ジェンダーからみるカンボジア

カンボジア社会について、ジェンダー視点から色々な情報をお届けします。

政治家の影には女性がいるーカンボジア女性の政治参加

2014年03月31日 | 女性の自立

 

カンボジアの地方政治に参画する4人の女性をインタビューして、カンボジアのおける女性の政治参画に関する分析をした貴重な論文、

"Beyond almost all politicians there are women in the shadows:Cambodian women’s experiences of local governance", in " Journeys from Exclusion to Inclusion: Marginalized women’s successes in overcoming political exclusion" publushed by International Institute for Democracy and Electoral Assistance, Stockhom, Sweden

Banteay Sreiという、わたしが理事をやってる女性支援団体がエンパワーしている女性たちがケーススタディーとして取り上げてられていたので、たまたま入手できた論文。何人もの50代の女性たちが、選挙に立候補して当選し、コミューン議員として活躍してる。将来的に、次回の選挙にはもっと多くの女性に立候補してもらうために、日々政治参加のための支援を実施してる団体はたくさんあって、Banteay Sreiもそのひとつ。近い将来ぜひ現場を見に行きたいんだけれどな。

↓カンボジアでは男性が王子様・王様?

立派な論文なんだけれど、残念ながらあんまり珍しい発見はなくって、女性は共育レベルが低いから結果として政治能力が低い、女性は自分に能力がないと思ってるなどなど、ほかの文献でも指摘されていることばかりが再確認されてる・・・きらいはあるんだけれど、それでもかなりしっかり文献調査をして書かれている論文。

4人の女性のインタビューが、かなり詳細にわたって紹介されてて、読んでるとだらけてくるのはちょっと手法を変えたほうがいいかかも。ただ、4人のうち1人だけは独身子どもなしで、その人だけは「移動性」に困らないっていう指摘をしているのが面白い。働く女性はたいてい、子育てとか家事が自分の仕事になってる場合が多いので、出張とか会議とか、家を長い時間離れるのが困難だと思う場合が普通なのだ。

結論というのはないんだけれど、調査・分析を通じていくつか提言があがってる。女性に経済力がつかなければ、政治参加も難しいっていう、これまた当然の指摘があって、こういう論文も特別に目を引くような提言を出すのは難しいなと感じるのである。

 

 

 

 

 

 

 


カンボジアの離婚について

2014年03月30日 | 女性の自立

 

カンボジアの離婚に関する調査はない・・・・・・ということが、ロンドン大学のキャサリン先生の論文でも確認できたので、調査のギャップを感じるのである。

 'Plates in basket will rattle' : Marital dissolution and home 'unmaking' in contemporary Cambodia

Katherine先生が書いた論文は、GEOFORUMという、ネット上での論文掲載。

↓SUSHIバーの砂肝は大好物。ビールにぴったり

カンボジアの婚姻に関して、とあるカンボジア人が言ってたらしい、「結婚における恋愛感情はボーナスであり、家族の協調は伝統である」というのは言いえて妙。

確かに、カンボジアのDV法でも、家庭内の調和が優先されている点が紹介されて、結婚は個人の選択というよりも、家父長制のシンボルとなっているのではないかと改めて思うのである。

 

 

 


Empowering Female Commune Councilors in Cambodia

2014年03月29日 | 女性の自立

 

 

Empowering Female Commune Councilors in Cambodia - 2008は、アジア開発銀行が実施している地方議会の女性参画支援プロジェクトの広報。

http://www.adb.org/themes/gender/gdcf-case-studies/empowering-female-commune-councilors-cambodia

ADBの事業はうまくいってるみたいだけれど、実際はなかなかそういかない。そもそも、こういった事業って、いろいろと違う形で違う場所で実施されてて、いろんなドナーがいろんなNGOに支援して実施してるんだけれど、まあいろいろややこしい。NGOの連携がうまくいかないのはまあ普通だし、政府側の対応がおそくって事業実施が遅れたりなどなど、そもそもマルチチャネルで支援するっていうのは機上の空論なのだ。

↓ADBのWEBサイトより、地方の役所はたいていこんなかんじ

 

 

どの報告書や調査を読んでてもでてくる、女性の政治参画の課題は・・・・

1.女性は指導者になれないって市民が感じてる

2.当選した女性でも自分の能力が低いって悩んでる

3.家族の支援がない(とくに夫)-ーそのためワークライフバランスが超難しい

4.疎外されているって感じてる

”Women councilors reported that they feel alone and marginalized on the commune councils.”

