さんぽ道から

散歩中の雑感・モノローグを書いてみました

ダイエー

2005-10-07 16:21:25 | 会社
 関西の頃、よく通っていた店が最近、閉店となった。お世話になっていただけに残念だ。週末の午後、抱っこや手をつないで店内を子供たちと歩き回った。本屋さん、衣料品スーパーとダイエーを回ったが、ダイエーで過ごした時間が長かった。食料品と衣料を除く売り場はそんなに大きくはなかったが、雑貨、トイレタリー、文具、靴鞄、家具、電気製品を順繰りに色々見て楽しんだ。店員の干渉はないし庶民の集うところといった感じがよかった。アパートに帰ると丁度夕飯が出来ていて、家族と充実した時間が過ごせた。次の引越先にはディスカウントの大きいダイエーDランド店も近くにあって、週末は更に楽しかった。
 ダイエーの売上げが1兆円を越したころ、ラゴスとテヘランの物価が異常に高かったことを覚えている。出張者の日当を特別申請するほどだった。しばらくしてこれらの国で革命が起きた。夫々、貧富の差が革命のエネルギーだった。狂牛病報道のなかで日本の牛肉価格は豪州の2倍といっていた程だから日本の物価は依然、世界で断突だ。革命が起きないのは教育の水準の高さと貧富の差がまだそれ程に大きくない為であろう。貧富の差が然程でなくとも物価が安くなればそれだけ生活は楽になり社会は安定する。「物価を半分にしたい」と創業者の中内さんは言っていたが、尤もな事だ。戦後、土地は値上がりを続け「あの土地を借金しても買っていれば今は大金持ち」が巷の声だった。中内さんの土地を購入し資産と信用を増やす手法は常道であった。特に安売り商売では事業規模の拡大は知れているから土地本位の資金調達は当然のことだった。中内さんの場合、フェイクの安売り商法ではない本物の安売り、しかも哲学としていたところが好きだった。価格表示でブランドメーカーと戦い、独自のブランドを立ち上げたり、世界の各地から産品を直輸入し低価格を実現した等には拍手した。M&Aで良い品を安く提供する店舗を全国に拡大した。中内氏の土地本位制と安売りの哲学を、ダイエーの失敗の因とするのには反対だ。
 オイルショック以後の消費トレンドの読み間違い、多角化路線の失敗、大店法廃止後の競争激化、極端なリストラ、震災による損害などダイエー凋落原因は色々書かれている。震災以外はいずれも選択肢の問題、経営判断を誤った結果である。中内氏の場合、強烈な成功体験が邪魔して、役員から、銀行から、株主から、取引先から、友人知人からのアドバイス・異見を蹴った。しかもイエスマンしか役員に残さなかったから、役員会の判断責任は中内氏の個人的な責任にみなされる。当然だろう。「大栄薬品工業急成長の頃、中内氏は次々に支店から届けられる現金の置き場に困ってドラム缶に入れさせていた。数える時間がないからしばらくそのままにしておいた。誰でも手を突っ込めば現金を持ち出せた状態が大分続いた」と、以前、その場に居合わせた方に直接に聞いたことがある。この「現金を数えられないほどの忙しさ、儲かる体験」が中内氏自身を普通の人間に変えてしまったに違いない。
 中内氏の非凡なところは、一人で情況と課題の分析が出来てしまい、決断力を持っていたことだろう。ただ、考えや価値観を違える人との議論で得られる、潜在的課題分析力に欠けていた。土地は大きな資産だし、安売りで成功している会社は多い。中内氏の、説得や議論の時間を惜しんだこと、自分の成功体験を過信したことが、もしダイエーの崩壊に繋がったとすれば、情況次第では誰にでも起き得ることゆえに、返す返すも残念だ。産業再生機構は多士済々を集めて再建を進めている。是非、ポテンシァル・プロブレム・アナラシス、将来起こるかもしれない問題想起、を徹底検証してもらい、ダイエー再建を確実なものにして欲しい。此処、東京でも庶民の集えるお店を作って欲しい。今から、孫の手を引いて新生ダイエーでのウィンドーショッピングを楽しみにしたい
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