"Domestic violence against women in Cambodia: Husband's control, frequency of spousal discussion, and domestic violence reported by Cambodian women" は、2009年にオンラインで公開された、カンボジアの家庭内暴力の問題を、夫の妻に対するコントロールと夫婦間の会話という観点からデスクレビューで分析した短い論文。
カンボジアでは、夫婦あるいは家庭において、夫(あるいは父)が圧倒的権力を持つことが社会的に容認されていて支持されているということを、CDHS2005年の結果から分析。いやほんとに情けないのは、どの調査でも、女性がこの家父長制を支持しているところで、女性に対する抑圧が内面化されている問題を感じるのである。家庭では、子どもにこの家父長制の概念が当然教育されているから、男子は家父長制のアイディアで育ってそういう夫となっていく悪いサイクル。
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夫婦間の会話という観点では、妻は夫に対して自分の考えをいうことが憚られる文化。話さなければ紛争はおきないので、妻は黙って聞くだけ。この論文の面白い点は、カンボジアにいる女性を対象としただけでなくて、アメリカに住むカンボジア人女性の意識調査の結果も引用している点。アメリカに住んでいるカンボジア人でも、「女性は話す時に配慮が必要・・・・あまり口を大きく開けないように、カバーして静かにしゃべる」などなど、女性が抑圧された生活パターンを内面化しているのが明らかになるのである。いろんな研究によると、日本人を含め、確かに、海外に生活している人ほど、もとの文化を保存しようとする傾向があるっていうのは事実なのだ。
夫のコントロールと夫婦間の会話って言う観点以外には、世代間でDVが連鎖していくとか、教育の問題にも軽くふれられている。
分析の結果としては、夫のコントロールは感情的・身体的暴力の両方に関係していること、夫婦間の会話は感情的暴力にのみ関連性があること、夫婦間の会話が増えると夫からの暴力が増えることが判明している。
カンボジア社会では男性が女性をコントロールすることと夫が妻を殴ることは社会的に容認されていて、それは世代間で連鎖する。わたしたちが変革しようとしているカンボジア社会は、なんとも障壁が高い文化なのだ。