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元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「愛について、東京」

2018-03-02 06:37:38 | 映画の感想(あ行)
 92年作品。北京からの留学生、方純(呉暁東)は日本で生まれ育った在日中国人二世のアイリン(岡坂あすか←現:黒沢あすか)とひょんなことから知り合い、お互いに強くひかれる。だが、パチンコ屋でイカサマをはたらいた方純は、ヤクザの店長・遠藤(藤岡弘、)に捕らえられ、見逃してもらう代償としてアイリンを遠藤に紹介する。アイリンは遠藤の愛人となり、三人の奇妙な関係が始まる。

 監督は柳町光男だが、明らかにスランプに陥っていた頃の仕事だ。製作当時でも4万人いたと言われる中国人学生を題材として扱っており、その意味で、これは急速に“国際化”が進行する現代の東京の一つの側面をとらえた社会派作品と言えないこともないが、何やら視点が定まらず、かといって普遍的なラヴ・ストーリーとはほど遠い。



 主人公とアイリンの関係がイマイチわからない。本当に好き合っていたのだろうか? カネのためなら恋人もヤクザに売る身勝手さ。遠藤が実はインポで、実の妻(戸川純)の浮気さえも黙認してしまうエピソードも、取って付けたようでドラマに十分反映しているとは言い難い。いったい何を描きたかったのだろう。

 大島渚の「青春残酷物語」のように、ざらざらした現代の若者の心理状態を描こうとしたのだろうか? それにしては描写が曖昧でこちらに迫って来るものがない。

 結局、一番印象に残ったのは、転んでもタダでは起きない中国人留学生のしたたかさであった。“日本へ勉強しに来た”とはいっても、日本語学校ではロクに授業も聞かず、生活費のためにバイトに精を出す毎日。主人公は食肉工場でのバイトをやっている。殺される牛に自分たちの境遇を重ね合わせるといった手法は、いかにもわざとらしくて見ていられないが、それはさておき・・・・。

 パチンコ屋の店長にアイリンを提供するかわりに、出る台を教えてもらって生活費をたたき出し、その金づるに他の留学生も荷担し、ついにはタカリの構図に進んでいくあたりはゾッとした。ヤクザの子分が“中国人はツケ上がると仕末が悪い”とこぼしているのも納得できる。そういえば大林宣彦監督の「北京的西瓜」(89年)も、見かけはハートウォーミングな感動作だが、要するに金に困っていた中国人留学生にちょっと甘い顔を見せたばっかりに、身ぐるみはがされてしまう哀れな八百屋の話だと言えなくもない。

 もちろん、実際の中国人留学生がそうだと言うつもりは少しもないが、ドラマ部分がハッキリしないので、そんな二次的なエピソードに目が行ってしまうのは事実だ。

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