英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

棋士編入試験第1局 高橋佑二郎四段-西山朋佳女流三冠

2024-09-10 18:07:02 | 将棋
『おはよう日本』で取り上げられていた棋士編入試験。
今日は忙しかったので、中継を観たら第1図の局面だった。

 この▲8五桂は次に▲9三桂からの詰みを狙っている。
 アベマの画面のここでの最善手は△6一金引。
 単純に詰めろを受けた手だが、その為だけの手なので、終盤の局面では“一手パス”に感じてしまい、非常に指しにくい。
 解説の戸辺七段も同じく解説者の男性棋士に「この手、指せます?」と尋ねていた。
 金を引きづらいのにはもう一つ理由がある。この局面の少し前の第0図、

 ここで高橋四段は▲6二馬と切り、西山女流は△同金直と取っている。なので、この金を元の位置に引くのは、感覚的というか動作的に抵抗がある。

 アベマ画面の第1図の次善手(第2候補)として、△9七角が示されている。王手だが只。大駒の只捨て。
 西山さんがやりそうな手だ。
  ……残り時間37分から、8分ほど考えて……△9七角!

 これに、先手は▲9八玉とかわしたが、9七の角が7五地点に利き、後手玉の詰みはなくなった。

 以下、手が進んで

となったと局面は、後手勝勢と言える。
 ただし、この後、▲9二香成に△4二角成が失着。(△7八角や△6九飛が良かった)


 この手に▲7五金なら形勢は互角になっていたようだ。
 実際は、▲8六桂だったので△9七歩成▲同玉△9六銀▲8八玉△8六馬が決まった。

 打った桂を馬で取られて、▲8六同歩と取り返せないのは辛過ぎる(取ると先手玉が詰む)

 以下、高橋四段も勝負手を放つが、西山女流は冷静に応じ、勝ち切った。

 第6図で▲6四歩は“打ち歩詰めの禁”

(私が言うのも何だが)
 西山さん、強いなあ
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えっ?   順位戦(2024) 石井七段-羽生九段

2024-09-05 21:05:57 | 将棋
苦しい将棋だが、まだ頑張れば、逆転の可能性もある。
仕事を片付けて、夕食休憩後の次の一手を待つ。

……投了。

え?

まだ、粘れそうだが……体調でも悪い?
残り時間は2時間32分。

図から指すとしたら、△7三玉。
これに対して▲4三龍がぴったりで、△8二玉と龍筋を避けるのが最善だとは思うが、▲6四角成△7三銀に▲同角成と切られて、△同桂に▲8四銀(想定図)と打たれて、希望はなさそう。


 図では何はともあれ7三の地点を守らねばならないが、△8一桂では▲4五龍と金を取られる手が、▲8三金を見た先手となる。なら図で△7二金と7三と8三を守る手が有力だが、これには▲6三銀成と嵩にかかられて持ちこたえられない。
 そんな訳で、指し継ぐ気にはならなかったのだろう。
 ただ、想定図から△9四角と打つ手が、意外と粘れる手というか、つかみどころがない手で、もう少し頑張れそうな気もする。
 山崎八段が指しそうな手だなあ……
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6連敗(見かけ上)

2024-08-28 07:26:06 | 将棋
昨夜、銀河戦の羽生九段-梶浦七段戦が放送された(ようだ)。
この対局に敗れ、これで6連敗(見かけ上)となった。
"見かけ上”というのは、収録が6月14日にされており、リアルタイムではこの対局後に5連勝し、その後5連敗している。

 先日(8月25日)放送された対近藤誠也七段のNHK杯戦(収録7月29日)の逆転負けもショッキングな負け方であったが、その他の敗局は良いところがなかった。
 年齢的な衰えもあるかもしれないが、他の要因と考えたい。
 一番に考えられるのが、この夏の猛暑と会長の職務での疲労。
7月13日 順位戦B級1組、対大石七段 勝ち
7月16日 棋王戦トーナメント2回戦、対菅井八段 勝ち
7月22日 王座戦挑戦者決定戦、対永瀬九段 負け
7月27日 JT将棋日本シリーズ1回戦、対佐々木大七段 負け (静岡)
7月29日 NHK杯将棋トーナメント2回戦、対永近藤誠七段 負け (収録)
8月01日 順位戦B級1組、対糸谷八段 負け
 特に、JT(27日・静岡)~NHK杯(29日・収録)はハードだ。
 あと、7月9日に陽性反応が出た新型コロナウイルス感染の影響もあったのかもしれない。