神戸市垂水区では、超美人の若い女性が選挙にでたんだかでるんだか、ポスターがはってある。それも2人も。ただ、政治家の写真っていうよりは、映画の宣伝だかウィスキーの宣伝みたいにしか見えないんだけれど・・・・気のせい?

政治家にとって外見って大切かもしれないし、女性にとってはBeautyがより重要なのはNaomi Wolfによらなくても当然のことなのかな?日本の女性参画も悲惨なんだけれど、女性のエンパワーメントは進んでる様子・・・・・・いろいろ考えてみるのである。

 

 

 


Domestic violence against women in Cambodia

2014年03月28日 | 女性の自立

 

"Domestic violence against women in Cambodia: Husband's control, frequency of spousal discussion, and domestic violence reported by Cambodian women" は、2009年にオンラインで公開された、カンボジアの家庭内暴力の問題を、夫の妻に対するコントロールと夫婦間の会話という観点からデスクレビューで分析した短い論文。

カンボジアでは、夫婦あるいは家庭において、夫(あるいは父)が圧倒的権力を持つことが社会的に容認されていて支持されているということを、CDHS2005年の結果から分析。いやほんとに情けないのは、どの調査でも、女性がこの家父長制を支持しているところで、女性に対する抑圧が内面化されている問題を感じるのである。家庭では、子どもにこの家父長制の概念が当然教育されているから、男子は家父長制のアイディアで育ってそういう夫となっていく悪いサイクル。

↓日本で流行ってるらしい缶詰めになってるパン、なかなか悪くない

夫婦間の会話という観点では、妻は夫に対して自分の考えをいうことが憚られる文化。話さなければ紛争はおきないので、妻は黙って聞くだけ。この論文の面白い点は、カンボジアにいる女性を対象としただけでなくて、アメリカに住むカンボジア人女性の意識調査の結果も引用している点。アメリカに住んでいるカンボジア人でも、「女性は話す時に配慮が必要・・・・あまり口を大きく開けないように、カバーして静かにしゃべる」などなど、女性が抑圧された生活パターンを内面化しているのが明らかになるのである。いろんな研究によると、日本人を含め、確かに、海外に生活している人ほど、もとの文化を保存しようとする傾向があるっていうのは事実なのだ。

夫のコントロールと夫婦間の会話って言う観点以外には、世代間でDVが連鎖していくとか、教育の問題にも軽くふれられている。

分析の結果としては、夫のコントロールは感情的・身体的暴力の両方に関係していること、夫婦間の会話は感情的暴力にのみ関連性があること、夫婦間の会話が増えると夫からの暴力が増えることが判明している。

 

カンボジア社会では男性が女性をコントロールすることと夫が妻を殴ることは社会的に容認されていて、それは世代間で連鎖する。わたしたちが変革しようとしているカンボジア社会は、なんとも障壁が高い文化なのだ。

 

 

 

 

 

 


Scoping study on women's land-rights in Cambodia 2013

2014年03月27日 | 女性の自立

 

Scoping study on women's land-rights in Cambodia 2013 は、 カンボジアのアドボカシーNGO,Star Kampucheaが2013年に出した、女性の土地所有に関する問題についてまとめた調査書。

↓みんなで魚生へとランチへお出かけ、飲茶は子どもたちも大好き 

残念ながら、いまいちなこの調査報告書・・・・・デスクレビューはとほほほって内容だし、政府の対応については事実が間違ってる(あるいはちゃんと情報を入手してない)だし、学生が書いた報告書かな?ってレベルなのである。

↓お手伝いさんたちは、やっぱり鳥の手だか足だかを注文・・・・・ 

ただ、土地問題については、さすがアドボカシー団体だけあって、Economic Land Consessionの問題が、少数民族の強制移住とか女性に対する抑圧になってるっていう分析が、事例に基づいて紹介されていて、それは勉強になるのである。

↓野菜のダンプリング、元気出そうで大好き

カンボジアの土地問題で面白いのは、私有地になっている土地を面積でみると、女性は全面積の18%しか所有していない(CSES 2012)のに対して、土地登記の名義でみると夫婦が70%、女性が20%、男性が5%と、個人レベルでは女性のほうが男性よりも多くなって、逆転状況が発生してる。

