元・副会長のCinema Days

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「アルタード・ステーツ 未知への挑戦」

2024-02-10 06:07:31 | 映画の感想(あ行)
 (原題:Altered States)80年作品。2022年に惜しくも世を去った名優ウィリアム・ハートの映画デビュー作になるSFスリラーだ。しかも、監督があのケン・ラッセル。かなりクセの強いカルト的なシャシンかと期待させたが、実際は何とも気勢の上がらない出来である。原作者で当初の脚本担当だったパディ・チャイエフスキーからして、ラッセル監督の妙な演出に辟易して脚本のクレジットから名前を削ることを要請したほど。

 主人公エドワード・ジェサッブは25歳で博士号を取ったほどの天才科学者。彼は人類の生命誕生の根源に迫るためには、原始生命体からの生命の記憶を引き継いでいるはずの細胞を徹底解析するしかないと思い立つ。彼は自らを実験台にすべく、強力な幻覚作用を持つ薬を服用したまま硫酸マグネシウム溶液の水槽に浸るという荒業を敢行。



 実験は当初は順調だったが、やがてエドワードの身体に異変が起こり、ついには人類の発生時に遡って類人猿に変身。研究室を抜け出して狼藉をはたらく。何とか元の姿に戻った彼だが実験を続ける意志は固く、最終的に予測不能のエネルギーが放出され婚約者のエミリーをも巻き込む一大アクシデントが発生する。

 一番の敗因は、特殊効果が上手くないことだ。まあ、80年当時のSFXのレベルを今と比べるのは酷だが、それでも本作に先んじて「スター・ウォーズ」や「未知との遭遇」は製作されていたし、2年後には「ブレードランナー」や「ポルターガイスト」も封切られるのである。だから“この程度で良い”ということにはならない。

 しかも、映像のセンスが良くない。目障りな光の点滅ばかりが目立ち、それを派手な音響で粉飾しているだけのように感じる。鬼才として知られたケン・ラッセルの仕事とは思えぬほどの体たらくだ。さらにはストーリーが“底抜け”で、何やらメロドラマ方面で事を収めようという気配があり、ラストも腰砕けだ。序盤で示された主人公の崇高な研究者精神は、一体どこに行ったのかと思うような幕切れである。

 W・ハートは熱演だが、後年のカリスマ的な存在感はまだ備わっていない。相手役のブレア・ブラウンやボブ・バラバン、チャールズ・ヘイド、ティオ・ペングリスといったキャストもパッとしない。なお、音楽は高名な現在音楽の作り手でもあるジョン・コリリアーノが担当しているが、あまり効果的なスコアとは思えず。後年オスカーを獲得した「レッド・バイオリン」(99年)の方が数段インパクトが大きかった。

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