 まあ、とにかく、次対局に勝てばいいのである。
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羽生ファン3百万人の悲鳴が……

2024-08-25 12:45:07 | 将棋
「ひゃー」「ぎょえ~」「ひぃぃぃ」「ぐはっ」「ぐほっ」

今日、11時40分過ぎ、日本各地で羽生ファンの悲鳴が上がったはず。
私の場合は、絶句だったが。

難解な序中盤、そこから巧みな指し回しで抜け出し、勝勢に。
多少ぐずついたものの、再び勝勢に。
だが、30秒将棋では読み切るのは難しく(通常の将棋では秒読みは1分)、自玉が詰むのをうっかりしてしまった。
……"頓死”

詰み筋をうっかりしたのだろうか?
でも、詰まされる筋は▲7三角が第一感で、直感的に相当危ないと感じるところだ。
テレビ画面のAIが示す最善手△7八歩で、その手を指せば勝勢は維持できたが、その先の意変化を読み切るのは難しそう。
最善手ではないが、後手の詰み筋の▲7三角~▲8五桂の8五の地点を先に埋めておく△8五桂は、形勢逆転を許すものの、まだひと山もふた山もありそうだ。いわゆる"保険を掛ける”一着で、読み切れない時に指しそうなものだ。

実戦の△4七馬は馬当たりを解除しつつ、先手玉に詰めろを掛ける味の良い手であるが、後手玉が詰んでしまうのでは大悪手だ。
自玉に危機感がなかったとしか思えない一着だった。
野球で言えば、九回裏1アウト満塁でサードゴロ。
ここでサードがホームに送球せず、セカンド~ファーストのダブルプレーを狙う訳でもなく、単にファーストに送球して2アウトにしただけのようなものだ(当然、3塁ランナーがホームに駆けこんで、サヨナラ負け)

同じ負けるにしても、ひどい負け方……
昨年のJT日本シリーズの対山崎戦に匹敵する負け方だ……

「ふん、羽生九段が負けたって、私には1円の損害もないもん」という、羽生ファンにあるまじき思考で、納得させようとしたが、
ここ数日の疲労感が3倍になったのは間違いない。
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2024王位戦 第1局 藤井王位-渡辺九段 その9

2024-07-25 19:36:32 | 将棋
「その1」「その2」「その3」「その4」「その5」「その6」「その7」「その8」

 当日(7月7日)、中継の終局後の鈴木九段の解説を聞いていて、《ん?》と思ったところがあった。(動画が残っているようです【第65期王位戦第一局】<完全解説>藤井聡太王位 対 渡辺明九段

感想戦で、藤井王位は「96手目の△3七銀では△6一歩(変化図7)が予定だった」と語っていた。


 △6一歩には先手は▲6一同角成とするしかなく、そこで藤井王位は△3七銀と打ちたかったそうだ。
 この銀を▲3七同玉と取ると、△3六歩▲2七玉(▲2八玉も同じ詰み方になる)△3七金▲1八玉△2七銀▲1七玉△2八銀不成▲1八玉△2七金▲同玉△3七歩成▲1八玉△3六馬で詰んでしまう。よって、△3七銀には▲1七玉と逃げることになる。そこで、△2八銀打に▲2七玉(変化図8)で先手玉が詰まない。これが藤井王位の誤算だったようだ。

(ここからは、感想戦の一幕を観た鈴木九段の感想・解説を整理して載せます。細かい言葉は省略)
「藤井さん疲れてるんだなと思ったのは、(変化図8から)△3一玉と逃げて▲5一馬に△2二玉ともう一回逃げて▲4二龍に△2六銀成(変化図9)▲同玉に△3六金と打つ手には