↓魚生の焼きそばは大好きなんだけれど、今回のはちょと味がうすかった 

 なぜ女性のほうが登記している数が多いかという分析では、(1)内戦で夫を失った女性たちは、カンボジアの社会的規範のせいで再婚しにくいので、夫婦の財産であった土地が妻の名義になっている土地が多い、のと、(2)政治家などが家族・親族の女性の名義を借りて多くの土地を所有している、という分析になってて、2つ目は政治家の実名がでて紹介されてて、ほんとかな?と思ったりするんだけれど・・・・・。

↓上の子が写真で選んだ不思議な料理 

 少数民族はECLのせいで多くが強制移住させられていて、移住先では男性が現金を稼ぎにでて、女性は生活を立て直すために働くだけでなくって現金収入も求めて稼がざるをえなくて、伝統的な生活習慣がかわってきてるという報告も。夫や父親が出稼ぎに出ている人も多い少数民族は、土地問題でも、きっと同じようなインパクトをうけていて、ジェンダー規範がかわってきているはず。政治的な問題でもあるから、なかなかちゃんとした調査をするのは難しいんだろうけれど、土地問題とジェンダー規範の変化は、もっと調査があってもいいなあ。

 

 

 

 

 

 


カンボジアの若者:婚前交渉によるインパクト

2014年03月26日 | 女性の自立

 

 

The Impact of premarital sex amongst young people in Cambodia は、友達のコラムニスト(プノンペンポスト)Soprachの修士論文。2001年に初めて会った頃の彼は、Gender and developmentの若手職員。ちょうどそのころ、カンボジアで初めてなされた集団強姦の調査をしていた時で、何度も議論した同僚だったこともあって、今でも友達。「自分の調査結果で、一人でも多くの若者がエイズにならなかったり希望しない中絶をしなくてよくなれば、それでうれしい」って言う活動家で、大学に講義にきてもらったりもしてる。

↓コールドカットの盛り合わせ、800円くらい?で激安のTerrazaはお気に入り

婚前交渉なんていう死後が、カンボジアの若い女性の間では重要な信仰の対象。実際、どの若者がどの程度どんな婚前のセックスの体験をしているかを、男性を対象として調査をした結果のまとめてて、なかなかおもしろい。Public Healthの観点からなので、セックスの回数や経験だけでなくって、どういうセックスをしてて、エイズやSTIについて危険でないかどうかを調査してる。

調査結果は、ジェンダーや人権の観点からはあまり芳しくなくって、多くの男性が若いうちにセックスを経験してて(まあそれはいいとして)、問題はギャングレイプの割合が高く、コンドームを使ってない場合も多いってことが判明。そもそも、セックスの経験をしたいからセックスワーカーを集団でレイプするっていうのが当たり前のことのように若者に理解されてるのが恐ろしい。これはPartner for prevention (P4P)が2013年に発表した調査結果でも同様の恐ろしい結果だった。

そもそも、「やってもいいと思うから」女性をレイプするっていう発想は、法治国家ではありえないはずなんだけれどなあ。自分の将来の妻はバージンでないと嫌だって言い張るくせに、セックスワーカーはレイプしてもいいと思って、めちゃくちゃなのである。仏教国なのに、このダブルスタンダードのはなはだしい人権差別発想は、どこからうまれてくるんだろう?もちろん、女性の間でも、「悪い女性」に対する蔑視が恐ろしいレベルであって、それもまた問題なのである。結婚前にレイプされたら、「悪い女性」になっちゃって、将来絶望的って思い込んでしまうのである。レイプした加害者が悪いって発想にならないから、仏教の教えの影響もあるらしいけれど、ともかくやっかいなのだ。

集団レイプの問題は、男性が性被害似合ってる割合が16%っていう事実と同様に、講義でもとても取り扱いにくい話題。なんせ、どの統計をみても、高校生で集団強姦をしている男性が圧倒的に多いカンボジア、大学生のかなりの数が加害者である可能性が高いのだ。レイプの経験をしている男子学生がたくさんいるはずの状況でレイプについてダメだからやめなさいと講義するのは、聞きにくそうにする男子も多いし、なんとも難しい。女性に対する暴力は、やはり男性が講義するほうがインパクトあると思うのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


