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夏野剛氏、日本の起業家に痛烈な皮肉 -「8割は大企業に入れない人材、米国なら交代させられている」

2011-01-18 | いとすぎから見るこの社会-全般
凄いコラムを発見しました。

日本で起業さえ増えてゆけばと素朴に考える論者は多いですが、
(池田信夫教授もその傾向が強いように見える)
それは幻想です。起業は経済を活性化させる万能の神ではありません。

私は、自分の才覚を差し置いて、採用した人間が使えないと
ばかり愚痴っている起業家の話を聞かされたことがあります。

夏野剛氏がフェイスブックをモデルとした映画の上映を機に、
日本のITベンチャー企業経営の問題を一刀両断されていますので
是非この素晴らしいコラムをお読み下さい。





『ソーシャル・ネットワーク』デビッド・フィンチャー監督


夏野剛×中村伊知哉、『ソーシャル・ネットワーク』をサカナに日本企業の体質を語る(bizmakoto.jp)
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1101/18/news038.html

起業家が偉くて、大企業に入る奴はリスクをとらないといわれるのは大嘘です。
 大企業に入れないから起業家をやっているってだけのヤツが、だいたい起業家の8
 割くらいいますが、こういう人は大企業にいたって大きな仕事はできないし、起業
 したって大きな仕事はできない。

 一方で、起業するかもしれないし、あるいは大企業に入るかもしれないけど、とに
 かくでっかいことをやりたい、あるいはミッションとして何かを持っているという
 人。僕は起業家の中の2割ぐらいがこれだと思っている。
 つまり、目先のお金よりも、あるいは六本木で遊ぶことよりも、モテモテになるこ
 とよりも、何かもうちょっと世の中を良くしたいだとか、こういうことをやれば世
 の中が動くぞ、良くなるぞとか。世の中が良くなるというのが偽善のように感じる
 のならば、「みんながもっと楽しいといいじゃないか」と思う。
 この映画にでてくるザッカーバーグというのは、両方持っていますよね。つまり、
 目先のめちゃくちゃ面白いことをワーッとやりたいというのと、こんなのあったら
 もっと面白いんじゃないっていうのと。これってハーバードの学生たちが使ったら
 楽しいよね、と。”

 → 私はFacebookに見られるような強烈なパワーと
   経済のダイナミズムに恐怖を感じる。

   これこそ60年前の大戦で日本を完膚なきまで叩きのめし、
   近年においては台湾と組んで日の丸半導体の牙城を潰した
   アメリカの漲るエネルギーの源泉なのだ。


夏野 少し話がずれるかもしれませんが、この映画を観て、思いを馳せると、日本
 と米国のベンチャー環境の違いが浮き彫りになる。米国のベンチャーがものすごい
 勢いで立ち上がる理由は2つ。それは、人材とお金なんですよね。

 つまり、モノと良いアイデアを持った人材がいて、バーンと事業を立ち上げようと
 するときに、かなり早い段階で投資をするファンドが登場する。それと、ショーン
 みたいなファンドと創業者をつなげようとする人がいる。ショーン自身はお金をも
 っていない人ですけど、彼のように“発掘してくること”に長けたヤツらがいっぱ
 いいる。映画ではいきなり50万ドルの投資がありましたけど、こういう風にバンバ
 ン資本が入ってくる。

 〔中略〕
  ●創業者は、必ずしも良い企業経営者になれない
 夏野 当然ですが資本を入れる側は経営がきちんとしていてほしいと思っている。
 そこで、創業者の役割をうまく交代させていく。つまり、創業者が必ずしも良い大
 企業経営者になれるとは限らないのです。創業に才能があってスタートアップをス
 ムーズにやれて、そのあとも企業をでっかくできるような両方の才能を持っている
 人もいますが、まあ100人に1人ですよね。

 資本が入ることで、プロフェッショナルな経営者も入ってくる。この映画では最初
 にエドゥアルドがいて、ショーンが入ってきて、その後にいろいろな人が入ってく
 る。
 これと同じようなことがgoogleにもいえて、ラリーとセルゲイの2人が経営して
 いたら、googleはとっくに潰れていたかもしれない。投資家の紹介で、エリック
 ・シュミットがプロフェッショナルな経営者としてかなり早い段階から参画したこ
 とで成功したんです。

 このようにベンチャーキャピタルから、お金と人材が供給されるわけです。日本で
 2000年前半に創業したベンチャー企業の、あるいはこのころに上場した企業の経営
 者を眺めてみると、ほとんど顔ぶれが変わっていないと思う。
 モバイル関係のベンチャー企業の社長は全員しっていますけど、いまの経営環境に
 ふさわしい経営者は1割だけですね。残りの9割は早く交代したほうが、絶対にビ
 ジネスは大きくなっている
と思っているのですけど、この人たちは創業利益をもっ
 ているし、いまでも給料を貰っていて、社員がみんな「社長」なんて呼んでくれる
 から、変わるはずがない。創業当時に比べていまの方が時価総額が高い会社もない。
 米国だったら株主からとっくに交代させられていたり、ハッピーリタイアしていた
 りしているはずです。
だからこの映画は社会システムという視点から見ても、日本
 と米国の環境の違いをとてもよく表していると思います。〔以下略〕”

上場時点で株価が頭打ちになるのは、創業経営者が強欲であり、
なおかつ株主への責任を軽んじているからです。
それ以外に理由はありません。
(IPOに関わる者は殆ど皆それを知っている)

私はその点、堀江氏の悪影響が非常に強いと考えています。
市場から調達した「公」の資金は1円たりとも濫用してはならず、
あらゆるリスクを制禦して成長を続けなければならないのだ。

日本においては卓越した経営人材が不足していますし、
そうした人材を育てる環境もありません。
ですから、起業を優遇し賞賛しても問題は解決しません。


▽ アメリカのベンチャー事情はこちらに詳しい。





『超・格差社会アメリカの真実』(小林由美,文藝春秋)


▽ こちらは一般庶民向け、アメリカの活力を認めたくない人の読む本





『ルポ 貧困大国アメリカ』(堤未果,岩波書店)


国債で賄った借金で高齢者医療に充当している自転車操業の日本医療は、
いずれアメリカ同様かそれ以上の地獄を見ることになるだろう。
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