リーマンショックの後の米政府やバーナンキ、そして近年の中国政府も
「資産バブル崩壊後の日本の長期停滞は反面教師」だと考えていた。
日本が根本対処を先送りにして問題を深刻化させたからだ。
しかし重要なのは、日本の低成長がその後も続いており、
米経済回復・円安急伸に助けられた2013年ですら成長率3%にも達せず
翌年、翌々年と1%前後の低成長に戻るのが確実であることだ。
…これは、日本の長期停滞が財政支出や金融緩和や構造改革などではなく、
まだ識者が殆ど指摘していない日本の独自要因によるものであることを示唆している。
今、日本社会が世界の最先端を行っている分野が新たに一つある。
生産年齢人口が減少の一途を辿る中で社会保障支出が高齢層向けにロック・インされ、
高齢層向け給付ばかりが累増してGDPの伸びがそれを下回る現象である。
折しも報道によれば、リーマンショック後の経済危機の間に
高齢層の貧困率が低下し、若年層の貧困率が上昇していると言う。
我々は共産主義国の経済の非効率性を嘲笑してきた。
ベルリンの壁が崩壊したことを必然と考えているが、
次に崩壊する「壁」は日本かもしれないのである。
なぜなら我が国の社会保障は悪平等の共産主義国と極めてよく似ているからだ。
▽ 再分配によって現役世代の貧困率が上昇する日本の社会保障制度は「異常」である
▽ 繰り返すが、基礎年金の55%・後期高齢者医療費の70%が公費投入(=自分で負担しない)
日本社会には「民主主義による専制」という史上初の現象が起きている。
圧倒的に数の多い高齢層の票による利益誘導である。
「我が国の年金制度の最大の問題は、年金給付のおよそ3割が公費投入であり、
豊かで多額の資産を持つ者にも公費が投入されていることである」
「そして急速に劣化する人口動態から見てこの給付額が到底持続可能ではないこと、
戦後生まれの世代はその親世代よりも産み育てた子供の数が少ないのだから
年金給付額の低下は理の当然である」
「更に高齢層にのみ偏った社会保障給付が育児支援に回らず、
出生率に強烈な下げ圧力をかけるばかりでなく、
現役世代の貧困を深刻化させているという最悪の制度である」
「高齢層及び予備軍の多くはその莫大な公費投入を認識していない。
年金給付の際に公費投入の比率を明記でもしないと理解できないのである。
「あれほど払って年金がこれしか出ない」と言っている者は、
ほぼ全員が大して保険料を払っていない」
「現役世代の格差拡大・貧困深刻化においては、
間違いなく日本の社会保障給付が異常に高齢層に偏っているのが主因である。
当然ながらこれは厚労省にも大きな責任がある」
「我が国の資産は高齢層に著しく偏っている。
本当に困窮している高齢層に給付が必要であるのは無論である。
しかし年金所得が低いからと称して豊かな層にバラマキを続けること事態が、
この日本社会を深く深く蝕む病巣となっている」
「現役世代の雇用・育児支援策が例えば北欧に比べて著しく貧弱なため、
日本の女性雇用の増加は鈍く出生率も上がらない。
これは回り回って日本経済の活力を毎年毎年削いでゆく病根である」
「この歪みとモラルハザードを矯正しない限り、
インフレーション・タックスの直撃を避けることはできない」
このシルバー・ポリティクスの病巣を日本社会が自ら摘出することはあり得ない。
だから政治的に言えばコラテラル・ダメージは不可避となる。
↓ 参考
貧しい若者から搾取したカネを高齢者に回す日本、現役世代の格差は急拡大 - 厚労省は自画自賛ばかり
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/f8ec208ad41a248b7550a5fc26fd9a7f
絶望的な健保組合の惨状、2年で積立金が枯渇し保険料率がまた上昇する -「犯人」は高齢者医療への拠出増
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/9f97188616b9cffab407fcc18ee4fd6
▽ 世代間格差の大きさが経済成長率を押し下げている疑いも強い