▲2五玉(変化図10)と逃げて△2四歩▲同玉(変化図11)に△2三金を狙っていたと言うんですが、龍筋が利いているので、△2三金と上がれない(玉が取られてしまう)」



 しかし、この解説は大きな誤りがある!
 変化図10で、△3七金(変化図12)で簡単に詰んでしまう。

 では、変化図9で藤井王位の勝ちだったのかと言うと、そうではない。
 △2六銀成には▲2八玉とこちらの銀を取れば詰まない。


       ……………………………………鈴木九段も疲れていたのだろう。

 それにしても、変化図8は詰みそうな気がするのだが……詰まない。

【終】

「第2局の感想」へ
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2024王座戦挑戦者決定戦と所用

2024-07-22 21:47:41 | 将棋
タイトルでは「所用」と書いたが、所要とは親戚の葬儀。
 親戚と言っても色々……名前だけとか顔を朧げにとか、まあ、家としてのつき合い(こう書くと叱られそうだが)で参列することも少なくないが、今回は少なからず恩義のある方。
 亡くなった翌日にお顔を拝ませていただき(もっといい表現がある気がします)、お通夜、そして葬儀に参列させていただいた。距離は25㎞以上あり、少し大変だが、大変とは思わない恩があった。
 ご家族は悲しさや辛さもあるとは思うが、かなりのご高齢だったので往生を遂げたという感じで、痛ましい雰囲気は感じられなかった(感じさせなかった)。

 ただし、“土用丑の日”を目前に控える昨日今日は、その関連の仕事が多く、結構忙しい。ウナギは高いが、タレ入れ(タレビン…やわらかい使い捨てのプラ容器。よく弁当に入っている魚型の醤油入れと同質の材質で直方形型)やウナギのトレーやうな重容器(テイクアウト用)の需要が増える。ウナギは高価だが、そういう使い捨て容器は安い。この暑さの中で、それらの販売は体力が消耗するだけ。(お得意さん、ごめんなさい)
 で、その葬儀関係で仕事ができなかった分だけ、今日の午後、帰宅してからの仕事が待っていた……

 そんな訳で、本日の大切な王座戦挑戦者決定トーナメントがあることを、完全に失念していた。
 夕方になって、ようやく思い出し、ネットをつなげると、やや劣勢、その後、互角に戻ったと思ったら、間違えて非勢に陥り、その後は永瀬九段にきっちり価値を読み切られて、投了。
 対永瀬戦での負けパターンのひとつだったようだ。
 
 序中盤がどんな将棋だったのかも振り返っていない。
 体が火照っているし(熱中症やコロナではなく、単に心身とも珍しく働きすぎ?のせい)、ほとんど観戦できず、対局に心を投入しなかったため、悔しさはほとんどない。
 ……ああ、負けちゃったか……また、次頑張ってほしい。

 今日敗れて今期は8勝2敗で勝率.800。取りあえずこの勝率を維持してくれれば、文句は言わない(←高望み過ぎ!)
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2024王位戦 第2局 渡辺九段-藤井王位 感想

2024-07-19 15:23:04 | 将棋
……驚いた
 いや、「驚いた」と書いたら、渡辺九段に失礼なのだが……全力で勝ちにいった第1局、思惑通りに展開して、あと一歩というところで、エネルギーが尽きて逆転負け。
 渡辺九段と豊島九段がダブって、この王位戦はこのまま勝てずに、良くて1勝を上げられるかどうか……と思ってしまった。
 王位戦第1局終了までの二人の対戦は、渡辺九段の4勝21敗、勝率.160。2022年1月以降は2勝13敗、勝率.133。タイトル戦では棋聖戦1勝3敗(2020年6月~7月)、棋聖戦0勝3敗(2021年6月~7月)、王将戦0勝4敗(2022年1月~2月)、棋王戦1勝3敗(2023年2月~3月)、名人戦1勝4敗(2023年4月~5月)。タイトル戦としては5連敗、個々の成績を通算すると3勝17敗(.150)……渡辺九段にしてみると“散々”な成績だ。
 名前を挙げた豊島九段も、通算の対戦成績は12勝26敗、勝率.316。ただし、豊島九段が最初6連勝しており、それ以降は6勝26敗、勝率.231。さらに、2021年8月24日以降だと3勝20敗、勝率.130.もっと期間を絞って2022年7月13日以降は1勝13敗(期間中12連敗)、勝率.071。
 豊島九段も、先の王位戦第1局の渡辺九段のように、ほぼ勝利を手中に入れたところから、勝利をするりと落としてしまったことが多々あり、渡辺-藤井戦と豊島-藤井戦がシンクロして見えてしまうのである。(詳しい対戦成績を挙げないが、菅井九段も、対局を重ねるほど、絶望感を味わっているような気がする)

