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人類学のススメ

人類学の世界をご紹介します。OCNの「人類学のすすめ」から、サービス終了に伴い2014年11月から移動しました。

骨考古学の洋書7.人骨の考古学

2009年09月24日 | I7.骨考古学の洋書[Osteoarchaeology:
The Archaeology of Human Bones The Archaeology of Human Bones
価格:¥ 4,291(税込)
発売日:1998-03

 この本の原題は、『The Archaeology of Human Bones』です。直訳すると、「人骨の考古学」となります。イギリスの骨生物学者、サイモン・メイズ[Simon MAYS]さんが、人骨の分析方法について書いたもので、1998年にRoutledgeから出版されました。

 本書の内容は、以下のように全11章からなります。

  1. 骨と歯の性質
  2. 考古学的遺跡における人骨
  3. 死亡年齢と性別の判定
  4. 計測による変異
  5. 非計測的形質の変異
  6. 骨の病気
  7. 歯の病気
  8. 骨の傷跡
  9. 骨の化学分析
  10. 古代の骨からのDNA研究
  11. 焼骨

 骨考古学や生物考古学の分野では、多くの洋書が出版されていますが、この本は、その中でも、遺跡から出土する人骨について集中的に書いている本で、大変、参考になります。また、特に焼骨についての記載が他の本よりも多いのが特徴です。

Mays1998

Mays(1998)『The Archaeology of Human Bones』表紙(*画像をクリックすると、拡大します。)


骨考古学の洋書6.生物考古学

2009年09月23日 | I7.骨考古学の洋書[Osteoarchaeology:

Bioarchaeology: Interpreting Behavior from the Human Skeleton (Cambridge Studies in Biological and Evolutionary Anthropology) Bioarchaeology: Interpreting Behavior from the Human Skeleton (Cambridge Studies in Biological and Evolutionary Anthropology)
価格:¥ 8,687(税込)
発売日:1997-10-01

Bioarchaeology: Interpreting Behavior from the Human Skeleton (Cambridge Studies in Biological and Evolutionary Anthropology) Bioarchaeology: Interpreting Behavior from the Human Skeleton (Cambridge Studies in Biological and Evolutionary Anthropology)
価格:¥ 5,149(税込)
発売日:1999-02-01

 この本の原題は、『Bioarchaeology』で、直訳すると「生物考古学」となります。ノース・カロライナ大学のクラーク・ラーセン[Clark LARSEN]さんが、出土人骨から行動を解釈する方法について書いたものです。1997年に、ケンブリッジ大学出版から出版されました。

 本書は、以下のように全10章からなります。

  1. イントロダクション
  2. 成長期と成人期のストレスと欠乏
  3. 感染症への曝露
  4. 傷と非業の死
  5. 活動パターン1:関節と筋肉による変化
  6. 活動パターン2:構造適応
  7. 咀嚼と非咀嚼の機能:頭蓋顔面適応
  8. 同位体と元素による食物と栄養
  9. 骨の変異と遺伝関係
  10. 生物考古学の変化とチャレンジ

 章のタイトルを見ると、難しそうでわかりにくいですが、中身を読んでみると大変興味深いものです。お亡くなりになられた、元国立歴史民俗博物館館長の佐原 真先生は、この本の第4章を読んで、日本の先史時代の戦争について考察されておられました。

Larsen1997

Larsen(1997)『Bioarchaeology』表紙(*画像をクリックすると、拡大します。)


骨考古学の洋書5.骨の発掘

2009年09月04日 | I7.骨考古学の洋書[Osteoarchaeology:
Digging Up Bones Digging Up Bones
価格:¥ 3,879(税込)
発売日:1981-01

 この本の原題は、『Digging Up Bones』で、「骨の発掘」という意味です。ヨーク大学名誉教授のドン・ブロスウェル[Don R. BROTHWELL]さんによる骨考古学の名著です。イギリスの骨考古学の教科書と言っても過言ではありません。1981年の版で、3版を重ねました。私も、学生時代にこの本で勉強し、第1版・第2版・第3版と3冊持っています。写真や図が多用されており、大変、参考になる本です。

 本書の内容は、以下のように、全6章からなります。

  1. 人骨の発掘と報告の注意点
  2. 人骨の研究と説明
  3. 骨生物学の人口学的見地
  4. 人骨の計測と形態学的分析
  5. 人骨の受傷痕
  6. 古代の病気

 ブロスウェルさんは、イギリスの古病理学の権威として有名です。そのことを示すように、本書の第6章は、古病理学の説明にさかれています。

Brothwell1981

Brothwell(1981)『Digging up Bones』表紙(*画像をクリックすると、拡大します。)


骨考古学の洋書4.骨に書かれた歴史

2009年08月20日 | I7.骨考古学の洋書[Osteoarchaeology:

