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流出雑記 

2015/1/12 タイ1日目

2015年01月16日 | Weblog
まだ朝日が登る前の冷えた早朝、空港行きの迎えの大型タクシーに乗り込む。車内も冷えている。 今日から4日間タイに行く。10時発の飛行機なので朝が早い。乗客は夫と私の他に一緒に行く制作のながらちゃん、あともうひとり知らない人を拾ってタクシーは関空へ。窓の外は雪が舞っている。
3泊4日のバンコク滞在。一緒にクリエーションすることになったピチェ クランチェンダンスカンパニーのダンサー、ケットちゃんの暮らす国を見に行く。これが初めてのタイ。
関空からベトナム航空、ホーチミン空港で乗り換えてタイのスワンナプーム空港に着くのは夕方6時半頃になる。直行便よりも時間はかなりかかるけれど、渡航費が安い乗り換えルート。でも時間がかかることはあまり苦じゃない。旅慣れていないからトランジットで知らない国の空港に降り立つだけでも楽しい。
それより問題だったのは、今朝からずっと左眼の裏でごろごろしているまつ毛か何かのせいで、瞬きするたびに粘膜に異物が接触する不快感が伴っていることだった。何度も鏡で眼の中を見たけれど、ごろごろする原因が見当たらない。そのまま出国手続きをして飛行機に乗って離陸し、地面を離れる緊張に慣れると眠くなり、しばらくして機内食が運ばれてきた。眼の中の異物感は空港にいるときほど気にならなくなっている。
鶏をエスニックカレー風に味付けしたものにヌイユが添えてあり、デザートに梨子のムースが付いてくる洋食にした。ホーチミンまで約5時間。朝早く起きたので、うとうとしている時間が長かった。着陸が近付いた頃にようやく目が冴えてきて持ってきた田中慎弥「第三紀層の魚」の続きを読んでいたら、薄っすら酔った。
ホーチミンも気温31度。時間はバンコクと同じ。だいたい3時くらい。すると日本5時くらい。
せっかく降りたし、空港内のカフェでベトナムコーヒーを飲みたいと甘そうなラテを写真で見て選んだら、エスプレッソくらいの濃さのコーヒーに、生クリームを入れて分離したようなあまり甘くない飲み物だった。
他ふたりはココナッツの実にストローが刺さっているのを注文していた。ココナッツの実があるだけで充実したトランジションの時間を過ごしている感が格段に上がった。搭乗を待っているときに左眼から突然涙が出てきて、それと共にようやく異物感が消えた。何がごろごろしていたのかは不明。
乗り換えてタイ、スワンナプーム空港へ。機内ではパンとサラダとハムの軽食が出た。お手拭きに付いている香り、少し強い芳香に異国基準の清潔感を感じる。夫は機内食が出る度にビアと言う。1時間半くらいでタイに着いた。

空港でトイレに行くとレモングラスの香りがほのかにする。
パスポートチェック、我々の並んだ列の入国審査官が慎重だったのか、他の列より進行がずいぶん遅い。何にそんなに時間がかかるのかと思うくらい足止めされている人。ちょっともめている。自分の番が来てどうなるのかと思っていたら1分以内に終わった。私が悪事を働かなさそうだからかと思ったら、日本のパスポートは強いですからね、とながらちゃんが言った。見た目より絶対的に菊の紋が信頼されていた。

空港に迎えに来てくれているケットちゃんを探す。ここで待っていると連絡のあった3番出口を目指して歩き、たくさんの待ち人の中からケットちゃんの姿を見つけた。
紺色のタイトなワンピースを着ている。彼女の服装は去年の2月、神戸で一緒にクリエーションをしたときの冬服しか知らなかった。

今日のバンコクは少し寒いくらいだと言う。確かに日本の熱帯夜のような暑さはなく、羽織るものがあった方がいいくらいだった。想像よりもずっと爽やかだった。今が雨の降らない時期だからかも知れない。
ケットちゃんの運転。ピチェのスタジオまでは毎日車で通っているそうで慣れている。フロントミラーに金色の仏陀のキーホルダーがぶら下がっていて、車が段差を超えたりするとちゃりちゃり揺れる。その度にケットちゃんはそれを左手で押さえる。何か意味ありげだとしばらく見ていた。けれど気になってそれは何なのかと尋ねたら、ただちゃりちゃりするのか気になるから押さえているだけだった。後から調べると、そのキーホルダーみたいなものはキーホルダーなんて安っぽい名前のものでなく、プアクルアンというちゃんとしたお守りで、小さいけれど高価なものだとわかった。信号で止まると、花輪を売る人が車道を歩いてくる。その花輪はプアンマライといって交通安全のお守りだそう。他の走っている車のフロントミラーを見ると、確かに花輪を掛けている車が多い。

ケットちゃんが住んでいるのはバンコクの中心街に近く、ピチェのスタジオは中心街からチャオプラヤー川を隔てたローカルなエリアだそうで、確かに川を渡ると高層ビル街から街の雰囲気が変わる。薄暗いネオンの明かりの歩道にテーブルを出して食事をしている人たち。その足元にはだいたい野良犬がいる。だいたい白っぽい犬で、人々は犬もいて当然のように食事をし犬もいて当然のように寝そべっている。

1泊3000円のホテルは普段日本で泊まるどのホテルよりも広くグレードが高い。シャワールームがガラス張り。
チェックインしてからホテルのそばのレストランで夕食。そこも歩道いっぱいにテーブルを出していて、メニューは写真が少しあるけれどすべてタイ語。厨房も半分路上に出ていて、数種の青菜が山積みにされている。薄ピンクのプラスチックの取り皿。トムヤムクン、名前を忘れたけれどタイ語でサラダはヤムなのでヤム卵、あとはエビのカレー、貝の炒め物など。それにタイ米。どれも均等に辛い。辛いけれどうまい、水、うまいけれど辛い、水。その繰り返し。

タイのヴィヴィッドな味覚に満ちた胃でいつものファミリーマートに行き、品揃えの違いにはしゃいで、それぞれ水やらビールやら買って部屋に戻る。
浴槽がないこと以外申し分なくラグジュアリーな気分で眠る。


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