『兵士の物語』(8月2日・千秋楽)


  初日から通ってみて、徐々に観客が増えてきてるなー、とは思ってました。今日は私が来た中では最も客の入りが良かったです。満員御礼じゃないですが、ほぼ9割方くらいはお客さんが入ってたと思います。

  観客の反応も良く、多分に「楽日のご祝儀」的なものでしょうが、カーテン・コールはスタンディング・オベーションとなりました。

  アダム・クーパーは楽日に最も良いパフォーマンスを見せることが多く、今回もそうでした。クーパーは毎公演出演を長期にわたって行なうことがほとんどなので、公演がまだ残っている場合は、怪我やスタミナ切れを避けるために無理せずセーブするのだろうと想像しています。かといって決して手抜きパフォーマンスをするわけではありませんが。

  去年の『雨に唄えば』の千秋楽と同様、今日のクーパーはイケイケドンドンで飛ばしてました。動きに鋭さが増す、ジャンプが高くなる、アラベスクやアティチュードの脚が高く上がる、ピルエットでの回転数が多くなる、更に、今日はどうやら自分の判断で踊りを増やしていたようです(第2部、悪魔を倒した後の兵士の踊り)。

  兵士がアティチュードでターンするところは、上半身が反り返り、片脚が根元からぐいっと高く上がって、ボーン版『スワンレイク』のザ・スワンを思い起こさせました。一瞬ギョッとして、一瞬懐かしい思いになりました。

  クーパーの踊り、つまりバレエについていえば、『兵士の物語』日本初演が行なわれた2009年時よりも、今回の踊りのほうが優れていると思います。兵士のソロ、婚約者・王女とのパ・ド・ドゥすべてにおいてです。

  クーパーには不思議なところがあり、バレエから完全に離れたと思ったら、なぜかまたいきなりバレエを踊るのです。これはもちろん本人が引き受けてのことなのですが、そういう仕事の話が彼に入ってくること自体、まるで本人以外の力が働いて、バレエを踊る機会が彼に与えられているかのようです。

  今回のクーパーの踊りを見て、アダムはようやくバレエと「和解」できたのかもしれないと思いました。でなければ、あの身体は作れなかったろうし、あの踊りもできなかったでしょう。

  どういう言葉で締めくくればいいのか分かりません。ありがとう、アダム。また日本に来て下さいね。

コメント ( 9 ) | Trackback ( 0 )