高齢者の死亡率、景気良くなるほど上昇 蘭研究(AFP=時事)
http://www.afpbb.com/articles/-/3001038
昨年の報道で最も興味深いものの一つだ。
「高齢化した社会は経済成長を嫌がり、停滞を喜ぶ」という仮説も成り立つ。
ぜひ今後も調査研究を進めて欲しいところだ。
真実が分かったところで日本経済が改善する訳ではないものの。
各国で高齢者の貧困率改善 若者にしわ寄せ、OECD報告(共同通信)
http://www.47news.jp/CN/201311/CN2013112601002019.html
老化した世論に不都合なこの報道は、殆どのメディアが受け流している。
視野が狭まり、感情的で己の利害しか関心のない国、
それは1930年代の独善的な昭和の日本とよく似ている。
「資産バブル崩壊後の日本の長期停滞は反面教師」だと考えていた。
日本が根本対処を先送りにして問題を深刻化させたからだ。
しかし重要なのは、日本の低成長がその後も続いており、
米経済回復・円安急伸に助けられた2013年ですら成長率3%にも達せず
翌年、翌々年と1%前後の低成長に戻るのが確実であることだ。
…これは、日本の長期停滞が財政支出や金融緩和や構造改革などではなく、
まだ識者が殆ど指摘していない日本の独自要因によるものであることを示唆している。
今、日本社会が世界の最先端を行っている分野が新たに一つある。
生産年齢人口が減少の一途を辿る中で社会保障支出が高齢層向けにロック・インされ、
高齢層向け給付ばかりが累増してGDPの伸びがそれを下回る現象である。
折しも報道によれば、リーマンショック後の経済危機の間に
高齢層の貧困率が低下し、若年層の貧困率が上昇していると言う。
我々は共産主義国の経済の非効率性を嘲笑してきた。
ベルリンの壁が崩壊したことを必然と考えているが、
次に崩壊する「壁」は日本かもしれないのである。
なぜなら我が国の社会保障は悪平等の共産主義国と極めてよく似ているからだ。
▽ 再分配によって現役世代の貧困率が上昇する日本の社会保障制度は「異常」である
『日本の景気は賃金が決める』(吉本佳生,講談社) | |
▽ 繰り返すが、基礎年金の55%・後期高齢者医療費の70%が公費投入(=自分で負担しない)
『エコノミスト』2013年 10/29号 | |
日本社会には「民主主義による専制」という史上初の現象が起きている。
圧倒的に数の多い高齢層の票による利益誘導である。
「我が国の年金制度の最大の問題は、年金給付のおよそ3割が公費投入であり、
豊かで多額の資産を持つ者にも公費が投入されていることである」
「そして急速に劣化する人口動態から見てこの給付額が到底持続可能ではないこと、
戦後生まれの世代はその親世代よりも産み育てた子供の数が少ないのだから
年金給付額の低下は理の当然である」
「更に高齢層にのみ偏った社会保障給付が育児支援に回らず、
出生率に強烈な下げ圧力をかけるばかりでなく、
現役世代の貧困を深刻化させているという最悪の制度である」
「高齢層及び予備軍の多くはその莫大な公費投入を認識していない。
年金給付の際に公費投入の比率を明記でもしないと理解できないのである。
「あれほど払って年金がこれしか出ない」と言っている者は、
ほぼ全員が大して保険料を払っていない」
「現役世代の格差拡大・貧困深刻化においては、
間違いなく日本の社会保障給付が異常に高齢層に偏っているのが主因である。
当然ながらこれは厚労省にも大きな責任がある」
「我が国の資産は高齢層に著しく偏っている。
本当に困窮している高齢層に給付が必要であるのは無論である。
しかし年金所得が低いからと称して豊かな層にバラマキを続けること事態が、
この日本社会を深く深く蝕む病巣となっている」
「現役世代の雇用・育児支援策が例えば北欧に比べて著しく貧弱なため、
日本の女性雇用の増加は鈍く出生率も上がらない。
これは回り回って日本経済の活力を毎年毎年削いでゆく病根である」
「この歪みとモラルハザードを矯正しない限り、
インフレーション・タックスの直撃を避けることはできない」
