元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ウルガ」

2016-10-27 06:25:27 | 映画の感想(あ行)
 (原題:URGA)91年製作のソ連とフランスの合作映画。同年のヴェネツィア国際映画祭で大賞を獲得した作品だが、どうもピンと来ない出来だ。何より、どう考えてもニキータ・ミハルコフ監督に向いている題材とは思えない。居心地の悪さが最後まで付きまとう。

 中国の内モンゴル自治区に広がる大草原で遊牧を営むゴンボの一家。すでに3人の子供がいるが、彼は4人目を欲しがっている。だが、妻のパグマはつれない態度しか示さない。果ては“避妊具があれば寝てやっても良い”と言われる始末。何しろ中国では一人っ子政策、遊牧民族のモンゴル人は3人までと決まっていた時代だ。ある日ゴンボは、草原で乗っていたトラックが河にハマり込んで立往生しているロシア人セルゲイと出会い、家に泊めてやる。セルゲイと意気投合したゴンボは、避妊具を買いに一緒に町まで出かけるのだが、思わぬ騒動が持ち上がる。



 いつもならば文芸物や歴史ドラマ等を正攻法にまとめ上げるミハルコフの製作スタンスとは相容れないネタで、しかも僅か5ページの脚本といくつかのキーワードだけを携えてロケ地に出向いたという。当然のことながら、彼の目の前に現れたのは雄大な自然の風景。そこで柄にもなくドラマツルギーを曖昧にしたイメージ・フィルムみたいなものに色目を使ってしまったと・・・・たぶんそんな感じだろう。

 ストーリー自体は面白くも何ともない。盛り上がるようなエピソードも無ければ、気が利いたつもりのオチにしても、全然ウケない。遊牧民の生活にも近代的な日用品が入ってきていること通して、文面批評でもやりたかったのかもしれないが、演出が平板すぎて意図が伝わらず。

 ゴンボが買ってきたテレビが平原の中にポツンと置かれているショットや、ジンギスカンの亡霊が突然出てくるシークエンスも、オフビートな作風の監督が手掛ければそれなりにキマるのかもしれないが、ミハルコフがやってもサマにならない。

 なお、題名の“ウルガ”というのは馬を捕捉するための棹のような道具のことだ。ウルガを地面に立てる目的は“情事を邪魔するな”ということらしい。これが本当に遊牧民の風習なのかどうかは分からないが、ちょっと興味深い。言い換えれば、その程度のことしか印象に残らない映画だ。
コメント
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