Written in Bones: How Human Remains Unlock the Secrets of the Dead Written in Bones: How Human Remains Unlock the Secrets of the Dead
価格:¥ 3,577(税込)
発売日:2003-03

Written in Bones: How Human Remains Unlock the Secrets of the Dead Written in Bones: How Human Remains Unlock the Secrets of the Dead
価格:¥ 2,550(税込)
発売日:2003-03

 この本の原題は、『Written in Bones』で、「骨に書かれた歴史」という意味です。ポール・バーン[Paul BAHN]さんによる編集で、2003年に、A Firefly Bookから出版されました。副題には、「人骨がどのようにして死者の秘密を明らかにしたか」とあるように、世界中の遺跡から出土した人骨やミイラから明かされる歴史について書かれた本です。

 本書は、全5章に分かれ、第1章.生活方法・第2章.自然死・第3章.殺人・第4章.お墓・第5章.ミイラとミイラ化となっています。

 カラー写真や図を多用しており、世界中の人骨やミイラについての素晴らしい物語が多数紹介されています。是非、翻訳化されることを望む1冊です。


骨考古学の洋書3.生物考古学

2009年06月19日 | I7.骨考古学の洋書[Osteoarchaeology:

Bioarchaeology: The Contextual Analysis of Human Remains Bioarchaeology: The Contextual Analysis of Human Remains
価格:¥ 6,695(税込)
発売日:2006-10-13

 本書の英文タイトルは、『Bioarchaeology』で、アリゾナ州立大学のジェーン・バイクストラ[Jane E. BUIKSTRA]先生とアリゾナ州立博物館・アリゾナ大学のレーン・ベック[Lane A. BECK]さんの編集により、2006年にアカデミック・プレス[Academic Press]から出版されました。アメリカ・カナダ・イギリスの人類学者、27人が寄稿しています。

 本書の構成は以下のように、全3部からなります。

第1部.人々とプロジェクト:初期のアメリカの生物考古学

第2部.専門分野の台頭

第3部.21世紀への展望

 編著者のバイクストラ先生は、シカゴ大学大学院で人類学の教育を受けた生物考古学、特に古病理学の専門家です。私は、アメリカ留学中の1985年夏に、ノースウェスタン大学の考古学野外実習に3ヶ月参加し、バイクストラ先生に古病理学の手ほどきを受けたことがあります。先生が生物考古学を専攻するようになった理由は、医師のお父様の影響だと私に語られたことがあります。1985年には、弱冠40歳にしてアメリカ自然人類学会会長に選出され、1987年までその重責を果たされました。女性会長は、当時で3人目でした。

 この野外実習の経験は、2002年に群馬県埋蔵文化財調査事業団研究紀要第20号に、「ノースウェスタン大学人類学部の考古学野外実習」としてまとめました。

 さて、本書の第7章には、女性生物考古学者についての紹介があります。ここには、 19人の女性生物考古学者の紹介があり、私も何人かの先生には直接お会いしたことがあります。その中でも、元スミソニアン国立自然史博物館の故ルシール・セント・ホイム[Lucile E. St. HOYME(1924-2001)]先生との思い出をご紹介します。

 ホイム先生は、1942年に18歳でスミソニアン国立自然史博物館の著名な人類学者、アレシュ・ヘリチカ[Ales HRDLICKA(1869-1943)]先生の秘書になりました。ところが、翌年の1943年にヘリチカ先生が死去されたために、今度は著名な法医人類学者、トーマス・デール・スチュワート[Thomas Dale STEWART(1901-1997)]先生の秘書として働くことになりました。ホイム先生は、博物館で秘書として働きながら、ジョージ・ワシントン大学で1950年に学士号を、1953年には修士号を修了しました。1957年には、オックスフォード大学に留学し、著名な人類生物学者のジョセフ・ワイナー[Joseph Sidney WEINER(1915-1982)]先生と著名な霊長類学者・解剖学者のウィルフリッド・ル・グロ・クラーク[Wilfrid Edward Le Gros CLARK(1895-1971)]先生の指導を受け、1964年には博士号を取得しました。博物館では、1963年からようやくキュレーターとして勤務しています。41歳からの、人類学者としての遅咲きのスタートでした。

 私は、1988年にアメリカ自然人類学会で、ホイム先生とお会いして親しくお話をさせていただく機会を持ったことがあります。それは、私がホイム先生と同じ大学院の出身だったことや、当時骨組織からの死亡年齢推定という同じ分野の仕事をしていたからでしょう。その時に、ヘリチカ先生やスチュワート先生の秘書だったこと等を伺いました。印象に残っているのは、「旅をする時には、飛行機ではなく、電車や車を使いなさい。」というお言葉でした。それは、「旅をしながら、その土地の地形を良く見るためです。人類学者なら、そうすべきです。」と穏やかな口調でおしゃべりになったことを、今も、肝に銘じています。


