福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

初夏のひとこま

2008-07-03 09:38:54 | 教育

洞爺湖サミット開催間近。今回は地球環境保全が中心課題の一つですね。持続可能な社会のために、私たちはなにをすべきでしょう?

さて、今年も大学院環境科学院生物圏科学専攻環境分子生物学・微生物生態学コース提供の『環境分子生物基礎論』がスタート。当研究室からのテーマは『土壌呼吸活性測定と微生物群集構造解析』。

08070201 08070202 青空が広がる北大第2農場。低温研に隣接しています。大学院生のための実習を行う上で、身近にフィールドがあります。

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森林生態系で生産された有機物の大部分は陸上土壌に流入し、微生物の分解を受けます。分解産物である二酸化炭素と水が再び光合成の働きで有機物と酸素に変換されます。これらのプロセスで、土壌中の有機物の分解を『土壌呼吸』と呼ぶことがあります。つまり、微生物が落葉などの有機物を分解する際に、大気中からの酸素を使って二酸化炭素として放出するからです。このエネルギー獲得反応は、私たちヒトと共通しています。

では、低温研の森林で土壌呼吸の活性を測定してみましょう。

08070203 08070204 土壌表面にスタンドを設置し、透明アクリルチャンバーをかぶせましょう。この測定装置は低温研オリジナルで、技術部のスタッフに作成していただきました。至る所に巧みの技が光っているのがわかりますでしょうか?


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08070205_2 スタンドとチャンバーの間からガス成分が逃げないように水でシールしましょう。そして、チャンバー内の二酸化酸素を測定するため、赤外線センサーをセット。ガス成分の測定ですから、現在の気温と気圧を記録しておきましょう。

08070206 さあ、測定開始です。チャンバー内の二酸化炭素濃度が上昇して来ました。時間で割って、速度として計算してみましょう。その際、森林の単位面積当たりの土壌呼吸活性として、算出してみてね。

皆さんが測定した『土壌呼吸活性』からどんなことが考えられるでしょうか?また、土壌1グラムの中にはどれくらいの微生物がいるのでしょう?そして、どんな種類の微生物がいて、どんな働きをしているのでしょう?もし、温暖化が進んだならば、土壌呼吸活性、土壌微生物群集や生産と分解のバランスは、どのように変動するのでしょう?