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日本の人骨発見史19.根古屋遺跡(弥生時代):穿孔歯と穿孔骨

2014年02月23日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

 根古屋遺跡は、福島県伊達市(調査時は伊達郡霊山町)根古屋に所在します。この遺跡は、弥生時代の再葬墓で、霊山町教育委員会を主体とする発掘調査が、1982年10月から同年11月まで実施されました。報告書は、1986年に霊山根古屋遺跡調査団により、『霊山根古屋遺跡の研究』として出版されています。

 この遺跡では、25基の土坑から124個体以上の土器が出土し、100個体から200個体にものぼる焼人骨が出土しています。出土人骨の報告は、獨協医科大学(当時)の馬場悠男(現・国立科学博物館名誉研究員)・茂原信生(現・京都大学名誉教授)・阿部修二(現・獨協医科大学)・江藤盛治[1926-1999]等により行われました。

 馬場悠男等によると、人骨は900度以上の温度で焼かれており、収縮・変形・亀裂が著しい事から、白骨化した状態のものではなく、遺体の状態で焼かれたと推定されています。

 人骨には、歯や骨に穿孔を受けたものが16点発見されました。

 歯では、上顎右P2(第2小臼歯)・上顎右M3(第3大臼歯)・上顎左M3(第3大臼歯)・下顎左M1(第1大臼歯)・下顎左M2(第2大臼歯)の6本の歯種が同定されています。これらの歯は、歯冠部のエナメル質が熱により飛散しているため、被葬者が装身具として使用していた状態で遺体と一緒に焼かれたのかもしれません。

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写真1.根古屋遺跡出土穿孔歯[馬場悠男等(1986)「第二編.根古屋遺跡出土の穿孔された人骨・歯装身具について」『霊山根古屋遺跡の研究』より改変して引用]

 骨では、右第4中手骨・左手第5中節骨・足基節骨・左足第5(4)基節骨・右足第3(4)基節骨・足第2(5)基節骨・足基節骨・右足第2中節骨の 8点が同定されています。

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写真2.根古屋遺跡出土穿孔骨[馬場悠男等(1986)「第二編.根古屋遺跡出土の穿孔された人骨・歯装身具について」『霊山根古屋遺跡の研究』より改変して引用]

 この遺跡出土人骨には、上下顎の切歯及び犬歯に抜歯が認められています。しかし、興味深いことに、穿孔された歯はいずれも小臼歯又は大臼歯で、抜歯した歯を使用していません。この点は、群馬県で出土した穿孔歯も同様の傾向にあります。なぜ、抜歯した歯を使用せずに別の歯に穿孔したのかは不明です。

*根古屋遺跡出土人骨に関する資料として、以下の文献を参考にしました。

  • 霊山根古屋遺跡調査団編(1986)『霊山根古屋遺跡の研究』
  • 馬場悠男・茂原信生・大竹憲治(1986)「第二編.根古屋遺跡出土の穿孔された人骨・歯装身具について」『霊山根古屋遺跡の研究』(霊山根古屋遺跡調査団編)、pp.114-120

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