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「大きな社会、小さな政府」に挑むイギリス政府 - 捨てられた「第三の道」に縋る日本は周回遅れに

2010-08-24 | いとすぎから見るこの社会-全般
イギリスのキャメロン政権が注目すべき動きを見せています。
捻れと権力争いで動きの取れない日本政府とは対照的に、
歳出をドラスティクに削って財政健全化に邁進しているのです。

総論賛成各論反対で改革を拒み財政健全化をサボる日本と、
果敢に政治改革と財政再建に挑むイギリス。
数年後には恐ろしい程の差が開くことになるでしょう。

軽はずみな日本の論者が「手本」として賞揚するイギリスですが、
(特に医療や教育が注目されている)
彼らはイギリスの間接税や資産課税の重さを理解していません。
イギリスが本当に手本であると考えるのなら
今回の歳出削減の手法も学ぶべきでしょう。





『公平・無料・国営を貫く英国の医療改革』(武内和久/竹之下泰志,集英社)


無論のこと歳出削減・財政健全化は困難な道であり
キャメロン首相の行先は茨だらけの険しい道です。
そう簡単に成功はできません。

しかしながら指導層の世代交代を断行し大改革に挑む
イギリスの果敢な姿勢を我が国の政府と比較すると、
忸怩たる思いを抱かざるを得ません。

英国病から立ち直ったイギリスの政治的活力は失われていません。
重症なのは寧ろ、構想力も実行力も乏しく世代交代を拒む指導層の国。
つまり日本の方です。

残念ながら日本政府が無策のまま時間を無駄にし続ければ、
「英国病」ならぬ「日本病」という造語が生まれるでしょう。

僅かな希望としては、イギリスがこの改革に成功すれば
きっと日本国内にもイギリスを見習おうとする声が生まれ、
手法だけでも取り入れる可能性が出てくることです。


「過激な英国」支持上昇 キャメロン政権、あす発足100日(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100817/erp1008170939003-n2.htm

”■「大きな社会、小さな政府」掲げ新風
 【ロンドン=木村正人】キャメロン英政権が発足して18日で100日。「水と油」
 と揶揄(やゆ)された保守党と自由民主党の連立政権は予想外の好調な滑り出しを
 見せ、「先進国で最も勇気ある政権」(英メディア)と注目を集める。戦後、国営
 医療制度(NHS)を創設して「福祉国家」のモデルをつくり、サッチャー時代に
 市場主義の流れを定着させた英国が今また、「大きな社会、小さな政府」を掲げて
 新風を起こそうとしている。
 13日発売の英誌エコノミストは政権発足100日に合わせ、英国旗ユニオン・ジ
 ャックに見立てたモヒカン刈りのキャメロン首相を表紙にあしらい、「過激な英国」
 と銘打った。1970年代に世界中を席巻したブリティッシュ・ロックをほうふつ
 とさせるノリだ。
 キャメロン政権は、ギリシャ財政危機を“追い風”に拙速な歳出削減に慎重だった
 自由民主党を説き伏せ、今年、主要20カ国・地域(G20)で最悪の国内総生産
 (GDP)の11%に達する財政赤字を5年後に2.1%に削減するという財政再
 建策を発表した。
 その4分の3を歳出削減で賄い、日本の消費税に当たる付加価値税(VAT)など
 の増税は最小限にとどめる。聖域は国民の誇りになっているNHSだけで、来年か
 らは教育や国防費にもメスを入れる。

 サッチャー元首相の「小さな政府」を踏襲した格好だが、「問題を社会の責任にす
 り替える声があるが、社会というようなものはない。あるのは個人と家族だけ」と
 唱えたサッチャー氏と異なり、キャメロン首相は「大きな社会」を掲げて教育、医
 療、警察活動への地域社会の参加を訴える

 保守党党首のキャメロン首相と自由民主党のクレッグ党首はともに43歳。名門私
 立校、英国を代表するオックスフォード大、ケンブリッジ大出身と育った背景が似
 ていることもあって相性は抜群といわれている。
 連立交渉で首相は移民や欧州、核抑止力政策で明確な一線を引いて両党の論争を封
 印。それ以外の「小さな政府」や「権力の分散」で両党の利害は完全に一致してい
 る。

