Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

エッセイ632. マイケル・グレイブスにまつわる私の記憶

2023年09月24日 | field work

 私が高校生の頃世界の建築家といえば、コンクリート打ち放しをモットーとするモダニズム建築のル・コルビジェだった。そこへ様式建築の美学をひっさげて風穴を開けたのがロバート・ヴェンチェルリ。そうポスト・モダニズムの始まりだった。ボスト・モダニズムを発展させ数多くの建築を実現してきたのがマイケル・グレイブスである。
 私がプロデュース企業に勤めていた頃、マイケル・グレイブスとは2度一緒に仕事をしたことがある。1つは横浜のアルテ横浜であり、もう一つはNTTデータ通信のインテリアの仕事であった。
 マイケルグレイブスが現場にやってきて、NTTの担当者が「この椅子は日本人には足が長いよ」といったら、彼は大きなノートを取り出して記録していた。はて修正するのかなと思ったら、そのままであったのには後で笑えた。
 彼は、現場視察の最後に私達のスタッフと通訳を両脇に抱え肩を組んで記念写真をとっていった。なんて気さくなアメリカ人なんだろう。
 そんなグレイブスの3品集は分冊になっている。なんといっても建築にしても、家具にしても色が大変綺麗だ。やはり実力と優れた感性の持ち主だ。
 そんなポスト・モダニズム様式もバブル経済の波にのり形式化してゆく。グレイブスのデザインとは似ても似つかない珍奇な疑似的ポスト・モダニズム建築が繁華街に建ち並び、バブル崩壊の証拠としてメディアに取り上げられてしまった。
 そんなわけで、日本では変なレッテルを貼られたポスト・モダニズム様式だが、今見ても大変綺麗な色と感性のデザインである。
 私がプロデュース事務所に勤めていた頃、安藤忠雄さんの建築をポスト・モダニズム建築と称してメディアに紹介する記事を書いていたお姉ちゃんがいたが、私はまさにえっ!、だよ。ものをしらない女達だ。なんでもくっつければ良いとするあまり勉強をしてこない、そして感性が鈍かった女達と一緒に仕事をしていたわけだ。
 そんなお姉ちゃん達は、まるでトレンディドラマの主人公のようにいばり、模様替えのとき私を経理の部屋の50cmの丸い簡易テーブルへ移動させてくれた。半日ほどして浜野さんに救われて個室を与えられたけど。その後お姉ちゃんは首になったらしい。当たり前だろう。実力もないのに人を指図するなよな。今は実力も感性もないのにWEB上でものを言う人間達のなんと多い事か。
 さてグレイブスのデザインで口直しをしよう。やはり実力と優れた感性があるんだね。


参考文献:MICHAL GRAVES:BUILDING AND PROJECT 1990-1994,Rizzouli,1995.
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