失われた史前学―公爵大山柏と日本考古学 価格:¥ 3,570(税込) 発売日:2004-03-12 |
この『失われた史前学』は、明治大学の考古学者・阿部芳郎さんが、大山 柏[1889-1969]さんと大山史前学研究所について書いた本です。副題には、「公爵大山柏と日本考古学」とあります。2004年に、岩波書店から出版されました。
本書の内容は、以下のように、全18章からなります。
- ある考古学徒との出会い
- 瓦礫に埋もれた研究所の発掘
- 発掘調査を再現する
- 大山柏のおいたち
- 陸軍時代のヨーロッパ留学
- 大山史前学研究所の組織と活動
- 史前学会の活動
- 加曽利貝塚への見学会
- 土器製作技術の基礎的研究
- 初めての泥炭層遺跡の本格発掘
- 縄文農耕論の提唱
- 貝塚の発掘と縄文文化の編年
- 前期初頭の貝塚と漁労活動
- 大山柏と旧石器研究
- 世界に紹介された日本の石器時代
- 北の守りと『基礎史前学』
- 戦後の大山柏
- 大山柏と現代考古学
大山 柏は、明治の元老・大山 厳[1842-1916]の次男として生まれ、陸軍士官学校を卒業しますが、ヨーロッパ留学後、自邸に大山史前学研究所を創設し、『史前学雑誌』も創刊して先史学や考古学の研究に没頭します。しかし、1945年5月25日の東京大空襲により研究所が焼失しました。大山 柏は、1943年に北海道の根室に警備隊大隊長として出征していましたが、戦後は、那須に隠棲し先史学や考古学の世界に戻ることはありませんでした。著者の阿部芳郎さんは、再開発されることになった大山史前学研究所の跡地を発掘しています。本書は、人類学にも深い関わりをもった大山 柏や大山史前学研究所について書かれており、人類学史にも大変参考になります。