[用例研究 141] 〈suppose / supposing〉
suppose や supposing の後に節を續けて、「(假に)~としたら」「~と考へると」と條件を提示したり、(文脈によつては)「~してはどうか」と提案を表はすことがあります。この場合、suppose は動詞、supposing は接續詞の扱ひです。例文141.2のやうに that を置くこともありますが、ふつうは省略されます。
節には直説法の動詞や假定法の動詞が用ゐられます。實現の可能性を意識せず、單に條件を述べるときは直説法の動詞、實現の可能性が低いときは假定法の動詞が用ゐられます。提案で假定法の動詞を使ふと控へ目な(less definite)表現になります。
□參考例文: 直説法の動詞が用ゐられる例です。
141.1 Suppose you're offered the job - will you accept?
もしその仕事をすすめられたとしたら、君は引き受けますか。
□參考例文: that が置かれた例文です。
141.2 Supposing that you are elected, what will you do for your constituents?
もし當選したら、あなたは選擧區の人々のために何をしますか。
□參考例文: 假定法過去を用ゐて現實と距離を置き、現實味のないことを假定してゐます。
141.3 Supposing there was a war, what would you do?
戰爭が起きたとしたらどうしますか。
□參考例文: 假定法過去完了を置いた例です。現實に起こつたのではないことを假定し、その結果を推量してゐます。
141.4 Supposing you had married a foreigner and had gone to live in her country, do you think you would have been happy?
もしあなたが外國人と結婚して彼女の國に住みついてゐたら、あなたは幸福だつたと思ひますか。
□參考例文: should を置くと、現在から未來にわたつて起こりさうもない(unlikely to happen)と話し手が考へてゐることを假定します。
141.5 Suppose a lion should run out of the cage?
=What would (/will) happen if a lion should run out of the cage?
萬一ライオンが檻から飛出してきたとしたら、どうなるでせう?
□參考例文: 提案で直説法を用ゐてゐます。
141.6 'I haven't got a table-cloth.' - 'Suppose we use a sheet.'
「テーブルクロスがないの」「シーツを使つてみたらどうだらうか」
□參考例文: 提案で假定法を用ゐてゐます。
141.7 'Daddy, can I watch TV?' - 'Suppose you did your homework first?'
「お父さん、テレビみてもいい」「まづ宿題をやつたらどうかね」
141.5 の例文で S’posin’ といふ古いジャズ曲を思ひ出しました。S’posin’ とする綴りは supposing を(歌唱中の)發音通りに表記したものです。Rudy Valée はじめ多くの歌手が歌つてゐますが、拙宅にあるのは Frankie Laine が1955年に Buck Clayton と録音したレコードです。曲名や歌手名を檢索窗に打ち込むと、今でも YouTube などで樂しむことができます。歌詞は、
S’posin’ I should fall in love with you
Do you think that you could love me too?
S’posin’ I should hold you and caress you
Well would it impress you
Or maybe distress you?
S’posin’ I should say “For you I yearn”
Would you think I’m speaking out of turn?
And s’posin’ I declare it
Would you take my love and share it?
I’m not s’posin’, I’m in love with you
といつたものですが、レコードによつて多少變化があります。最初は should が入つてゐますが、最後には I’m in love with you と歌つてゐます。韻律を整へるため I yearn for you の語順が入れ替はつてゐます。out of turn は、ここでは「輕はずみに」といつた意味でせう。
[用例研究 141]〈suppose〉
(BLONDIE By Dean Young & Stan Drake)
1 I can’t decide what to eat for lunch.
2 Suppose you were sitting here instead of me,
3 what would you have?
4 Second thoughts.
[解説]
1
・≪疑問詞+不定詞≫については2014年5月14日付の拙稿に解説と例文があります。畫面右の Back Numbers で該當の月・年をクリックし、Calendar で該當日をクリックしてご利用ください。
2, 3
・suppose: if の意味で用ゐてゐます。架空のこととして述べてゐるので、この條件節、3コマめの歸結節ともに假定法過去の動詞・助動詞を使つてゐます。
・instead of~: 「~の代はりに」「~でなく」
4
・have second thought(s): to start having doubts about a decision you have made: 「考へ直す」「二の足を踏む」「再檢討する」
[意味把握チェック]
1 「晝御飯に何を食べるか決められないんだ」
2 「ぼくの代はりにここに坐つてゐるとしたら」
3 「何にする(/何を食べるだらう)?」
4 「迷ふだらうね(/惱むだらうね)」
[笑ひのポイント]
・料理の名稱ではなく、(I would have)second thoughts と、思ひがけないことばを發します。自信をもつて客にすすめる料理のないランチ・カウンターのシェフ Lou による所謂「自虐ネタ」で、讀者の笑ひを誘つてゐるのではないかと思ひます。