ペリカン・ダンス・アワード2012(発表編)2


 キレキレノリノリ絶好調賞
    八幡顕光(新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』、『シルヴィア』、『シンデレラ』) 最近、八幡さんが出てくると「待ってましたー!」的な気分になる。踊りを観ていてとにかく楽しい。

 最優秀何気に凄い踊りをやってのけました賞
    島添亮子(小林紀子バレエ・シアター『アナスタシア』第三幕) 第一、二幕での純クラシカルな踊りから一転、第三幕ではクラシカルな動きのかけらもない、複雑かつ難度が異様に高い振りを自然にこなしてしまった。演技も壮絶。マクミランの抽象的作品をもっと踊ってほしい。

 最優秀何気に舞台での存在感が大きい賞
    厚地康雄(新国立劇場バレエ団『マノン』貴族、看守、『シルヴィア』オライオン) 群舞であっても、舞台にいるとなぜか目立つ。大仰な演技をしているわけでもないのに、その役柄の人物がすごくリアルに感じられる。

 最優秀美貌賞
    本島美和(新国立劇場バレエ団『シルヴィア』ダイアナ、『シンデレラ』仙女) とにかく美しいんです!あと演技がすばらしいです。本島さんは演技が重要な役に向いているとようやく発見。演技派タイプのダンサーなんでしょう。

 最優秀セクシー賞(男性)
    アレクサンドル・ヴォルチコフ(ボリショイ・バレエ『スパルタクス』クラッスス) 日本にヒザ神降臨。3月の「グラン・ガラ」で、再びその美腕と美腿と美膝と美ふくらはぎを拝めることを楽しみにしております。

 最優秀セクシー賞(女性)
    マリーヤ・アレクサンドロワ(ボリショイ・バレエ『スパルタクス』エギナ) そのお美しい爪先と杖で、わたくしめもなぞって下さりませ(笑)。

 最優秀記憶に全然残ってない賞
    アレクセイ・ラトマンスキー版『アンナ・カレーニナ』 眠かった。凡庸な振付、どっかで見たような、新味のない演出、底の浅い脚本で、いくら優れたダンサーをもってしても、これはどうしようもない。演出と脚本はルキノ・ヴィスコンティ監督『夏の嵐』(1954年)、スティーヴン・フリアーズ監督『危険な関係』(1988年)、ついでにジョン・ノイマイヤー振付『椿姫』をごちゃまぜにした感じ。

 最優秀しょーもねえもん上演しやがって賞
    アレクセイ・ラトマンスキー版『アンナ・カレーニナ』 「2時間でわかる『アンナ・カレーニナ』のあらすじ」的作品を上演されてもなー。私は『アンナ・カレーニナ』全編を読破したことがないので、ロシア文学好きな人にこの舞台の様子を話して聞かせたら、黙って笑われて恥ずかしかった。

 最優秀あなたはいったい何しに日本においでだい!?賞(男性) 
    アントニーノ・ステラ(ミラノ・スカラ座バレエ団、小林紀子バレエ・シアター『アナスタシア』) ステラがわるいのではなく、作品が適切でなかった。アンソニー・ダウエルが初演したという役を担当させたんだろうけど、出来のよくない作品をスター・ダンサーに踊らせることでなんとか舞台を成立させる、という窮余の策は、たとえばフレデリック・アシュトン振付『マルグリットとアルマン』でも用いられており、この三幕版『アナスタシア』でステラが出演した第一、二幕も、元来は作品自体の出来のよくなさを補うために、ダウエルやアントワネット・シブレーを出演させたのだと思う。この種の作品にイタリアからわざわざ来てもらって出演させたのは、ステラに気の毒なことだった。
    ネマイア・キッシュ(英国ロイヤル・バレエ、「ロイヤル・エレガンスの夕べ」) キッシュの踊りやパートナリングの頼りなさを見て、英国ロイヤル・バレエの王子不足は本当に深刻なのだな、と実感した。

 最優秀あなたはいったい何しに日本においでだい!?賞(女性)
    ロベルタ・マルケス(英国ロイヤル・バレエ、「アリーナ・コジョカル・ドリーム・プロジェクト」、ついでに『真夏の夜の夢』タイターニア) 踊りは観るたびにどんどん衰えてきている、というより劣化していっていると思います。演技も印象に残りません。何か事情があるのかもしれませんが、個人的には、自分の踊りをどうしたいとか、自分はこの役をこう表現したいとか、自分を観客にこう見せたいとか、マルケスからはそういった野心や意図が感じられないです。よくない意味で、今の立場に安住してしまってるのだろうか。 

 最優秀中二病賞
    『ザ・レッスン』(フレミング・フリント振付、「アリーナ・コジョカル・ドリーム・プロジェクト」) 作品そのものがもう時代遅れだと思いますが、この作品を推したヨハン・コボーをはじめとする、ダンサーたちの解釈の浅さのせいで、更に良くない出来になってしまった印象です。ダンサーたちは(といっても3人だけですが)この作品の表面的な部分にしか注意していないのではないかなあ。

 バレエのレベルも改革開放して下さい賞
    ワン・チーミン、リー・チュン(中国中央バレエ団、新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』)、上海バレエ団(デレク・ディーン版『白鳥の湖』) みな生来の素質には充分すぎるほどに恵まれているのだから、たぶん教授法と訓練法が改善されれば、もっとすばらしい踊りができるはず。向前走!

  おまけ: コウメ太夫賞
    山本隆之、橋一輝、古川和則、野崎哲也(新国立劇場バレエ団『シンデレラ』義理の姉たち) 「ちっくしょー!!!」(←ご存じないみなさまは検索してみてね

 
  今年もこんないいかげんな感じでやっていきますが、どぞよろしく。


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