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流出雑記 

2012/12/19

2012年12月20日 | Weblog

人と寄り合う機会が多いこの時期、新しく知り合う人もあり、そういう人の言葉の選択や物腰の自分との違いを聞きとりながら、もっとおおらかな人間になりたいと思う年の瀬。

大掃除は亀ペース。昨日は洗濯槽クリーナーで洗濯槽を洗った。今日は残り湯で風呂釜ジャバでもしよう。

某着付け教室の着物セミナーというのに行ってきた。どうも受講生にはどうしても来てほしいらしく、このときだけ前日に先生からご丁寧に集合時間の確認TELがある。セミナーというのは問屋に出向いて着物の勉強会、称した即売会である。

午前中は大島、塩沢、結城、牛首と代表的な紬、染めの反物を実際触ってみてその違いと特色の説明を聞く。この時間はとてもおもしろい。牛首の繭は双子で、繭のなかに蚕が二頭入っている。二頭というのは二匹の打ち間違いではなく、蚕は頭で数える。それは蚕が馬などと同じように完全に家畜として飼われている生き物だからという理由と、蚕が産まれた伝説に馬が関わっていることが由来という説もある。二頭の糸が絡み合っているので製糸すると所々に節ができる。その節が牛首紬の特徴。

織物が発達する地域は雪国と離島だそうで、その理由は雪国だと冬場は仕事がないために女性は機織りを仕事とし、離島でも限られた環境で生産できる交換価値のあるものとして発達した。普段触れないような手織りの高価な反物にも遠慮なく触れる。縦糸と横糸の気の遠くなる交差の果てにあらわれた布地が目の前に流される。

数クラス掛け持ちし、しかも年間2回同じ1サイクルが開講されるので、同じ物を何十回と見ているであろう先生はそれでもはじめて見たかのように、おお~、とか、あ~きれいやねえ、感嘆を付け加える。

お昼休憩。仕出しのお弁当が出る。先月あった帯のセミナーのときと同じ店の弁当だった。重箱とあたたかいご飯が別に付いてくる。おかずは高野豆腐やさつまいもの含め煮、卯の花、小さめの塩鯖とだし巻き、ヒレカツ一枚、ほとんどエビのないエビ衣チリ、マヨネーズで和えたパスタにハム添え、一口大のケーキがふたつとキウイ一枚。女性の胃には結構溜まる。受講生がぼそっとけっこう量多いなあ、ともらすくらい。横に座っている着物姿の先生は「これが案外ぺろっといけちゃうのよね~、ぺろっと」と言いながらどんどん食べすすめていた。食べきれずにほとんどを残して蓋を閉めるよりその方が気持ちいいけれど、先生は何度この同じ重箱の蓋をあけておそらくあまり代わり映えのしない可も不可もない弁当を口に運んだことだろう。そう思うとあの、ぺろっと、が半ば暗示のように聞こえてしまった私は意地が悪いなあと、カツの最後の一切れ、やや辛かったが平らげ熱いほうじ茶でながした。

まだ胃に圧迫感のあるまま午後はそれぞれ好きにコーディネートを試すと称した即売会となる。先生及びさっきまで隅に座って反物をなおしていた問屋のおばさん方全員販売員と化す。

好きな反物を選ぶと仕立てたときに近いように体に反物を巻き付けてくれるのでそれに合う帯、帯締め、帯揚げを選んで鏡の前に立つと、選択のセンスや顔うつりなど褒めようのあるところを一通り褒めてくれる。そして襦袢、着物、帯、お仕立て付きセット価格で、「どうえ?これくらいやったらがんばれるんちゃう?」「ちょっとずつ返していったらええんやさかいに」とくる。その値段で揃うならそれぞれ別個で誂えるより確かに安いかも知れないが、安いと言っても数十万の買い物を即決する購買意欲も財力も持ち合わせていない。反物と帯の組み合わせを試すのは楽しいが、巻き付けられる度にしばらく「どうえ?」の時間をやり過ごさないといけないのが煩わしいのでコーディネートは2回でよした。同じようにリタイヤした受講生とこの帯もかわいいけどねえと着ようとせず眺めていると、先生の襦袢だけは誂えたほうがいいわよ押しがはじまる。

確かに、襦袢はほしい。持っているのがよくあるザ・ピンクの長襦袢なので、もう少し紬に合うような洒落た襦袢がほしいのはほしい。ただここで押しに押されるこの状況で買うのは自分の買い物として嫌だった。買う義務はないし、向こうも気に入ったものがあればと言うけれど、終盤になるほど生徒は鴨であるということが自覚され、それまでの先生の努力がここに帰結しているという関係性のむなしさが露呈する。ここまでじゃないが、久々にあった友達にひたすら某マルチ商法の商品を勧められたときのむなしさが思い出される。良い商品で損ではないのはわかってもやはりそれ以降距離をとった。彼女自身をきらいではないが、やり口とそこで形成されるコミュニティーを快く思えないのだ。

とにかくそのセミナーからは無事帰還し、とり野菜味噌鍋(オリジナルのじゃなく我流)を食べてコタツで寝る。冬場の夕飯の後は胃に血液をとられるのか急に寒くなるのでコタツにもぐる。小一時間眠って体がほこほこになってから洗い物を片付ける。

 

 


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