真ん中の妹結婚式の朝。
昨夜の残りごはんを下の妹が握った塩結び、半日あまりまともに食べられない花嫁の朝食。
母と花嫁は先に家を出て、続いて下の妹を見送り、洗濯ものを干してから家を出た。今日はじめて黒留を着る。 持っていないので事前に選んで借りた。年齢的に華やかな柄にラメをあしらったものを勧められたが、どうも好まず、60代くらいの方の為に置いているという、かなり地味らしい鶴柄を選んだ。それでも私には地味に見えない。着なれた人でも黒留は自分で着つけられないと母が言っていたのがなぜであるか着つけられながらわかった。バランスのシビアさと着崩れるということがあってはならない正装なのだと襟元からにゅっと出ている首を見て思う。式場のホテルではなく徒歩10分ほどのところで着つけてもらったので、そこから歩いて向かう。おおよそミセスには見えない黒留姿のせいだろう視線を感じる。仮装じゃないです、礼装ですと思いながら歩く。当然歩幅がいつもより狭いので憶測より時間がかかった。
ホテルに着くと礼服の夫がロビーに迎えにきてくれた。髪もジェルで固まっている。親族控室にはもう親戚がそろっていた。日焼けしすぎてどうなるかと思っていたサッカーをしている下の妹もきれいにファンデーションでカバーされ、短い髪もアップに見えるようセットされていた。昨夜問題になっていた白くて浮きすぎるショールも馴染んでいた。アテンダーから声がかかり両家廊下に2列に並ぶ。このとき親族紹介はまだで、近いが微妙な距離感のまま神前式の部屋へ向かう。白無垢に綿帽子の妹と黒紋付の彼がいる。夫はそれを見ただけでちょっと涙腺ゆるんだという。
自分の時は緊張で神前式自体の事をあまり覚えていなかった。斎主が履いている爪先が丸い形の不思議な靴、神前に大根とキュウリ、人参、茄子などが供えられていることなど今回見て知った。ただ自分のときは巫女さんのうちの片方が新米だったらしく、要領を得てないことが傍目にもよくわかったが、今回の巫女さんふたりのシンクロ率の高さはすばらしかった。ただ片方はなぜかつけまつげをしていた。
三三九度、新郎誓いの言葉を読む、神前に玉串を捧げる。親族は何度か立ったり座ったりするが、祖父はその動作がすでに辛そうだった。今回会場内の移動は車椅子を借りることになり、下の妹が介助役をしている。
親族でお神酒を飲み干す。寿と書かれた赤い杯からお神酒に口をつけると香りが一瞬ふぁっと口の中に広がり、喉と胃を通ってそこが発熱するのが少量だからこそよくわかる。米からつくられたこの透明の液体が持っている品格とお神酒の意味を身を持って感じる。
披露宴は冒頭からカラフルな照明の演出があってまさかスモークたいてせり上がってくるんじゃなかろうなと一瞬ドキドキさせられた。
新郎の母の持ち物の赤い色打掛けはとても豪華で、よく似会っていた。お色直しの時は私と下の妹がエスコートに呼ばれた。ケーキカット、キャンドルサービス、友人のスピーチ、両親への手紙、敬老の日が近かったので祖父母へのプレゼントもあった。
プロフィールビデオの幼少期、子供だった私と妹たち、とても若い父と母。こんなだっただろうか。時間はいつのまに流れていたのだろう。結婚するなんて想像すらしなかった、未来への不安も何も感じなかった頃。なんにも心配せず笑って3人並んで布団に入っている。もう戻ってこないけれど、あの時間が家族にあり今に繋がっているということに、さみしさとありがたさが同時に込み上げる。そういう感動のど真ん中にちゃんと身を浸す。
夫は据え置きで撮っておこうと言いながらビデオカメラをまわしてくれたが、式場カメラマン経験があるせいでスタッフの動きを見ながら進行がわかるらしく、結局カメラを操ってクオリティーの高い記録ビデオを完成させてしまった。式の翌日新婚旅行に出かけたふたりが帰ってきたら喜ぶに違いない。
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