 渡辺九段と言えば、名人戦で敗れ無冠になった時、キャスターに「次はどういう戦い方を?」というような質問を受けて、藤井七冠(当時)に“叩きのめされた感”を味わった上、次に藤井七冠とタイトルを争うには、挑戦者トーナメントや挑戦者リーグ戦を勝ち抜かなければならないイバラの道を進むことの困難さを想像して、「考えられる状態ではない」というような、ツッケンドンな回答拒否に近い態度を取ったことを思い出す。
 《そうだよなあ》……渡辺九段の気持ちはよく分かる。(五輪などで敗れた選手に、「次に向けての決意や考えなどを」とお気楽に質問するキャスターがいる)
 そんなボロボロの気持ちになっているのかなあ……この王位戦も4局で終了、あるいは1勝できるかどうか……などと思ってしまった。

 そんな私の予想を吹き飛ばす快勝だった。
 中盤辺りまでは互角。そこで、藤井王位が疑問手を指し、勝利確率が藤井王位の35~38%ぐらいに低下したが、いずれ、互角になって、最後は藤井勝利か……と思っていたら、さらに、差が開き、それでも、まだひと山もふた山も……
 しかし、渡辺九段は、まったく歩を緩めることはなく、というより加速して、一気に勝利を掴んでしまった。藤井七冠がこうも為すすべもなく敗れてしまう……こんな敗れ方を観た記憶はない。

 将棋の経過も少し異色だった。何しろ、第1局(指し直し局)と同じ指し手を辿る。昭和の中原時代は矢倉全盛で、対局者が先手後手を逆に持って、同一手順を辿る将棋はよくあったが、先手後手の対局者と局面が2局連続で同じというのは、“指し直し”という特異ケースを踏んだことによって生じたのである。昭和時代は指し直し局の次局の手番の規定が現在とは違っているので、この王位戦のケースは不可能なのかもしれない。
 第3局は渡辺九段の後手番。どんな戦型戦術で、不利な後手番を凌ぐのか興味深い。さらに、先手番になる第4局に、あの▲6六角型を三度目になる採用をするのかも、興味深い。
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2024王位戦 第1局 藤井王位-渡辺九段 その8

2024-07-18 16:04:16 | 将棋
「その1」「その2」「その3」「その4」「その5」「その6」「その7」

(第2局の2日目午前中:形勢互角→午後4時20分:渡辺66%ですが、第1局記事は続きます)

 秒読みに急き立てられ▲3二銀と打ち、藤井王位は△同玉と応じる(△同金は▲5二金△3一玉▲4二金打△2二玉▲3二金△1二玉▲2四桂△1三玉▲2二銀△2四玉▲3三銀打△3五玉▲4五金で詰む。他の変化もあるが詰む)
 △3二同玉に▲3三金△同金。ここで渡辺九段は▲6二龍としたが、▲3三同歩成△同玉▲3四歩(詰みそう図)と打てば、詰みそうな気がする。

 △2二玉なら、▲3三金△1三玉▲2二銀△2四玉▲2三金以下詰み。
 △3四同玉なら、▲4五銀△2四玉▲3四金△1三玉▲2三金△同玉▲3五桂△3二玉▲2三金△4二玉▲4三桂成△同玉▲4一龍で詰む。
 しかし、△2四玉とかわされると……詰まない。6九の馬の防御力が強い……。△2四玉には▲2五金が有力だが、△1三玉で詰まない。
 ……先の△4七角に▲2七玉と逃げ、△3七歩成▲同玉と馬筋を通してしまった罪が圧し掛かる……

