カンボジア経済

カンボジアの経済について、お堅い数字の話から、グルメ情報といったやわらかい話まで、ビジネス関係の方にお役に立つブログです

中央銀行 金融安定性調査報告書 2021

2022年06月30日 | 経済
 6月17日、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行(NBC)は、金融安定性調査報告書2021年版(Financial Stability Review: FSR)を公表しました。カンボジア国立銀行では、国際通貨基金(IMF)の支援を受けて、2011年から金融安定性委員会に年2回、金融安定性調査結果を報告してきました。報告書は、マクロ経済の現状と安定性、金融システムの現状と安定性、ノンバンク金融、支払・決済システムの最近の発展の4章から成っています。
 2021年のカンボジア経済は、世界経済の回復に伴い回復傾向にあり、成長率は3%程度となったと見られます。回復が早かった輸出(対前年比25.1%増)やワクチン接種の進展に伴う国内経済の回復が寄与したものと見られます。他方、建設不動産業の回復は鈍く、観光業界は厳しい状態が続いているとしています。
 財政については、新型コロナ対策の貧困世帯向け現金支援や失業労働者向け手当支給等により、2020年からの支出が23億ドルに達したものの、健全性は維持しているとしています。為替については、NBCが総額6億ドルのリエル買い・ドル売り介入を実施したこともあり、安定的に推移しました。外貨準備は、対前年比で5%ほど減少したものの、輸入の8.3か月分の水準にあり、安定的であるとしています。
 金融セクターについては、新型コロナの影響下にありながら、貸付は対前年比23.5%増、預金も17.7%増と好調でした。不良債権比率も、2020年の2.1%から2021年は1.8%に低下したとしています。これは、新型コロナの影響で返済が困難になっている借入人に対し、NBCの指示により、返済猶予等の借入条件変更を認めていることも一因と見ています。
 ノンバンク金融については、新型コロナの影響を受けたものの、証券取引所では新規上場もあり、債券市場も拡大したとしています。支払い決済システムの発展も続き、デジタル支払の総額はGDPの3.8倍、対前年比でも34.5%増と大幅に増加しました。電子口座数も1360万口座と、人口の8割に近い数となっています。
 2022年の見通しとしては、ワクチン接種進展による経済再開が進み、輸出、農業、運輸、通信等に支えられて、成長率は5%程度なると見ています。リスクとしては、ウクライナ情勢に伴う物価上昇、中国のゼロコロナ政策と不動産問題のカンボジアへの波及、米国の出口政策に伴う世界的金利上昇、新型コロナの新たな変異株の出現、気候変動等をあげています。金融セクターについては、昨年に引き続き発展が続くと見ていますが、安定性・県税制への目配りも重要と指摘しました。なお、カンボジアの金融セクターは国内預金が中心であるため海外での金利上昇の影響は限定的であるとしています。
 NBCとしては、引き続き経済の状況を注視しつつ、金融セクターの健全性維持に努めるとしています。

カンボジア国立銀行のサイト
https://www.nbc.org.kh/english/publications/fsr.php


↓にほんブログ村のランキングに参加しています。よろしければクリックしてください↓
にほんブログ村 海外生活ブログ カンボジア情報へ
にほんブログ村

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« カンボジア地方選挙2022 最... | トップ | 2023年度予算策定のためのマ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

経済」カテゴリの最新記事