 元外相で自由民主党の前身の一つ、元社会民主党で党首を務めたデービッド・オー
 エン氏は「連立に波風が立つ論争は避け、できる分野で協力を深めるキャメロン首
 相の政治手腕は相当なものだ」
と称賛する。
 同首相は、欧州懐疑派ぞろいの保守党右派よりも地球温暖化対策や教育改革に熱心
 な自由民主党と政権基盤を共有することで政党支持率を伸ばしている。5月の総選
 挙での得票率は36.1%だったが、最近の世論調査で政党支持率は最高44%に
 はね上がった。
 〔中略〕
 来年5月に小選挙区を維持したまま選挙区割りを変更し、候補者全員に順番をつけ
 て投票する優先順位投票を導入する是非を問う国民投票が実施される。
 キャメロン首相の恩師であるオックスフォード大のバーナン・ボグデイノー教授は
 英紙フィナンシャル・タイムズへの寄稿で「選挙制度が変われば英国は一新する。
 国民投票で改革案が否決されれば連立は終わりを告げ、逆に承認されれば連立は長
 く続くだろう」と指摘している。”

 → 学級崩壊状態だった鳩山連立内閣と比較すると、
   目前の課題を優先するキャメロン内閣の方が賢いです。
   (スタンドプレーが大好きな社民党や国民新党もイギリスにはいない)

   100日後の支持率が総選挙の得票率を上回っている事実が
   日英両国の政府の有能さを雄弁に物語っていると言えるでしょう。

   ただ「大きな政府」政策は有権者の成熟と自律が前提条件なので
   すぐ政府のせいにする現下の日本では実現困難だと思います。


国民に選ばせる歳出削減策…英でネット投票(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20100820-OYT1T00603.htm

”【ロンドン=是枝智】財政赤字削減を目指す英国の財務省が、国民から公募した歳
 出カットのアイデア約4万4000件をインターネットのサイト上に公表し、有力
 な削減策を絞り込む“国民投票”を始めた。
 国民の意見を反映させることで世論をバックに財政再建を目指すユニークな試みと
 して注目されそうだ。
 英国の2010年度の財政赤字は1490億ポンド(約20兆円)に達する見込み
 で対国内総生産(GDP)比率は10.1%と、欧州連合(EU)27か国の中で
 高水準にある。5月に発足した保守党と自由民主党による連立政権は財政赤字削減
 を最優先課題に掲げ、GDP比率を15年度に1.2%まで下げる目標を打ち出し
 た。そのために、増税と歳出カットの組み合わせで10~14年度に計約1200
 億ポンド(約16兆円)の収支改善を目指している。しかし、歳出削減で市民サー
 ビスの低下なども見込まれるため、オズボーン財務相は、「(政府の支出も)無駄
 をなくすと同時に、メリハリをつける必要がある」として国民の知恵を借りること
 にした。
 アイデアは「政府」「地方」「教育」「環境」「防衛」などの分野別にまとめられ、
 サイトを見た人に、それぞれの提案を5段階評価してもらう。
 削減案のアイデアは「不必要な人まで出席する大人数の会議をなくす」「官庁や政
 府出資の機関がロゴを新しくしたり、変更のために支出することを禁止する」「公
 立学校の副校長を減らす」といったものから「辞任した閣僚への退職金の支払いを
 やめる」「防衛予算を削減する」「(経済成長が続き、資金力のある)中国への資
 金援助をやめる」といったものまで幅広い。
 財務省は一般からのアイデア募集とは別に、公共部門で働く人からも歳出カットの
 アイデアを募り、計6万3000件が集まっている。財務省は31日まで受け付け
 るネットでの投票結果と、公務員からの提案などを踏まえて実行に移す具体策を決
 める方針だ。
 最近の各種世論調査では、第1党である保守党の支持率は政権発足直後より5ポイ
 ント上昇して42%になったほか、キャメロン首相の仕事ぶりを評価する人の割合
 は57%に達するなど、財政再建に取り組む連立政権への支持が高まっている。

 (2010年8月20日13時56分 読売新聞)”

こちらも面白い試みです。
日本でもすぐに取り入れてはどうでしょうか。

大見得を切っておきながら大して埋蔵金が出てこない民主党よりも
民間の有権者や公務員の方が良いアイディアを出せるでしょう。
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