CEDAW Shadow report 2013

2014年03月25日 | 女性の自立

 

カンボジアのジェンダー規範の文献研究。NGO-CEDAWが2013年9月に出版したカンボジアのCEDAW履行状況に関する報告書は、「われわれの調査によると・・・・」っていう記載がけっこうあって、田舎の状況がいろいろ伝わってくる貴重な文献。

第14条、農村女性に関して、農村地域での医療体制不備が指摘されているのは、政府の文書ではまず出てこないし、さらには医療NGOでもなかなか書けないのではないかと思う辛辣な内容。「政府は、外国の支援で病院を建設して保健医療分野のサービスは向上していると広報していうが、われわれの調査ではNegativeな回答である」

↓家族でお出かけの様子、大勢なのでにぎやか

要は、農村地域では遠くのヘルスセンターまでわざわざ女性が行っても、医者の対応は悪いし薬はないし、無料のサービスでもお金を出さないとみてくれないとか、まあそんなもんなんだろうと予想される悲惨な対応が記載。そもそも、病院が女性が必要なサービスを提供できるように建設されてサービスが提供できるようになってるかも疑問である、と、ほんとに調査しての結果なのかな?と思うくらい厳し批判。

 

 


高齢女性に対する暴力

2014年03月24日 | 女性の自立

 

 

 

Cambodian Gender Assessmentでは、Women with additional riskという女性のカテゴリーが設定されていて(いつの間にか・・・・)、Elder women, LBT (lesbian, Bi-sexual and Transgender), women with disabilities, women from ethnic minotiry groups の4のグループが取り上げられてる。Sex workersは入ってなかったりするし、Women in Prisonもはいってなかったり、まあ不完全なのだけれど、どこかで線引きは必要なのだろう。

↓子どもたちがたくさんのカンボジアは日本と違うなあ・・・・

Help Ageっていう高齢者支援のNGOの理事になったので、できるだけ高齢者問題にもかかわろうと思っているわたし。ちょうど面白い資料を入手したのでさっそく勉強してみる。

 

 

Expert Meeting, Human Rights of Older persons, 29-31 May 2012

Violence and abuse against older persons in the public and private sphere

 

女性の権利擁護のためには、ライフサイクルのアプローチが必要という主張があって、ちょうどそれは今自分がカンボジアの女性の状況を分析するのに利用しようとしている枠組みなので、とても勉強になるのである。

高齢者に対する暴力に関する専門家会合の提言

1.人権の普遍的な適用

2.暴力が継続的なものであるという認識に基づく介入

3.国は個人的かつ組織的な差別について認識すること

4.女性か社会においておかれている立場を包括的に理解

 

結局、こういう国際会議では、普遍的というのか当たり前の大枠で合意するしかないのは悲しいかな・・・・・


無事日本へ移動

2014年03月23日 | カンボジアの外で感じたこと

 

 

日本へ戻る日、朝から大学で活動家仲間とジェンダー正義のワークショップ。

↓気合いを入れるためシャンゼリゼで食事

シャンゼリゼのクイティエウって、具がたくさんで、ほかの店のと全然違うのである。

↓丸一日、ジェンダーについてクメール語で特訓

↓セクシャリティのセッション、メッセージという観点からの実践講義

結局丸一日ばたばたして、夜になってちょっとだけパッキングして空港へ。洋服は全部日本だから、おみやげとか食べ物を持って帰る程度。

↓なぜだか長靴をはいて帰ると主張した上の子に、下の子は靴なし

仕事を持って帰るから、フルタイムママってわけにはいかないけれど、あったかい日本の春を楽しもう。

 

 

 

 


しばらく日本の生活

2014年03月22日 | カンボジアの母子保健

 

子どもたちは、これから一か月ほど日本での生活。

↓日本に戻るため、下の子には「母」がだれかの特訓・・・・・

兄弟で遊んでて、とってもかわいいのである。

この1か月ほど、昼間は仕事に没頭しつつ、夜になると気分転換に遊びにでて、ほとんど家にいなかった生活が続いてた・・・・

↓子どもは偉いので、母の様子を察してかんじで寝ちゃうことも

 

日本では、ちょっとくらいは子ども孝行しよう・・・・・