 実戦は△3三同金に渡辺九段は▲6二龍。この手に対し、藤井王位は△4二金(第14図)と合い駒に金を選択。

 △4二金の直後、評価値が逆転(藤井30%台)。金合いではなく、銀合いが正解で、おそらく、金合いだと▲3一角の筋が生じるからであろう。
 渡辺九段にチャンスが到来したが、▲3三歩成△同玉(第15図)に▲4二龍と切ってしまったため、幸運の女神は通り過ぎてしまった。
 「幸運の女神には前髪しかない」……時の神カイロスについて、出会った人がつかまえやすいように髪を顔の前に垂らしてあるが、追いかけてつかむことはできないよう、後頭部には髪がない(チャンスはやって来たそのときにつかまなくてはいかない)ということわざを思い出した。(カイロス自身は男神だが、ローマ神話の幸運の女神フォルトゥーナと混同されたとされている)
 もっとも、この時、女神に後ろ髪があっても、渡辺九段には髪を掴む握力が残っていなかったように思う。
 第15図では、取りあえず▲3四歩と叩くのが普通で、それが正解だった。
 ▲3四歩に△2二玉なら、▲3三金△1三玉▲2五桂△2四玉(△2五同馬は▲2二銀△2四玉▲2五歩以下詰み)▲3五銀△同玉▲4五金△2四玉▲2三金△同玉▲3三歩成以下詰み。
 ▲3四歩に△同玉なら、▲4五銀△2四玉▲3四金△1三玉▲2三金△同玉▲3五桂以下詰み。
 ▲3四歩に△2四玉なら、▲3五銀△同玉▲2五金△同馬▲4五金△2四玉▲2五歩△1三玉に▲9二龍と馬を抜いておいてどうか?(▲3四歩△2四玉▲3五銀に△1三玉なら▲2五桂△同馬▲同歩で△3九飛には▲2六玉で残している)

 渡辺九段は、▲4二龍△同銀▲3四歩△2四玉▲2五金△1三玉▲2二銀△同玉▲3三金と迫るが、△1三玉で投了。どうしても1枚駒が足りない……


 持ち時間優位状態で千日手に持ち込み、指し直し局も主導権を握って、ほぼ完璧な指し手で勝利確率99%まで追いつめたが、勝ち切れなかった。
 99%まで追いつめられても、渡辺九段を消耗させ、逆転の筋に誘い込む……やはり、恐ろしいなあ。藤井王位も将棋も。

 次記事、気になる変化に続く。
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2024王位戦 第1局 藤井王位-渡辺九段 その7

2024-07-17 15:27:49 | 将棋
「その1」「その2」「その3」「その4」「その5」「その6」

(第2局が始まってしまいましたが、続きます)


 △4七角に▲2七玉と逃げた為、△3七歩成▲同玉を利かされ、後手の6九の馬の利きが通ったため、この図での後手玉を詰ます難易度が格段と上がっている。
 既に、103手目の▲5二銀から1分将棋になっている渡辺九段に詰み筋が見えているのだろうか?(図は119手目を迎えている)
 48秒残り12秒ぐらいの時、渡辺九段の表情……目が泳いでいる。読み切れていないのは瞭然だ。そして、駒台に手が伸びて……嗚呼、間違えるぅ!
………▲3二銀…………

 感想戦では
「これもう、初手(119手目の王手)間違えると詰まないのか(▲3二銀では▲4一同龍でないと詰まないのか)」(渡辺九段)と。
 おそらく《龍切りでも詰むような気がしたが、▲3二銀△同玉▲3三金の方が確実に詰む》と考えたのだろう。 



