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流出雑記 

しょうらいのゆめ

2009年12月16日 | Weblog
幼稚園の卒園がせまったある日、先生に将来何になりたいかとひとりずつ聞かれたのを結構はっきり覚えている。
それは卒園アルバムに「しょうらいのゆめ」を載せるので、その為のアンケートだった。
女の子はお花屋さん、ケーキ屋さん、幼稚園の先生、男の子は野球選手、警察官、消防士など。

特にこれになりたいというものが思いつかなかったが、私の番が来たら何か言わなければならない。
当時の私はピンク色やひらひらした女の子らしいものが大好きだった。
咄嗟に将来バレリーナの衣装が着たいと思い付き、先生に「バレリーナになりたい」と答えた。すると先生は「なんでバレリーナになりたいの?」ときた。
幼稚園児なりに、ひらひらのが着たいから、という動機は浅はかだと考えたが、他に理由を見いだせなかった私は苦し紛れに「おもしろそうやし…」と答えた。
卒園アルバムには「しょうらいのゆめ」の下に「そのりゆう」も載せられていた。
私の欄には、ゆめ「バレリーナ」、そのりゆう「おもしろそうやし」  と言ったそのままの口調で記録されている。
一番仲の良かった女の子は「ケーキ屋さん」「お菓子を作りたいから」というしっかりとした理由を述べているし、「お姫様」と答えてバカだと思っていた女の子もその理由は「お城に住みたいから」という明確な欲望があった。
卒園アルバムを手にした後、70人ほどの生徒の回答をすべて読んだ結果、その中で自分が一番阿呆な回答をしているという自覚があり、苛まれた。

あれから20年以上が経つ。
私はバレリーナにはならなかったが、今月仕事でバレエの衣装を週一で着ている。

着衣の仕事は普段着で良いときと、サリーやチャイナドレスなどの民族衣装やこういうチュチュを着るようなものもある。
着てる方から見れば、この格好の人物を描くことにどれほど意味があるのかと思う節もある。ドガのようなのを描きたいのか。
普段見慣れない衣装には描き甲斐があるらしいが、いつも妙だと思う。

冷えないようにとの配慮で強めの石油ストーブの温風をまともに顔に受け続け、頭がぼーっとする。

変則的なかたちではあるが、「しょうらいのゆめ」は一応叶っていると、ぼーっとしながら思った。

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