来月塩尻で話を依頼されています。桔梗が原の狐の話をしようと、図書館で関連文献をあたったところ、いやな話にはまってしまいました。自分は狐に化かされる話をしようと思っているのですが、文献にあたって出てくるのは「狐憑き」の話です。動物が人に憑くなどということは、今では想像もつかないことですから、相当に昔のことかと思ってみるのですが、記憶の底をさらってみると、自分の子どものころに、どこそこの人に狐がついて、寝床に狐の毛があったとかいう話がささやかれていたような気がします。調べると、狐憑きは世情不安な明治維新前後や、敗戦後に流行ったようなのです。敗戦後というのには驚きます。つい先ごろといってもいいじゃないですか。それに、合理的な考え方を学校で教えられてもいたはずなのに、動物が人に憑くなどということが、まじめに語られ信じられていなのです。そういえば、もっと最近に、憑き物を落とすといって親族が痛めつけて死んでしまった人がいたような。カルト教団のしていることも、ある面憑き物に通ずるような気がします。そして、根も葉もない最近のヘイトスピーチも、誰かに不満の原因を集団で押し付けようとするのは、憑き物と同じではないでしょうか。~~に狐が憑いた、といって排斥し攻撃すれば弁解する余地がありません。最近の不倫騒動や舛添問題も、根っこは通じているようなきがします。SNSという噂話がふくらむと攻撃性を帯びていくのです。昔はムラの噂話は恐ろしかったのですが、今はネット村の噂話が本当に怖くなっています。そんなものに乗って相手を攻撃する国会議員もいます。
狐の資料探しもひと段落したので、借りてきた狐関連の本を返却し、背表紙だけを見て借りた「鬼神の狂乱」という本を家に帰って開いてみると、江戸時代の土佐の狗神憑きの話でした。しばらくは、「憑く」というのを考えなさいということでしょうか。
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