【ABEMA中継の再現】
解説:鈴木九段
「ここが勝負所でね。私まぁ詰むんだろうけど割り切れてないんですね。えーっと…左へ持ってくのか?
 ▲同龍、△同玉で▲5二金でばらして…▲6四桂と打って…7七桂活用して左で詰まそうとしてるのか。ずいぶん凝った詰め方しますよね。
 や、これ、2一?できれいに詰むのか
 えー▲2二金△同玉▲3三銀も、怖くないですか、なんか詰まし方…
 あ、寄られて危ない…詰まない…えっ、(加藤結李愛女流二段「これ2五に桂打てないとなかなか詰ましにくい」と)
 いやぁー▲同龍(▲4一同龍)で詰ますんですね。驚きの詰みだな…これは読み切ってますよね。(加藤女流二段「はい」)
(渡辺九段の手が駒台に伸び、銀をつまむ)えっ?え?
(渡辺九段が▲3二銀と指す)
「▲3二銀かぁ?…△同金で▲4一龍……ええぇっ!………▲4一龍△同玉▲5二金(△3一玉)▲4二銀(金?)でどんどん逃げられて危ない(詰まない)ですよね。そんなことあるの?」
ここで、画面表示が△4一同玉…71% △4一同金…1%(後手玉は詰む)と表示される
「△同玉…△同玉かぁ…ええ~これ…えええっ!!
 これは有り得ないよねぇ………
 ええええ~!…1分将棋で時間追われているんですけど、1分ずつ考えられるんで、けっこう読んでるはずなんですけど……
 (評価値を見て)△同金は詰むんだ……ええぇ!こんなのってあるぅ?
(藤井王位、△3二同玉と指す)


 正直、この解説はひど……
 《"評価値99%”という数値を見て▲4一同龍で詰み》と判断して詰みを読み、ある程度読んで《だいたい詰みそう》と思った。その後、▲2二金△同玉▲3三銀の筋の検証をしつつ、中継画面を注視。そして、渡辺九段の手が駒台に向かったのを見て、《詰ましそこなう》と判断し、驚いた。
 渡辺九段が▲3二銀で詰みを逃してしまったことに驚きつつ、△3二同金の後、▲4一龍△同玉▲5二金(△3一玉)▲4二銀(金?)で詰まないと思い、逆転に驚く。
 しかし、実際は△3二同金だと後手玉は詰む。そのことを中継画面の評価値で気づき、△同玉で詰まないと分かる(評価値で知った)
 その直後、「えええっ!! これは有り得ないよねえ…」と。


 《評価値99%(渡辺勝利確実)》《えええっ!!これは有り得ない》《ええぇ!こんなのってあるぅ?》という数値や絶叫が誇張され、『あり得ない大逆転』が世間に伝播した!
 そりゃ、解説者が簡単に詰みを読み切ったのなら、あり得ない逆転でも良いかもしれない。「▲4一同龍で詰み」とAIに示されたの〜見て、詰みがあるのを知っただけで、詰みを読み切っていない。
 さらに▲3二銀では詰まないことをAIで知ったが、△3二同金で詰まないと誤った解説をした。(△3二同金だと詰む)
 短時間で、正確な解説をするのは難易度が高くて、間違えても仕方がないとは思う。しかし、評価値の上面だけを見て、渡辺九段があり得ない詰み逃しをしたという印象を与える不正確な解説をしてしまったのは、どうなのか!
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2024王位戦 第1局 藤井王位-渡辺九段 その6【補足あり】

2024-07-15 10:53:56 | 将棋
「その1」「その2」「その3」「その4」「その5」


 この両図は、下図の△4七角に対して、玉を下に逃げたか上方に逃げたかの違いで分かれた兄弟図と言える。
 両図とも、先手玉にも後手玉にも詰めろが掛かっているが、手番を持っている先手が後手玉を詰ませば勝ち←かなり当然。
 両図とも評価値(勝利確率)も共に99%(変化図0は実際には評価値99%と示されてはいないが、下図の△4七角に対する候補手▲3九玉の評価値が99%となっていた)。
 これまでの流れとこの評価値から、“渡辺九段の勝利”は間違いないように思えた。
 しかし、これはAIが示す“評価値が同じ99%”というだけで、実際の“勝ちやすさ”(負けやすさ)は、この両図では相当な違いがある。


(両図を再掲載します)

