英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

NHK杯戦など……羽生九段、先手番、後手番でワンツーパンチを食らい、4連敗……

2019-11-04 20:29:34 | 将棋
 昨日放映されたNHK杯戦(対屋敷九段)は放送時間を30分残しての惨敗。
 これで公式戦4連敗。NHK杯戦の収録が放映のかなり前なので、時系列では4連敗ではないのかもしれないが、私の実感では4連敗。公式記録でもテレビ中継は収録日ではなく放映日でカウントするので、公式記録でも4連敗となるはず。
 しかも、この4局の内容もあまり良くない。(特にNHK杯戦は酷かった)

 さらに、11月1日の王将戦挑戦者決定リーグの対広瀬竜王戦とNHK杯戦の対屋敷九段戦は角換わり腰掛け銀は、仕掛けから勝負所まで全く同一の進行を辿った。ただし、王将戦では後手番、NHK杯戦では先手番を持っており、その両局で敗れてしまった。

 下図がその仕掛け。

 で、その後の展開を見る前に、上記2局の関連を考えてみたい。

 この2局、実は出だしが異なっていた。

 私は振り飛車党なので真正面から相居飛車の定跡を研究したことがないので間違っているかもしれないが、NHK杯戦の羽生九段は角換わり指向。

 王将戦の広瀬竜王は3手目に▲2五歩と突いて相掛かり戦指向で、4手目に羽生九段が△8五歩と追従せず、△3四歩としたため角換わり将棋となった(横歩取り戦になる可能性もあったが広瀬竜王が▲7七角と角換わりを選択)
(“0.5図”などと奇妙な図の名前なのは、“仕掛け図”は最初、“第1図”のつもりだったため)

 この2局、よく似た形で進むが、NHK杯戦の先手(羽生九段)は▲2五歩を保留している点が違う。将棋世界11月号の石田直裕五段の講座によると、「▲2五歩型が主流だが、▲2六歩型(保留型)も見直されてきている」とのこと。
 私見では保留型の方が作戦の幅が広いように思う(後で▲2五歩と突けば、▲2五歩型に移行できる)。NHK杯戦も▲2五歩と突いて、王将戦に合流した。
 ≪ああ二日前の王将戦と同じになるかも≫
 これが「王将戦の敗局を踏まえて仕掛けなら心強いが、実際の収録はかなり前。王将戦の観戦中は、≪後手玉(羽生玉)は5四で守備の金銀から孤立して心もとない。よく、こんな勝ちにくい将棋を指せるなあ≫と思っていたが、先手を持って指した経験があり、「後手番もそれなりに指せる」という感触があったのかもしれない。≪そうだとすると……先手番で負けた?≫という悪い予感が……


 ▲2五歩(合流図)より△4二玉に▲4五桂と跳ね(3筋や7筋の歩を突き捨てずに単に桂を跳ねるのが現代風)、△2二銀に▲7五歩△同歩と突き捨て▲5三桂成と切り込んだのが冒頭に掲示した仕掛け図。

 ▲5三桂とせず、▲3五歩と突いて△同歩なら(△4四歩もある)、▲1五歩△同歩として▲1五香△同香と香を犠牲に歩を入手し▲7四歩という仕掛けもあるらしい(3筋を突き捨てたのは後の▲3四桂の含み…羽生九段の局後の言)。

 仕掛け図以降、△5三同玉▲7四歩△4四歩▲4五歩△5五歩▲7三歩成△同金▲4六桂△5六歩▲5四桂△同玉▲4四歩△7四桂(要所図)と進む。
 多少変化もあるかもしれないが、ほぼ順当な手順のようだ。


 要所図の△7四桂は、心もとない玉を放置し攻め合い勝ちを目指した決断の一手。この手は次に△8六歩▲同歩△7六歩▲同銀△8六桂の狙い。△8六桂まで進んだ局面は後手の攻めが“すこぶる”厳しい。「なので、先手はどこかで手を抜かなければならないもかもしれない」(先崎九段の解説)
 解説の先崎九段は「▲4三銀と打たれる手が怖いんだけど」と驚愕していた。
 羽生九段も勝負処と見て考慮時間を使う。確か4回(4分)の消費だったが、羽生九段の考慮しているうちに、「▲5六歩もあるかも……意外に良い手かも」と先崎九段。先崎九段は筋に明るく早見えのする棋士。ただ、「嫌な形」とか「怖い変化」とか感覚に捉われ読みを精査しないきらいがあり、読みの射程が若干短い。
 この局面での第一感の「▲4三銀が怖い」と、読みを入れた「▲5六歩は良い手かも」は後者の方が正解だったようだ(王将戦の広瀬竜王も▲5六歩と指している)。
 しかし、羽生九段の着手は▲4三銀だった
……

