英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『相棒 Season 10』 第2話 「逃げ水」

2011-10-29 00:02:24 | ドラマ・映画
≪みんなが不幸≫
新開拓海(和木亜央)…5年前、初対面の川北誠也といさかいになり、死に至らしめられた。20歳と若くして人生を終える。

川北誠也(川野直輝)…すれ違いざまに目があった新開拓海に、睨まれたと思い殴り、逃げたので追いかける際、ブロック(石)投げつけ、それが後頭部に当たり死に至らしめた。
 目が合っただけで殴り、逃げる相手に更にブロックを投げるという酷い奴だが、逃げる相手を止めようと、或いは、逃げられそうなので腹立ちまぎれに投げつけた石が、当たり所が悪くて死に至らしめてしまった。殺意がなかったと認められ、殺人ではなく傷害致死となり、懲役5年となる。
 刑が軽いと思った拓海の両親が民事訴訟(損害賠償)を起こし、1億円の損害賠償が課せられる。
 本人にとってみれば、手ごろなブロックがなければ、投げたブロックが他の場所に当たっていたら、こんなことにはならなかったのにという思いが強いはず。その上、刑を終えて出所しても1億円を賠償しなければならないなんて。そういう思いもあり、自分が犯した罪に対し深く反省はしていなかったようだ。ただ、家族に対しては悪かったという思いもあり、「俺なんかいない方がいいだろう」と姉に漏らす。
 もともとは自業自得だが、若くして人生を投げやりにしなければならない状況になった上、唯一の頼りだった姉に殺される。

新開孝太郎(綿引勝彦)・清美(二木てるみ)…殺害された拓海の両親。殺意がなかったと認定されたとはいえ、加害者の状況など息子を殺されたという状況は、両親にとっては関係なく、懲役5年というのは短すぎる。
 そこで、一生罪を償ってほしいという思いから、民事訴訟を起こす。しかし、これが「そんなに金が欲しいのか」と世間の非難・中傷を受ける。また、裁判費用もかさみ、生活は苦しい。
 加害者の川北からは賠償金を支払われず、謝罪の気持ちも感じず。川北の父親も失踪し、怒りのやり場を失う。唯一、残された川北の姉の元へ通う。

川北浩二(久保酎吉)…川北誠也の父。世間やマスコミの誹謗中傷にさらされ、妻を病死で失い、さらに、民事訴訟でまた世間の風にさらされ、誠也本人しか支払い義務はないとは言え1億円の重みを感じ、親であることを放棄し、行方をくらます。
 さらに、娘が息子(誠也)を殺害し、更に重い十字架を背負うことになった。

南 智子(石橋けい)…誠也の姉。両親と同様、弟の事件により世間の冷たい風にさらされ、心労で母も亡くし、父の失踪後は、新開夫妻の恨みを一身に受け、出所してきた弟に賠償金を肩代わりしてくれと頼まれ、思い余って弟を殺害してしまう。
 弟を殺害したにもかかわらず、「少しは気が楽かもしれません。今度は弟のしたことじゃなくて、自分のしたことで責められるんですよね」とまで言ってしまう心境は悲しい。

智子の夫…義理の弟の事件で少なからず迷惑を受けたはず。智子が南家でどのような扱いを受けたかは不明だが、弟殺害の直後の「ただいまあ…あれ?表の靴、誰かお客さん?」という明るい声からすると、いい旦那さんだったようだ。
 明るい帰宅が一転、死体遺棄までさせられるとは……


 推理ドラマというよりは、人間ドラマでした。今シリーズは、こういう社会派ドラマでいくのでしょうか?
 被害者家族は悲しく、虚しい。加害者家族も苦しい。裁判や民事訴訟など法律には限界がある。そんなお話でした。

 そんな中で、今回の一番の悪者は川北誠也を弁護した弁護士である。
 「金で解決して済むと思うのか?」という感情から断るのを見込んで、「損害賠償の気持ちがある」という申し出をする。裁判では、損害賠償も辞さないという謝罪とそれを蹴った(辞退した)という事実を利用するという手法で減刑に成功。
 また、加害者に謝罪の手紙を書かせ、被害者家族の心証を少しでもよくしようとし、刑が確定したら、知らぬ顔。
 こういった小賢しい手段を駆使したため、被害者の両親の怒りや恨みは解けることはなかった。もっと、加害者に自分の罪の重さを自覚させ、悔い、謝罪の気持ちを持たせれば、被害者の両親の心も少しは軽くなったと思われる。
 今回の悲劇を生んだ張本人だと言える。

