大会(3000mSCなら3大会)の
タイム(SCORING TABLES参照)
と順位(PLACING SCORE参照)
によって算出された点数で決まります。
順位の方は大きな大会の方が高得点を
加算され、例えば日本選手権は
カテゴリーBで加算があるけど
記録会や地方大会だとFでほとんど
なかったりします。実は先日の
READY STEADY TOKYOはAで
日本選手権より上、さらに上なのが
塩尻選手が3位に入り120点加算
されているGLのアジア選手権です。
いちいち探すのめんどいから
3000mSC順位点の画像貼っとこ。


3000mSCの場合、日本選手権での
順位加算は1位から8位まで各70点、
60点、50点、45点、40点、35点、
30点、25点なので、例えば8:25.00で
2位だったらタイム1144点+順位60点
=1204点です。その選手の点数の高い
上位3大会の平均が持ち点となり、
その点数でランク付けされるため、
今回の日本選手権だけ点数がよくても
他の2大会の点数が悪ければランクの
上位にはならないことがあります
(期間内の出場大会数が2未満だと
ランクに入れてすらもらえません)。

2.日本陸連の代表選考ルール

日本の3000mSC五輪代表については
昨年12月の日本選手権で内定した選手が
いなかったため、6/26の日本選手権が
選考大会となります。記録の有効期限が
6/29までなので、日本選手権が事実上
参加資格を得るための最後の大会です。
実業団選手が出場可能な3000mSCの
記録会等が今後他になさそうなので、
各選手が参加標準突破を狙う場も
ワールドランクの点数を稼ぐ場も
残すは日本選手権だけでしょう。

同一大会内で同一順位が出る種目では
ないですし、有効期間内の記録が
複数選手で全く同じになる確率もかなり
低いので除外するとして、単純化すると
五輪代表選考の優先順位はおおむね
以下のとおりになると思います。
なお、ワールドランクの有資格者は
7月に世界陸連が発表するそうですので
決定時期は即時内定の①~③の選手
よりも遅くなります。

①日本選手権1位+参加標準突破(即時内定)
②日本選手権2位+参加標準突破(即時内定)
③日本選手権3位+参加標準突破(即時内定)
④日本選手権1位+ワールドランクで出場資格
⑤日本選手権2位+ワールドランクで出場資格
⑥日本選手権3位+ワールドランクで出場資格

⑦参加標準突破
 +複数いる場合は日本選手権上位の方
 (日本選手権の成績で決まらなければ
 有効期間内の記録上位を優先)
⑧ワールドランクで出場資格
 +複数いる場合は日本選手権上位の方
 (決まらなければワールドランク上位、
 それも同じなら有効期間内の記録上位優先)
⑨全体のエントリー人数が少なかった場合に
 世界陸連から追加を認められた選手
 (前回五輪で塩尻選手が出場できたときの
 Invitationのような制度?)

⑦や⑧で日本選手権の成績で決まらないと
いうケースは、比較する選手がいずれも
日本選手権を欠場or途中棄権or失格となり
順位で評価不能というのが想定されます。
3000mSCは複数選手が巻き込まれる
転倒事故があり得るとはいえ、流石に
「いずれも」はレアケースでしょうが…。

3.日本人選手の現在の状況

三浦選手がREADY STEADY TOKYOで
参加標準記録を破ったため、日本選手権で
3位以内なら①~③により五輪内定です。
しかし日本記録保持者の三浦選手といえども
万が一ですが4位以下=⑦になってしまうと
出場が厳しくなるかもしれません。

というのも、ワールドランクで出場資格
圏内を狙える日本人選手が現時点で
何人もいるので、彼らが日本選手権で
1~3位になりかつ圏内に入ると④~⑥を
満たし(あるいは参加標準を突破すれば
①~③に)、⑦より優先されるのです。
世界陸連のこのページで確認可能ですが、
本日現在参加標準突破者が34人で
ワールドランクの枠が11人分となっていて
ボーダーの点数が1176点です。
三浦選手以外の日本人選手では
山口選手(1208点)塩尻選手(1182点)
阪口選手(1176点)の3人がこの点数
以上で、青木選手(1170点)はわずかに
下回りますが日本選手権の成績次第で
十分挽回可能です。楠選手(1151点)は
自己ベストと同タイムで日本選手権3位に
入ると1174点のようなので、より高い
タイムや順位が必要になるかと。
いずれの選手も3位以内に入る候補であり、
そのため三浦選手も基本的に3位以内に
入りたいところです。

ただし、3位以内にランク圏外の選手が
入ってくると選考が複雑になります。
点数がボーダーから遠くランクでの
選出が現実的でない選手の場合、
3位以内に入りながら参加標準を
突破しなかった場合には出場資格を
得られず、4位以下に弾き出された
選手にもチャンスが生まれます。
弾き出された中にもし参加標準突破
済みの三浦選手がいれば⑦が適用され
三浦選手を選出、三浦選手がおらず
(=三浦選手が3位以内に入ってて)
ワールドランク圏内の選手がいれば
⑧が適用されてその選手のうちの
誰かが選出されることになります。
6/5の新潟5000mで潰滝選手(1108点)
が並み居るチームメイト達を抑えて
好タイムで1着となってまして、
潰滝選手が久々に表彰台に復活して
くるのは考えられますね!

