函館市とどほっけ村

法華宗の日持上人にまつわる伝説のムラ・椴法華。
目の前の太平洋からのメッセージです。

繰り返す海難事故

2013年01月05日 14時37分55秒 | えいこう語る
新年早々の4日、マグロで有名な戸井町で磯舟の転覆事故があり、3人の働き手の男性が命を落とした。
その日私は、妻と函館に買い物に出かけた。
事故があったのは午後1時半頃だ。私は午前11時頃その現場近くの海岸道路を、函館に向かって走っていた。
一艘の磯舟がすぐ近くの岩場で、漁をしている。他に舟もいないので、正月の休みにも飽きてきたので、タコでもとるのに一人で出かけたのだと思っていた。
波は1メートルほどに見えた。この程度なら漁は安全だ。
ところが岩場のせいか、波の折る間隔が2メーター置きぐらいに、次々と続いている。波の背がたくさん重なって押し寄せているという感じだ。
大時化なら、沖合いから波が折る状況が幾重にも続くが、高さ1メートル程度の波で、こんな状況は始めてみた。妻にも「なんだか変な波だな。岩場の地形のせいかな」と話していた。
※雪も多いが寒さも厳しい今年の冬。


事故は、今が旬の布袋魚(通称ゴッコ)と呼ばれる魚をとりに、網を仕掛けるに出かけたからだという。
はちきれんばかりのメスの腹には、たくさんの卵が詰まっている。コラーゲンたっぷりの身とその卵の醤油汁が、この時季最大のご馳走だ。
今時分スーパーの店頭では、メス一匹2,000円以上の高値がつくはずだ。
この漁は沖合い2~3百メートルの近場で網を張る。
網を投下する時、3人が同じ船べりに立ったので、重心が傾いたに違いない。
その時舟が波と平行になっていたのだろう。人がいない舟の横べりに波が次々とぶつかり、転倒したに違いない。
泳いでいたので陸からロープを投げて救助したが、亡くなったという。
戸井町では数年前にも、漁師の夫婦が亡くなっている。隣町の恵山町でもやはり夫婦だ。南茅部町では親子だった。我がとどほっけ村では、若い漁師が港湾内で海中に転落し、亡くなる事故があった。
函館市と市町村合併した旧4町村、海難事故が続出している。
私もここ数年漁師の手伝いをしているが、海岸に近い漁でも、急に風が吹いて、波が舟に流入してきたなどというのはままある。
居住環境が密封化され、車社会になった。
快適さと便利さが、自然に対する危険性の、サーモスタットの感度を鈍くしているように思う。
地球温暖化は、地域にいても実感できるこの頃だ。
2・3度海水温が高くても、魚が回遊しなくなるのは、誰もが知っている。海水温の上昇は、雨や風や雪にも影響するはずだ。
環境の変化は人々の生活を脅かす。その変化に鋭敏にならなければ、命の危険性が迫るのに、私たちはますます鈍感になっていくようだ。
発電量日本最大規模の、138万kWの大間原発。
炉心冷却の海水温度は7度上昇。放射能を含んだその温排水は、毎秒91トン海中に投棄。
使用するのはMOX燃料(広島原爆のウランと長崎原爆のプルトニウムの混合燃料)だ。
大間原発に対し、せめてこのことだけでも、漁業者たちは心に刻み込んでほしい。
自然環境の変化に鈍感であれば、命取りになるということを、私たち漁師は今回の海難事故から学ぶべきではないだろうか。