 誠意の瀬田弁護士(渡哲也)登場!…だが……
「新開さん、それは間違っています。少なくても、私はそう思います。ですが私には自分の正義より、あなた方の感情の方が大切なんです」
 この言葉に、新開夫妻は救われ、右京(水谷豊)さんは複雑な表情をした。そして、この後、瀬田は自分の名刺を右京に渡す。(川北誠也の姉を弁護する)
 渡さんならではの重さと大きさと誠意でした。


 しかし、今回の役回りの弁護士なら、瀬田弁護士(渡さん)でなくともよかったような気がします。
 世間の冷たい風もありましたが、姉が弟を殺害してしまうまで追い詰めたのは、新開夫妻であると言って良いでしょう。大切な息子を失ったという心の穴は埋まらないでしょうし、司法の限界、世間の冷たさも感じ、やり切れない思いも理解できます。
 しかし、私の思う瀬田弁護士像というのは、その悲しい新開夫妻の思いを理解し支えるだけでなく、もう1段階、昇華させるというものです。
 加害者家族は、犯罪を犯すような加害者を育ててしまった罪はありますし、加害者だけでなくその家族も罪を背負わなければならないと思います。しかし、実際には家族は罪を犯していません。それでいて、社会的に辛い思いをし、また、家族が人を殺してしまったという罪の意識を持ち苦しんでいる。そういう事実を、新開夫妻にも理解させることはできなかったのでしょうか?
 実際、加害者の母親は心労からか病死、父親が失踪したのも罪悪感や世間の冷たい風や1億円(支払い義務はないが)の重みに耐えられなくなったからで、加害者家族も苦しんでいるということを新開夫妻が知れば、その心が幾ばくかは軽くなったのではないでしょうか?

 損害賠償金を勝ち取るだけでなく、一生償ってほしいという真意を被告(加害者)本人に伝え、賠償金よりも本当に欲しいのは謝罪の気持ちだと伝えることもできたのでは?

 新開夫妻にも恨みだけで生きていくのは良くないと悟ってもらうように努めたのでしょうか?



「わざわざ加害者の父親に娘が真犯人であることを伝えたのか?」という問いに
「犯人を突き止め自首をさせた僕が伝えるべきです。(残酷であることに)耐えられないなら、人に罪を問うべきではない」
 右京さんらしい覚悟です。
 加害者姉妹が残した言葉「逃げ水」に向かって歩いていく右京。余韻が素晴らしいエンディングでした。

 しかし、私は右京さんの言動にも不満があります。
 傷口に塩を摺り込むような行為かもしれませんが、「今回、姉が弟を殺すに至った原因は、新開夫妻、あなたがたにあると私は思います」とチクリと言ってもよかったと思うのですが。私って非道?

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2 コメント

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最近・・ (koumama)
2011-10-30 22:35:05
被害者と加害者の現状を問うドラマが多いよね。たとえば瑛太が主演で評判の良かったそれでも生きていく って言うドラマも
愛してる海容って言うドラマも 加害者も被害者も苦しんでいました。
この相棒も救いがなかった・・
被害者はさらに傷つき
加害者は家族が罪を重ねる・・
だから 魔が差すとか ちょっとした怒りにまかせて感情をコントロールできなくて犯罪に及んだとしても
どれだけ不幸を招くのか・・ってことなのかな。
渡さんが出たことはドラマに重厚感を与えるつもりだったと思う。
今回の相棒は 毎週大物ゲストを出す予定だね。次回も三田佳子さんだし・・

人間ドラマとしてはいい味出してると思います。ラスト 逃げ水に向かっていく右京さん最高でした。
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被害者家族の悲しみ、加害者家族の苦しみ ()
2011-10-30 23:37:22
koumamaさん、こんばんは。

Ckoumamaさん、こんばんは。

「被害者家族の悲しみ、加害者家族の苦しみ」がテーマでした。確かに、最近このテーマのドラマ、多いかもしれません。『それでも生きていく』は見ませんでしたが、『愛してる~海容』は観ました。つらいドラマでした。
 渡さんも存在感を出していましたが、今回の役回りでは、若干無駄使いの気がしました。
 今シリーズは社会性(社会問題)がテーマなのでしょうか?あと、尊君試練のシリーズかもしれませんね。がテーマでした。
 渡さんも存在感を出していましたが、今回の役回りでは、若干無駄使いの気がしました。
 今シリーズは社会性(社会問題)がテーマなのでしょうか?あと、尊君試練のシリーズかもしれませんね。
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