Gikuri

ギクリのブログ。たまに自意識過剰。

箱根駅伝の全国化について(今更)

2017-12-10 | 走る若人が好き
本日、箱根駅伝の一次エントリー各校16人が発表されました。
東洋の4年勢が戻ってこなかったのが痛いですね…エントリー
1人だけで前回9区区間賞の野村キャプテンなどが外れました。
下級生中心で次回に繋げる経験にはできそうですが、流石に
今回の優勝は厳しいかな…。そうするとメディアのいう3強
=青学+神大+東海の争いになるんでしょうかね?

青学は前回5区貞永選手が外れており、神大と東海も前回と
別の選手が山上りをするらしいので、優勝争いの鍵を握るで
あろう5区は3強いずれも初めての選手になります。
結構いけるか、無難にこなすか、それとも失敗するか…
展開が予想しづらいことこの上ないです。
でも山の神は今回の3強には出てこなくて結構です(笑)。
混戦と言われているので久々に終盤まで接戦で行って
ほしいのですが、山の神が出てくると往路で決着が付いて
また復路が消化試合状態になってしまいますからね…。
出るなら平等に3強全てに降臨でお願いしたい(笑)。

順大の花澤選手が入るかを一番注目していたのですが
無事入りましたね~!好調だったら1区走ってほしいですが
全日本まで姿を見せていなかったところを見ると故障明け
かもしれませんので、走るとしたら復路でしょうか。
本当せめて最後の一度くらいは走ってほしいんですが…。
全日本頃に故障者が多いと言われていた中央学院、
主力全員入ってきましたかね。山の上り下りとも実績が
ありますので、ベストで来られたら上位を狙えるかも?
帝京も全員力あって層が厚いので怖い存在ですね。今度こそ
確実にシードに入ってくると思うので、前回シード校は
どこか弾き飛ばされそうです。さてどこになるやら。

そして日テレ中継ゲストも発表されました。
往路:大迫(早稲田OB)+一色(青学OB)
復路:佐藤(東海OB)+服部(東洋OB)
だそうな。大迫選手よく呼べたな~。何気に初。
すなわち往復とも佐久長聖OB+豊川OBの組み合わせ(笑)。
優勝候補の神大OBや山上り経験者は呼ばなかったか…。
東海から2度目の佐藤選手を呼んだのが意外。日テレのことだから
もし東海が初優勝なんてなった時に備えて涙もろそうな
ゲストを呼ぼうとするんじゃないかと思ってた(下衆発想)。
佐藤選手クールだから絶対泣かんぞ(笑)。
そしてついに途切れた駒澤の16年(?)連続ゲスト記録…。


少し前に箱根駅伝の全国化が100回目以降に検討されていると
いう記事がスポーツ紙から出ました。
1社から突然出た記事であり関東学連からの発表もないので
「全国化の世論形成を意図して誰かが記事を書かせたのでは?」
と邪推しているのですが(笑)、私は反対かなあ…。

巷の反対意見を見ると「他地方の大学を出場させても弱すぎて
繰り上げになる」といった短期的視点での理由が多いですが、
私は全国化がある程度浸透した後を想定した中長期的視点での
反対理由を挙げてみたいと思います。

第1に、箱根駅伝の全国化によって全日本駅伝の不要論が出て
廃止されるおそれがある点。純粋に駅伝ファンとして寂しい。
今は箱根の方が関東ローカルなので差別化されてますが、
箱根が全国化したら箱根の方が元々人気があるので
「箱根が日本一決定戦でいいだろ、伊勢路なんか要らん」と
存在意義を疑われ、そのうち廃止されてしまうかもしれません。
あるいはもう一つの全国大会の出雲駅伝が廃止になるか。
今の日程だと箱根予選会出場校が直前の出雲駅伝に出たがら
ないと思うので、「全国化後の箱根シード校」10校と
アイビーリーグだけの寂しい出雲駅伝になっちゃいますし。
全日本も出雲も、箱根とは距離が違うなど別の面白さが
あって大好きですので、今のまま存続してほしいです。

第2に、大学に入学した選手が全員箱根を目指さなくては
いけなくなる点です。これが大きいですね。
箱根が全国化したら、関東以外の地方でも指導体制と環境を
用意できる全ての大学が箱根を目指すことになるでしょう。
少子化で大学間の学生獲得競争が激化しており、どこの大学も
箱根に出場して大学の宣伝をしたいに決まっているので、
経営戦略を考える大学上層部(?)からのトップダウンにより
しっかりした陸上部を持つ大学は必ず箱根に参戦します。
そうすると、大学の陸上部で本格的に陸上長距離を志す選手は
全員嫌でも箱根のための練習をしなければならなくなります
(選手不足だと中距離選手まで転向させられるおそれも)。
たとえ「俺は5000mまでしか走りたくない」と思っていても、
「お前も20km走れ」と言われたり無言の圧力があったりで
なかなか一人だけ意志を貫くのは難しいのではないかと…。
全国化で箱根出場の競争も厳しくなりますので、「お前は
箱根走らなくてもいいからトラック頑張れ」なんて言って
いられる余裕もなくなり、全員箱根に駆り出されるでしょう。