 羽生将棋は直線的なスピードのある手と含みのある曲線的な手を織り交ぜるのが特長だが、最近は直線的な手が多いような気がする。
 局後、「やっぱり、普通に▲5六歩でしたね」と述べていた。(対局前のインタビューで「元気良く指したい」なんて答えたのが、よくなかった)

 ▲4三銀以下、△同金▲同歩成△同玉と進む。
 先崎九段の第一感は▲4四歩。いや、先崎九段ならずとも棋士なら≪とにかく4四歩と叩いてみたい≫と思うだろう。

 ▲4四歩を△同玉は▲6二角の王手金取りがあり、4四の急所に拠点の歩ができれば寄せが決まりそうである。決まらなくとも▲4四歩に後手の応手は△4四同玉を含めて8通りもある。短時間の将棋なので勝負術としても▲4四歩だったのでは?
 しかし、そういう勝負術に走らないのが羽生九段。羽生九段の着手は▲2四歩だった。
 「この手では、ちょっと響きが弱いかも」と先崎九段は疑問の言葉(実際の言葉は思い出せないが、こんなニュアンス)。
 ▲2四歩は羽生九段らしい“含みのある手”だったが、先崎九段の感触が正しく、一手パスに等しい手だった。
 ちなみに感想戦でこの局面で、羽生九段は▲4四金を示し、検討を始めた。▲4四金にはびっくり…


 勝負図の▲4四歩には△5三玉とかわすのが正着で後手が後手が少し良いらしい。
 とは言え、5三に玉を移動させれば先の△8六歩▲同歩△7六歩▲同銀△8六桂には▲8二歩と勝負する手が生じ(△8二同飛は▲7一角の王手飛車がある)、まだまだ勝負将棋だった。

 実戦は▲2四歩に手抜きで△△8六歩▲同歩△7六歩がさく裂。羽生九段はここで▲4四歩△5三玉を利かせ▲7六歩と対応、。△8六桂には▲8二歩~▲7一角の王手飛車を見せて凌ごうとするが、「△5三玉と▲2四歩から遠ざけてしまうのは理に合わない」(先崎九段)。
 先崎九段の言葉通り、▲2四歩~▲4四歩のちぐはぐな指し手なので屋敷九段は余裕をもって攻めれば良い。
 △4七歩!……この手は次に△4八歩成と金を取らないと有効にはならないが、それよりも厳しく後手玉に迫る手はなく、充分に厳しい手になっている。
 ▲4三歩成△同玉に▲5五玉は苦しい手……本当に苦しい手だ。なけなしの金を投入したが、冷静△5二玉と指されると、せっかくの5五の金の“置き去り感”が著しい。
 以下も、飛車筋を止める連打の歩の歩が足りないので苦肉の策で角で王手して歩を補充。やっと飛先を止めたが、その飛車を5筋に展開され金取り。

 「裏目」の5乗くらいの手順の末の投了。
 あまりの不出来な将棋に、呆然の日曜日だった。


【王将戦 広瀬竜王-羽生九段  その後の展開】


(対局者は ▲広瀬竜王-△羽生九段)

 図以下、▲5六歩△5三玉▲5五歩△8六歩▲同歩△7六歩▲同銀△8六桂▲8二歩(A図)と進む。
 ▲8二歩に△同飛は▲7一角の王手飛車。

 図以下、△7八桂成▲同玉△5六角(王手飛車取り)▲6七桂△8六桂▲8八玉(ウルトラッ、ソウル!……B図)。


 ここで△2九角成と飛車を取ったが、これが敗着となった(飛車を逃げるべきだった)。
 以下、▲8一歩成(飛車を取り返す)に△7八飛(C図)。

 ▲9七玉に△7六飛成と銀を取って良いようだが………
 ▲4三飛と打ち込まれる(△4三同銀は▲同歩成以下後手玉は詰み)。以下△5二玉▲5三銀△6一玉▲4一飛成△5一歩▲5二銀不成に△7二玉で逃れていそうだが……▲5四角!

 ……王手龍取り

 以下は多分、指しただけ。


 研究で後れを取り、感覚(将棋観)も乱れているような気がする。

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