 この両図では、後手玉を詰ます難易度が桁違いに違うのである(妥当な数値化は分からないが)第13図の方が50倍くらい難しい。
 変化図0は、先に示した▲2一金の他に▲2二銀、▲2二金、そして▲4一同龍など多くの詰み筋があり、2一や2二に金や銀を捨てる変化は直感的に浮かびやすく、その後の詰みも容易である。
 しかし、第13図は詰みは▲4一同龍のみで、龍切りは不安感を伴い、その後の詰みも容易ではない。さらに、▲2一金や▲2二銀や▲2二金なども一見詰みそう。詰ます筋が▲4一同龍しかないならば、渡辺九段なら1分で詰みを読み切るのは容易だが、この状況だったのは不運としか言いようがない。(上記で詰ます難易度を"50倍”と述べたが、状況を加味すると、詰ます難易度は100倍、いや"200倍”かもしれない)
 不詰めの例を上げると、

 変化図3は「その5」で挙げた詰み。「図以下、平凡に▲2二金△1三玉▲2五桂で詰むし、▲2一銀(△同玉なら▲2二金)△1三玉▲2五桂でも詰むし、▲1三銀と気前よく捨てても△同玉▲2五桂△1二玉▲2二金で詰む」と述べたが、変化図3-2では詰まない。6九の馬筋が後手玉の詰み筋を否定している。

 第13図に戻って、この局面から後手玉を詰ます正解手は▲4一同龍のみ。
 △4一同金は▲2二銀以下容易に詰むので、△4一同玉。

 鈴木九段は▲5二金以下の詰みを解説したが、▲3二銀△同金▲5二金△3一玉▲4二金打△2二玉▲3二金△1二玉▲2四桂以下詰む。また、▲3二銀では▲3二金と打って△同金▲3三桂△同金▲4二銀△同玉▲3三歩成△同玉▲3四歩でも詰む。
 変化図0-2より、▲5二金△同金に▲同桂成△同玉▲6四桂(変化図4)を鈴木九段は示していたが、▲5二同桂成りでは▲3二銀(変化図4-2)でも▲3二金でもよい。

 変化図4-2以下△4二玉(△5一玉)▲5二桂成△同玉▲6三銀△同玉▲7五桂以下の詰みがある(▲3二金と打つ筋もほぼ同様の手段で詰む)

 変化図4に戻って、以下△6二玉▲7一銀△6三玉▲7二銀△5四玉▲4五金(変化図5)△6四玉▲5五銀△7五玉▲8五金△7六玉▲8六金(変化図6)で詰む。

 変化図4の局面を頭に浮かべれば、以下の詰みは容易であるが、第13図で1分将棋で、藤井王位相手に千日手局、指し直し局を2日がかりで指し続けた後では、"超”が5つ付くほど難易度が高い。
 まして、他に詰む筋がチラつく局面である。

 冒頭で、《互いの玉に詰めろが掛かっている場合、手番がある方が相手を詰ませば勝ち》と述べたが、他にも《取りあえず、自玉の詰めろを解除しておいて、次に詰ます》という手段もある。
 こういう場合、将棋がもつれることが多いのだが、秒読みの妥協策としてはしばしば用いられる。

 そういうケースを想定した場合、第12図で玉の逃げる時、下方に逃げると受けが困難で、情報に逃げた方が受けが利き易いので、反射的に上方の2七に逃げたのだろう。この時点で、馬の利きを通す△3七歩成が見えても、第13図でそこまでマイナスに作用するなんて、考えなかったのだろう。

【補足】

 解説の鈴木九段は、「この▲3二銀は△4二玉で詰まない」と述べていました。しかし、本文で述べたように▲5二桂成△同玉▲6三銀△同玉▲7五桂以下の詰みがあります(▲3二金と打つ筋もほぼ同様の手段で詰む)。
 本文を繰り返すことになっていますが、私が念を押しているのは、鈴木九段の解説が間違っていたということ。
 もちろん、このくらいの間違いは一日中解説していたので、ミスがあっても仕方がないと思います。それをわざわざ、補足で書くのは、今回の解説でいろいろ思うことがあったからです。(今後の記事で、書く予定です)
 私は、一度だけ鈴木九段とお話したことがありますが、非常に優しい方で良い人です。好きな棋士です。


続く
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