もっとも、ワールドランクは海外の選手が
さらに好成績を出せば日本人選手の順位が
下がりますし、海外で参加標準突破者が
増えるほどワールドランクから選出される
人数が減りますので(逆に故障欠場とかが
出てくれば増えることもあるけど)、
現在圏内であっても安泰ではありません。
今はボーダーが1176点ですが、おそらく
今後また上がって何人かは日本選手権
前日までに圏外になるのではないかと。
日本選手権で一定以上のタイムが出れば
日本人選手は点数を上積み可能ですが、
タイムが低調に終わって点数を伸ばす
ことができなかった場合、圏外から
這い上がれないこともあり得ます。
ただし山口選手はランク上位に位置し
点数も下とかなり差を付けてるので、
圏外にはまず落ちないと思われます。

ランクのボーダー付近にいる選手は
たとえ参加標準を突破できなくても
好タイムでなるべく点数を稼いだ方が
ランクが上がり五輪に近づきます。
つまりスローペースで順位狙いの
駆け引きやってる場合じゃないと。
日本選手権開催日時点では海外の
結果がおおむね出揃ってそうなので、
どの程度のタイムで圏内に入れるか
各陣営で計算するかもしれませんね。

ちなみに今回の選考だと圏内に入ってる
日本人選手どうしのワールドランクの
順位の優劣は⑧のさらに特殊ケースに
ならない限りあまり関係なさそうです。
「自分が圏内に残ってライバルが圏外に
落ちたらラッキー」って状況になるのは
あり得るけど(例えばライバルが3位で
自分が4位かつ圏内の場合、ライバルが
圏内だと⑥で五輪出場権を奪われるけど、
ライバルが圏外に落ちると自分が⑧で
出場権を得る)、直接対決で負けて
海外選手による他力で救われる形に
なるのであまり素直に喜べないか…?

というわけで、五輪出場権獲得に
最も重要なのは日本選手権の結果です。
日本選手権で参加標準を突破した選手と
(日本選手権での点数上積みを含めて)
ワールドランク圏内に残った選手が
1~3位に入れば、その3人がそのまま
オリンピック日本代表になります。

4.ワールドランク圏内に入るための試算

現在ワールドランクのボーダー付近に
塩尻選手と阪口選手と青木選手が
位置しています。期限までまだ半月
あるのでボーダーが何点になるかは
不明ですが、圏内に入る(残る)には
日本選手権で3位以内に入った上で
どのくらいのタイムが必要か、試しに
計算してみましょう(ここに記載の
点数は日本選手権単独での点数では
なく3大会平均の最終持ち点です)。

(1) 1185点まで上昇させるのに必要なタイム
日本選手権順位1位2位3位
塩尻選手8:36.998:34.698:32.41
阪口選手8:34.248:31.958:29.68
青木選手8:31.048:28.778:26.51

(2) 1190点まで上昇させるのに必要なタイム
日本選手権順位1位2位3位
塩尻選手8:33.558:31.278:28.99
阪口選手8:30.818:28.548:26.28
青木選手8:27.648:25.388:23.13

(3) 自己ベストと同タイムだった場合の点数
日本選手権順位1位2位3位
塩尻選手
(PB 8:27.25)
1199.01195.71192.3
阪口選手
(PB 8:23.93)
1200.01196.71193.3
青木選手
(PB 8:25.85)
1192.31189.01185.7

(4) 参加標準を0.01秒切れなかった場合の点数
日本選手権順位1位2位3位
塩尻選手1207.01203.71200.3
阪口選手1203.01199.71196.3
青木選手1198.31195.01191.7

(1)の方は余裕に見えます、というか
今の国内のレベルだとこのタイムでは
3位以内に入れないかもしれません。
なので、悪天候などでよほど全体が
低調にならなければ、3位以内の選手が
点数を上げること自体は可能です。
(2)も高速レースなら行けそうですが、
3位の場合だと青木選手は自己ベスト、
塩尻選手もシーズンベストを超える
必要があります。ただ、1190点を
出せば圏内に入れるという保証は
今のところありません。
(3)はこれ以上の点数が必要なら
自己ベスト更新が必要という目安、
(4)はこれ以上の点数が必要なら
自ずと参加標準突破となる目安。

