

千紗子という新たな名前を持つこと。
心の裡を言葉にすること。
自分を解放するために得た術が彼女の人生を大きく変えた――
明治の終わりの沖縄で、士族の家に生まれたツタ。
父親の事業の失敗によって、暮らしは貧しくなるが、
女学校の友人・キヨ子の家で音楽や文学に触れるうち、「書くこと」に目覚める。
やがて自分の裡にあるものを言葉にすることで、窮屈な世界から自分を解き放てると知ったツタは、「作家として立つ」と誓う。
結婚や出産、思いがけない恋愛と哀しい別れを経て、ツタは昭和七年に婦人雑誌に投稿した作品でデビューする機会を得た。
ところが、待ち受けていたのは、思いもよらない抗議だった……。
「幻の女流作家」となったツタの数奇な運命。
一作ごとに新しい扉を開く、『ピエタ』の著者の会心作!








始まりは・・・いまわのきわで彼女は思う。
婦人雑誌でデビューしたはずが、まさかの抗議
思いもよらない。なんで?
ちゃんと読んでくれていたなら、もしかして抗議などなかったのでは・・・題名がね。
昔のようにピアノとバイオリンを弾いたキヨ子もいなくなって、いい人だったよね。やさしくて天女さま・・・キヨ子がでてくるとホッとした。
キヨ子がいなかったらどうしたんだろう?
走馬灯のように駆け巡った、いまわのきわの不思議な時間
ツタは言った。
充に再婚してくださいと・・・そしてありがとうございました。と・・・
はらはらと先が気になりどんどん読み進んだ。
読み応えがありました。
