二つの「おめでとう」

  ここ4、5日間ネットをやってなかったうちに、クーパー君のキャリアにすばらしい進展がみられたようですね。公式サイトの“Current&Future Events”に、クーパー君が振付またはステイジングを行なう舞台の情報が二つ掲載されておりました。

  例のマサダ要塞の故事をミュージカル化したという作品“Imagine This”は、プリマスのシアター・ロイヤル(やっぱり訳すなら「王立劇場」になるのか?)で、今年の7月6日から21日まで上演される運びとなったようです。まずは一つめのおめでとう。

  なお、公式サイトがリンクしているMySpaceの“Imagine This”のページは、劇中の音楽や歌が聴けるので面白いです。地方の小劇場が製作した作品を、こういうサイトを利用して宣伝するとは考えたものですね。

  MySpaceは主に音楽の配信を行なっているサイトで、ユーザー(インディーズ・バンドなんかが多いみたい)は登録して自分のページを作り、そこに自分たちの作った楽曲をアップロードして、ページにアクセスした人に試聴してもらうことを目的としているようです。アマチュア、もしくはインディーズの売り込みは、もう真夜中の駅前とか商店街とかで地道に行なわれる時代ではなくなってきているのねえ~。

  いまいち分からんかった「マサダ要塞」ミュージカル“Imagine This”ですが、MySpaceのページによると、第二次世界大戦の間、ワルシャワのゲットーに強制収容されたユダヤ人俳優たちが、紀元前、マサダ要塞に立てこもったユダヤ人たちの物語を演ずる、というストーリーのようです。

  ワルシャワのゲットーは映画「シンドラーのリスト」にも出てきました。ゲットーを解体してユダヤ人たちを絶滅収容所に送ろうとする際に、ドイツ軍によって多くのユダヤ人たちが殺されるシーンがありましたね。ワルシャワのゲットーではその後、ユダヤ人たちによる大規模な蜂起が勃発し、それを鎮圧しようとするドイツ軍との間で激戦となって、結果的に1万人近くのユダヤ人が殺されました。

  クーパー君の日記を読んだときには正直「へ!?」だったけど、第二次世界大戦時のワルシャワのゲットーに古代のマサダ要塞を重ね合わせた物語だ、ということが分かり、これは非常に奥の深い作品になるんではないか、と思いました。 

  また、いきなり出てきたご大層なニュースが、“Side by Side by Sondheim”というミュージカルの振付もしくはステイジングを、クーパー君が担当するらしいことです。ロンドンのヴェニュー劇場で、プレビューは4月26日から、本公演は5月1日から7月14日まで行なわれます。  

  こちらはね、クーパー君の公式サイト以外にも、ロンドンの多くの舞台関連の大手ウェブサイトに情報が載ってます(キーワード「Side by Side by Sondheim Adam Cooper」で検索してみてね)。今夜は疲れてその全部を読む気にはなれないから、どういう作品なのかは後でみてみることにします。

  クーパー君の公式サイトがリンクしているSee Ticketsというのは、文字どおり各種公演のチケットを販売する会社の公式サイトです。See Ticketsが取り扱っているチケットの規模は半端じゃありません。ほとんどワールドワイド。私はSee Tickets経由でチケットを買ったことがあるので、今でもメールマガジンが来ます。そっけないテキスト形式のメールですが、妖怪「いったん木綿」みたいにいつも長いです。

  “Side by Side by Sondheim”については、私はまだよく知りませんが、この作品の公演情報が、先週末から今週にかけて一挙に、しかも大量に流されたことは重要です。これは明らかに、“Side by Side by Sondheim”を「成功させる」ための仕掛けの一つだからです。こういう仕掛けを施せるような、そこそこ大きな力が後ろにあることを窺わせます。

  まあロンドンで、しかも(地理的にも)ウエストエンドのまさにど真ん中(レスター・スクエアの真ん前)の劇場で行なわれる公演ですから、こういったやり方は特に珍しくはないのかもしれませんが、大事なのは、クーパー君がこの手の公演に関わることのできるような存在になったらしい、ということです。

  クーパー君の公式サイトには“Choreographer”と書いてありますが、サイトによっては“Musical Staging”とも書いてあります。この「ステイジング」というのは、該当する日本語がないように思います。たとえばあるバレエ作品を「ステイジング」する、というときは、振付や演技の指導はもちろん、ダンサーの配置、構成から演出に至るまで(美術や照明は除く)、その作品を正しい形で上演するためのすべての仕事を指すようです。

  ですから、この“Side by Side by Sondheim”の仕事も、クーパー君は単なる振付以上に首を深く突っ込んでいるものとみえます。小さな劇場(ヴェニュー劇場はある教会の地下にある小劇場らしい)での期間限定公演とはいえ、(深くそのプロダクションに関わる)振付家としてのウエストエンド進出にはお祝いを言うべきでしょう。これが二つめのおめでとう。  
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