骨考古学の洋書2.人の骨学

2009年06月18日 | I7.骨考古学の洋書[Osteoarchaeology:

Human Osteology: A Laboratory and Field Manual (Special Publications (Missouri Archaeological Society), No. 2.) Human Osteology: A Laboratory and Field Manual (Special Publications (Missouri Archaeological Society), No. 2.)
価格:¥ 2,465(税込)
発売日:1995-11
 この本の英文タイトルは、『Human Osteology』で、1971年の初版・1979年の第2版・1987年の第3版と版を重ねてきた、人類学の分野での骨学のベストセラーです。著者は、アメリカのテネシー大学ノックスヴィル校の現名誉教授のウィリアム・バス(William BASS)先生です。ミズーリ考古学協会[Missouri Archaeological Society]から、出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全4章からなります。

1.イントロダクション

2.頭蓋骨

3.四肢骨

4.歯

 図が多用されており、人の骨学を学ぶために最適の本です。

 私も、学生時代から愛用しており、初版・第2版・第3版をそれぞれ所有しています。これらの3冊を見ることで、版を重ねるにあたっての改善点が理解できます。

 バス先生は、ペンシルヴェニア大学で法医人類学の権威のウィルトン・クロッグマン先生から教育を受けている方で、テネシー大学のノックスヴィル校に、法医人類学の拠点を築いた方です。私も、アメリカ留学中の1986年にバス先生を訪問したことがあります。テネシー大学の大学院に行きたかったのですが、様々な理由で、それは叶いませんでした。

Bass1987

Bass(1987)『Human Osteology』表紙(*画像をクリックすると、拡大します。)


骨考古学の洋書1.遺跡出土人骨

2009年06月16日 | I7.骨考古学の洋書[Osteoarchaeology:

Human Skeletal Remains: Excavation, Analysis, Interpretation Human Skeletal Remains: Excavation, Analysis, Interpretation
価格:¥ 3,199(税込)
発売日:2008-04-30
Human Skeletal Remains: Excavation, Analysis, Interpretation
価格:¥ 2,108(税込)
発売日:1999-12-01
Human Skeletal Remains: Excavation, Analysis, Interpretation (Manuals on Archeology Series No. 2)
価格:¥ 2,108(税込)
発売日:1989-06
 この本の英文タイトルは、『Human Skeletal Remains』で、アメリカのスミソニアン国立自然史博物館の人類学者、ダグラス・ウーベラカー[Douglas H. UBELAKER]さんによる、骨考古学の本です。1978年に、Taraxacum社から「考古学のマニュアル」の第2集として出版されました。1989年には、第2版が出版されています。初版は総頁が116頁でしたが、第2版では172頁となり、大幅に頁が増えています。

 ウーベラカーさんは、カンザス大学で人類学の教育を受けた、法医人類学者です。発掘された人骨の、性別・死亡年齢・身長・民族等を鑑定するスペシャリストで、かつては、人骨の骨組織から死亡年齢を推定する方法を研究されていました。

本書の内容は、以下のように、全6章からなります。

1.イントロダクション

2.人骨の取り上げ

3.性別、身長、死亡年齢の推定

4.文化と古病理の影響

5.人種、個人同定、死後経過

6.古人骨の事例

 人類学や法医人類学での長年の経験をふまえて書かれているもので、骨考古学・法医人類学・動物考古学・古人口学の分野で、大変、参考になる本です。ただ、巻末にある全身骨格の中で、頸椎(Cervical Vertebrae)の数が「5」になっていますが、正しくは「7」ですので注意して下さい。この点は、初版も第2版も訂正されていません。頸椎の数は、哺乳類に共通して基本的に「7」です。キリンの長い首には、何十個も頸椎がありそうですが、実際には長い頸椎が7つあります。また、頸椎がなさそうなクジラも、7つの骨がくっついた状態になっています。この頸椎について興味がおありの方は、群馬県立自然史博物館の2階の常設展示で見ることができます。1996年に、私が担当して作った、ヒト・キリン・クジラの頸椎を比較して展示してあります。

 このブログでは、動物考古学の本も紹介していますが、ここで、「骨考古学」というのは人骨を対象としたものを指します。なお、ウーベラカーさんのお名前は、かつてはユーベレーカーと訳していましたが、かつて、スミソニアン国立自然史博物館に留学されていた、国立科学博物館人類研究部長の溝口優司先生から、教えていただきました。溝口先生が留学されていた1987年に、私もスミソニアン国立自然史博物館を訪問し、夜は、ワシントンDCのジョージタウンで2人で飲んだことを思い出しました。

Ubelaker1989

Ubelaker(1989)『Human Skeletal Remains』表紙(*画像をクリックすると、拡大します。)