このシルバー・ポリティクスの病巣を日本社会が自ら摘出することはあり得ない。
だから政治的に言えばコラテラル・ダメージは不可避となる。
↓ 参考
貧しい若者から搾取したカネを高齢者に回す日本、現役世代の格差は急拡大 - 厚労省は自画自賛ばかり
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/f8ec208ad41a248b7550a5fc26fd9a7f
絶望的な健保組合の惨状、2年で積立金が枯渇し保険料率がまた上昇する -「犯人」は高齢者医療への拠出増
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/9f97188616b9cffab407fcc18ee4fd6
▽ 世代間格差の大きさが経済成長率を押し下げている疑いも強い
『世代間格差:人口減少社会を問いなおす』(加藤久和,筑摩書房) | |
高齢者の死亡率、景気良くなるほど上昇 蘭研究(AFP=時事)
http://www.afpbb.com/articles/-/3001038
”【AFP=時事】景気が良ければみんな長生きするとは限らない__先進国の高齢者では景気が良くなるほど死亡率が上昇するという新たな研究結果に、調査を実施したチーム自身も驚いている。
長期的には経済が繁栄すればすべての年代で死亡率が下がり、特に高齢者の死亡率の低下によると考えられている。しかし短期的な景気変動を見た場合、様相は違うという。
英専門誌「Journal of Epidemiology and Community Health(疫学と地域保健)」に論文を発表したのは、活力と加齢に関する研究を行う蘭ライデン・アカデミー(Leyden Academy on Vitality and Ageing)のチーム。
同チームは日本や米国など19の先進国について、1950~2008年の経済成長データと死亡率の関係を分析した。
〔中略〕
調査では、国内総生産(GDP)の上昇1ポイントにつき、70~74歳の死亡率が男性では0.36%、女性では0.18%上昇していた。
一般の認識とは相反する同様の傾向は、すでにより若い世代については知られていた。今回調査の40~45歳の死亡率では、GDP上昇1ポイントにつき男性が0.38%、女性が0.16%増えている。こうしたより若い世代については、好況時の仕事増によるストレスや雇用増による交通事故などに原因があるとされてきた。しかし、こうした要因は退職後の高齢者については当てはまらない。チームでは、高齢者の場合についてはまだ説明ができず、さらに研究が必要だとしている。
仮説としては、好況時には若い家族親戚や友人の労働時間が長くなり、高齢者と付き合ったり世話をする時間が減るといった社会構造の変化が原因とも考え得る。また景気拡大期に増える大気汚染が、より虚弱な高齢者の健康を害するのが一因とも考え得る。 【翻訳編集】AFPBB News ”
昨年の報道で最も興味深いものの一つだ。
「高齢化した社会は経済成長を嫌がり、停滞を喜ぶ」という仮説も成り立つ。
ぜひ今後も調査研究を進めて欲しいところだ。
真実が分かったところで日本経済が改善する訳ではないものの。
各国で高齢者の貧困率改善 若者にしわ寄せ、OECD報告(共同通信)
http://www.47news.jp/CN/201311/CN2013112601002019.html
”【ロンドン共同】先進34カ国が加盟する経済協力開発機構(OECD)は26日、年金に関する2013年版の報告書を発表した。08年以降の経済危機下でも、日本を含む多くの国で高齢者の貧困率が改善する一方、若年世代の貧困率が悪化していると指摘した。
また、高齢化の進行に伴い年金の給付水準が低下傾向にある中、多くの国が所得によって差をつける制度改革を実施し、低所得者を保護する一方で高所得者に損をかぶってもらう対応を取っている、としている。”
老化した世論に不都合なこの報道は、殆どのメディアが受け流している。
視野が狭まり、感情的で己の利害しか関心のない国、
それは1930年代の独善的な昭和の日本とよく似ている。