英文讀解自修室

  - in the historical Japanese kana/kanji orthography

・英文讀解のヒント (64) 《見分けにくい接續詞 ④》

2016-12-28 | 英文讀解のヒント

・英文讀解のヒント (64) 《見分けにくい接續詞 ④》

1  次の英文を音讀または默讀しながら意味をとらへ、下線部については意味を日本語で言つて、または書いてみませう。(※讀み方がわからない語はあとで辭書で調べておきませう)

     (1)The decline in Japan’s youth population looks likely to continue as the total fertility rate (TFR) ― the average number of children a woman will have in her lifetime ― reached a new record low of 1.25 in 2005.  (2)The new TFR announced by the Health, Labor and Welfare Ministry on June 1 was lower than the 1.29 announced in 2003 and 2004, which made headlines as a historic low.  (3)As Tokyo’s figure, seen as the advance indicator for the nation, fell to 0.98, it seems likely the national TFR will drop to below 1.0 someday, unless circumstances surrounding marriage, giving birth and child rearing change dramatically.  Eleven years have passed since the government began measures, including projects called angel plans, to stop the trend.  But why can’t the nation stop the decline in the youth population?

(09 岡山大學 2007 1パラ: 2011年11月7日掲載)

 

2  下線部の解説

2.1  下線部(1)の as と下線部(3)の最初の as は接續詞で、「原因・理由」と解されます。「原因・理由」といつても意味は弱いし曖昧なところがあります。いづれも主部のあとに插入句が入つて動詞と遠いため、讀みにくくなつてゐます。下線部(2)と下線部(3)の2番目の as は前置詞で「~と(して)」の意味です。

 

2.2  as: 單獨の as は<as +S+V>(接續詞)、<as +名詞>(前置詞)のふたつのかたちをとりますが、前者は意味が多樣かつ曖昧で困ることがあります。たとへば、 as が「~するとき」の意味なのか、「~のため」といふ理由の意味なのかわからないことがあります。後者は、ほとんどの場合「~と(して)」で讀み解くことができます。

  as の核心は「同時性」です。同時に起こるふたつの行爲や状況を竝べて述べるわけです。ふたつのことがらを竝べるところから、さまざまな意味が派生してくるやうに思はれます。たとへば、述べられたふたつのことがらにより因果關係が仄めかされると、弱い「原因・理由」の意味が生じ、時間經過が記されると、「比例」して起こる變化や進展の樣子が看取される、といふわけです。as の多樣さ、曖昧さも、かうした出自に因るのではないかと思はれます。

  實際に英文を讀む時には、辭書などにある項目のうち、使用頻度の高いものを選んで「手がかり」として使ふ方法が有效ではないかと思ひます。實際の例文を併せて眺めておくと、なほよく as の感觸が實感できますから、例文を添へて主だつた「手がかり」を竝べてみます。馴れると不要になります。

 

<as +S+V> 接續詞としての用法で、あとに主語・動詞などが續きます

(1) 「~するとき」「~しながら」「~する間に」: 同時進行の行爲や状況を述べる時に使はれます。when や while と比べると、これらより重要性の低い情報を傳へるとされます。

□參考例文

64.2  The phone rang as I was going out the front door.

       玄關を出ようとしてゐたら電話が鳴つた。

※主語とbe動詞が省略されることがあります。このタイプの as は前置詞として扱はれることもあります。

□參考例文

64.3  As a child, he lived inIndia.

       子どものころ彼はインドに住んでゐた。

(2) 比例・變化 「~につれて」: ふたつの行爲やできごとが同時に進展、變化してゐる状況を述べます。

□參考例文

64.4  As time passed, his condition got better and better.

       時間が經つにつれて、彼の状態はますます良くなつてきた。

(3) 原因・理由 「~なので」: 既に知られてゐる理由、最も重要とはいへない理由を輕くつけ足します。非常に弱い意味であり、because ほどはつきりした意味は持ちません。

■諳誦例文

  64  As the hurricane hit the town, everyone ran for their lives.

       ハリケーンが町を襲ひ(/襲つたので)、みな生命からがら逃げ出した。

(4) 樣態・同一 「~の通り」: 竝べて置いたところから、=(イコール)關係が生じます。

□參考例文

64.5  I changed the code as you suggested, and now I don't receive the error messages.                                                                                        

       お勸めくださつた通りにコードを變へました。それで今はエラー・メッセーヂを受け取りません。

(5) 擬似關係代名詞として: the same やsuch などと呼應して使はれることもあります。2012年8月22日付の拙稿に例文を4つ擧げてゐます。下の例文は、非制限的用法で、前文の内容を先行詞として説明を追加する as です。

□參考例文

64.6  He was also a member of a tennis team, as is evident from this picture.

       彼はテニス・チームの一員でもあつた。それはこの寫眞を見ればわかることだが。

※前の名詞を説明する附言のはたらきをすることがあります。下の例文では、it がありますから、擬似關係代名詞とは言へません。

□參考例文

64.7  The world's first printed daily appeared in 1650. Journalism, as we know it, was being invented.

       世界で最初に印刷された日刊新聞は1650年に現はれた。私達が知つてゐるジャーナリズムなるものが生み出されつつあつたのだ。

(6) 讓歩 「~ではあるが」: as の前に形容詞や副詞が置かれますから、見分けやすいのですが、同じかたちで「理由」の意味を表はすこともあります。文脈で判斷することになります。

□參考例文

64.8  Young as he is, he is already running a company that designs airplanes.

       若いけれども、彼はもう飛行機を設計する會社を經營してゐる。

 

<as +名詞> 前置詞としての用法で、あとに名詞がつづきます

(7) 前置詞として 「~と(して)」:これももともとは同時のこととして竝べて置いたところから派生した用法かと思はれます。

□參考例文

64.9  As your doctor, I have to advise you to quit smoking.

       君の醫者として、禁煙を勸告せざるを得ないな。

  ※ regard / view / see / think of などの動詞とともに使はれることがあります。下線部(3)は see のケースになります。

 

  こぢつけですが、手がかり暗記の方法として、「獨り養生(ノ)義父」といふのを作つてみました。比例のヒ、時のト、理由のリ、樣態のヨウ、讓歩のジョウ、擬似關係代名詞のギ、附言のフ、を竝べたものです。(※接續詞としての用法の暗記法です。前置詞的用法(7)「~として」は含まれません)

 

3  意味把握チェック

(1)人口増加率(TFR)― ひとりの女性が生涯に持つ子供数の平均 ― が2005年に1.25といふ最低記録に達し(たので)、日本の若年者人口の減少は繼續しさうに見える。(2)厚生労働省によつて6月1日に發表された新しいTFRは、2003年と2004年に發表された1.29、それは歴史的低率として評判になつたのであるが、それよりもさらに低かつた。(3)東京の數値は、それは國の(將來の)姿を先に示すものとみられるが、0.98まで下がり(/下つたので)、國のTFRは、もし結婚、出産、育兒をめぐる環境が劇的に變はるのでなければ、いづれは1.0以下に下がりさうに思はれる。政府が、エンジェル・プランと呼ばれる計畫を含め、その傾向を止めるために對策を始めて11年が經つたところである。しかし、なぜこの國は若年者人口の減少を止められないのか。

 

4  意味把握チェックの下線部を參考にして、元の英文に戻してみませう。

 

※下線部以外の解説については、英文末尾に掲げた日付のブログ記事をご參照ください。畫面右の Back Numbers で該當の月・年をクリックし、Calendar で該當日をクリックしてご利用ください。