ワールドランクは海外の選手の成績に
左右されるので、最後までどうなるか
分かりませんね…。全枠埋まるまでは
行かないかなという気がしますが、
参加標準突破者が40人くらいになると
ワールドランクからの選出枠が
ほとんどなくなります。参加標準を
突破できるなら突破した方が確実です。

ちなみに山口選手の(3)(4)はこんな感じ。
それより遅い8:25.00の場合の点数も。
日本選手権順位1位2位3位
(3) (PB 8:22.39)1226.71223.31220.0
(4)1227.31224.01220.7
8:25.001222.71219.31216.0
普通に走れば1220点前後には上がりそう
ですね。参加標準を突破していない世界
全選手の中でのワールドランク順は現在
1223点のブラジル選手、1211点の豪州
選手に次いで山口選手が3番手ですが、
海外の他の選手の上積みがなければ
山口選手が1~2番手に上がることも
あり得ます。参加標準突破者が今後
続出し45枠全て埋まるような状況に
ならない限り、ランク圏内に残る
可能性が高いのではないかと。
山口選手こそ参加標準突破可能な
力があるので、ランクとか言わずに
突破できそうですね!

5.日本選手権の展開予想

その上で展開がどうなるか予想。
(いつも当たらん予想な)

前提として、有利なのは三浦選手と
山口選手です。3位以内に入れば
三浦選手は即時内定、ワールドランク
上位の山口選手も3位以内ならほぼ
確定でしょう。2人ともラストが強く
大抵のレースで他の選手を突き放して
ますので、焦らずいつもどおり
レースを進めていけば出場権を
勝ち取る可能性が高いと思います。
(接触で棄権や失格になるリスク
回避のために他の選手と距離を取る
とか、勝負だけでなくタイムにも
こだわるとかがあれば思い切った
作戦もあり得るかもしれませんが)

三浦選手は今日も3000mで日本
歴代4位を叩き出して好調さを
キープしているようです。
またU20日本記録増えて4つめ?
何かもう驚かないのが怖い(笑)。
やっぱり優勝候補本命ですね。

しかし他の選手は漫然とついて
行くだけでは三浦選手と山口選手に
対して不利であり、3位狙いにしても
2人以外のライバル全員を破って
先着しないといけないので、
レースの途中で動きに出るとか
何か策を練ることになるでしょう。
さらにワールドランクの圏内に
入る(残る)には上で示したように
一定のタイムも必要とされます。

特に塩尻選手はラスト1周の勝負に
持ち込みたくないと思うので、
どこかでライバルを振り落としに
来るかもしれません。あるいは
織田記念みたいに独走作戦で
行くこともあるでしょうか?
あれは結局三浦選手と山口選手には
捕まりましたが他の選手からは
逃げ切ったので、もし再現できれば
3位に入れる計算になります。
でも日本選手権であれをやったら
3位以内を争う阪口選手が意地でも
ついて行こうとしそうな気も。
張り合った結果両者バテたら
安定感が持ち味の青木選手が
漁夫の利を得そうですが。

普段のレースでも割とその傾向
ですが、たぶんそんな感じで
塩尻選手か阪口選手が前に出ようと
するんじゃないでしょうかねえ…。
オープン参加すると予想されてた
キプラガット選手が出場しないので、
ワールドランクの圏内に入るか
参加標準を突破するためには
自分でハイペースにしなきゃという
心理状況になりそうですし。
キプラガット選手といえば
みんなのペースメークというより
競って三浦選手の本気を引き出す
仕事をいつもしてる感じに見えて
しまいますが(笑)、キプラガット
選手がいないときの三浦選手が
どうなるかそれもちょっと楽しみ。

三浦選手と山口選手が有利かなとは
思いますが、ワールドランクでも
分かるとおり他の上位選手の実力は
僅差なので、展開や調子次第で
誰が3位以内に入るか読めません。

一発勝負なのでみんなベストを尽くせる
レースになることを期待したいです。
たびたび接触や転倒が起こる種目で
特にここのところ日本選手権では
多発しているように思いますが、
その後に救済の場はありませんし、
今度は何も起こらないことを祈ります。


3000mSCは6/26(土)16:05~なので
ギリギリ地上波で見られるみたいで
よかった!(5000mは毎年BSだな…)
そして五輪は7/30(金)の朝に予選で
同日夜に10000mってこの日仕事休んで
いいですかね(笑)。3000mSC決勝は
8/2(月)の夜のようだけど、もし誰か
決勝に進めたら何年ぶりの快挙?
さすがに予選はテレビ中継してくれると
思うけど、日本人が出るか分からない
決勝を中継してくれるか怪しいな…。
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