現状なら「箱根は走りたくないけど大学には入りたい」という
選手は他地方の大学に入り力を付けるという方法があります。
今年は関西学院勢が日本インカレの5000m、10000mともに
入賞を果たしたりトラックのタイムを伸ばしたりしていますし、
皇學館の1年生川瀬選手も同学年の関東有力選手に
全く引けを取りませんし、関東以外の大学の選手が何人も
躍進しています。高校の有力選手のほとんどは関東の大学に
スカウトされ、関東以外の大学にはあまり進学しないにも
かかわらずです。関東の大学では箱根に直接関係のない
種目や大会(特にトラック)に消極的な陸上部も結構あると
感じますので、それを望まない選手はむしろ関東以外の
大学を選んで実力を養う選択肢も十分「あり」なのです。
また、箱根を走らない大学に行ってもマラソンを走れるのは
先日の福岡国際マラソンで京産大出身の上門選手が好走して
証明しています。箱根路線ではない関東以外の大学は
今の状況でも優れた選手を育成し、日本の陸上長距離界に
大いに貢献しています(これはもっと知られるべきですし、
結果を残している大学は自信を持ってもっと積極的に
アピールしてほしいと思います)。

しかし、箱根が全国化して全国の大学陸上部が箱根を目指す
ようになると、どこも没個性といいますか、箱根に出場する
ために最も効果的なやり方、つまり関東の大学と同じような
やり方に変えてしまうことになると思います。
今ある選択肢が一つ減ってしまうようなものです。
「箱根は走りたくないけど大学には入りたい」という選手は
箱根を避けるのを諦めて箱根のための練習に取り組むか、
大学に入学するのを諦めて高卒で実業団に入るか(とはいえ
実業団の枠は少ないですし、例えば教職志望だと大学に入る
必要があります)、指導者や練習環境を諦めて陸上部に入らず
市民ランナーみたいな感じで一人走り続けるか(このほか
米国留学してる選手もいるけど相当高い学力が必要だし…)、
どれか希望を諦めて妥協しなくてはならなくなります。

箱根向きの練習が合わない選手やトラックで活きる選手が
無理に箱根の20km用に特化した練習ばかりさせられ、
良さが失われてしまうことがあれば悲劇です。
また、もし中距離軽視・長距離偏重の傾向が今以上に
強くなれば、選手の意思が尊重されなくなる点だけでなく、
日本の陸上中距離発展の妨げとなる点でもマイナスです。

第3に、留学生だらけになっていいのか?という点。
前述のとおり全国化で箱根出場権争奪戦が激化します。
また、最初は関東以外の地方は選手が足りない状態です。
チームの総合タイムを引き上げるのに最も手っ取り早い方法、
それは勿論強い留学生を連れてくることです。
日本人の有力選手は全国の多数の大学に散らばりますので
なかなか一つの大学に何人も集まらなくなりますし
(チーム全体の総合力は今よりレベルが落ちそうですね)、
留学生を獲得するのがだんだん普通になっていき、そのうち
関東含め留学生なしで戦うのが難しくなるかもしれません。

予選会で何十人もの留学生が先頭集団を形成する光景、
2区がインターナショナル区間状態になる光景…は
それはそれで迫力があって面白いのかも(笑)。
ただ、インカレは各校のタイムの速い留学生だけで埋まり
日本人が決勝に出られる余地がほとんどなくなるのでは?
そうすると真面目にトラックに取り組む日本人学生選手が
減って「箱根専門ランナー」ばかりが増えそうですので、
日本の長距離トラック種目の強化という観点からは
果たしてそれでいいのかどうか。
大迫選手の活躍で、マラソン目指すのでもまずトラックで
スピード強化する方法が改めて見直されつつありますが
(サブテンではなく日本記録レベルかそれ以上が目標なら)。


飛躍気味の部分もあるかもしれませんが、そんなわけで
5年か10年に一度の記念大会だけ全国選抜チームを
出場させるのはまだしも、毎年全国に開放するのには
ちょっと賛成できないですね…。
たぶん関東の大学が反対して実現しないと思ってますが。
もし「全国化の世論形成を意図した誰か」が関東以外の
地方の大学関係者なら、別の広報戦略で大学の宣伝をして
ほしいと思いますし、逆転の発想で「箱根を走らなくて
済むからこそ実現可能な選手強化プラン」を掲げて
選手を集めてみるのを考えてはどうかと思います。
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