元・副会長のCinema Days

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Technicsのシステムを試聴した(その2)。

2015-06-12 06:35:33 | プア・オーディオへの招待
 前のアーティクルで言及した通り、久々に新しいラインナップを発表したPanasonicのオーディオブランド、Technicsのシステムの音はとても誉められたものではなかった。しかしながら、この新製品には面白い機能や意匠が投入されており、今後のオーディオ界全体にとってはとても有意義なものになる可能性がある。

 何といっても注目すべきは、アンプに搭載されたLAPCなる機能だ。これは「Load Adaptive Phase Calibration 」の略称で、早い話が接続されたスピーカーの特性をアンプ自身が測定し、それに合った補正を自動的に作成するという仕掛けである。今も昔もオーディオファンを悩ませるのは、スピーカーとアンプとの相性だ。本来は“繋ぐスピーカーを選ぶアンプ”とか“駆動するアンプが限定するスピーカー”とかいうのは、あってはならないことだと思う。しかしながら現実は“このブランドのスピーカーには、あのメーカーのアンプがベストマッチだ”というような定説が罷り通っている。



 このようなオーディオ界の通説を、このLAPCは打破するかもしれない。ちなみに、リファレンスシステムでこの機能を発動させると、それまで聴き辛かったスピーカーのSB-R1が、ほんの少しまろやかになるのが確認された。もちろん音色が変わってしまうほどの補正能力は有り得ないが(笑)、アンプとの相性確認に悪戦苦闘してきたオーディオファンの苦労が軽減される(かもしれない)ことを想像すると、悪い気分はしない。

 そして、リファレンスシステムのコントロールアンプSU-R1とパワーアンプのSE-R1は、通常のアナログケーブルではなくLANケーブルで繋がれる。全段に渡ってデジタルで駆動しようという考え方からきており、それぞれ別のメーカーのプリアンプあるいはメインアンプと接続することは(今のところ)出来ないかと思うが、セパレートアンプの形式の新たな提案としては興味深い。

 デザイン面は旧来よりの高級装置の外観を踏襲しているリファレンスシステムよりも、プレミアムシステムの方が断然面白い。スピーカーのSB-C700は(前回述べたように)音は大したことはないが、白い筐体と黒いユニットが鮮やかなコントラストを見せるエクステリアはセンスが良い。

 アンプのSU-C700は今回の同ブランドの製品の中では一番売れているらしい。パネル前面のかなりの割合を占めるレベルメーターはオーディオファンの琴線に触れることは間違いないし、ボリュームつまみを上方に取り付けたデザインもユニークだ。またLAPCも付いているのだから、お買い得感は確かにある。



 さらに、プレミアムシステムはアンプ類のサイズが小振りである点は評価したい。いつまでもフルサイズの製品しか提供しないというのは、メーカーの怠慢だ。同じく小さめのサイズのアンプ類を展開している大手メーカーにはTEACがあるが、このプレミアムシステムはあっちよりも垢抜けている。

 ただ残念なのは、ラインナップにアナログプレーヤーが無かったことだ。今は業界挙げて次世代メディアとしてハイレゾ音源を持ち上げており、このシステムもそれを前提とした製品作りが成されているが、あいにく消費者側の反応は今のところ冷ややかなものである。それよりも近年急速に見直されているアナログレコード再生に対応させた方が、より大きく話題になったのではないか。

 Technicsは世界で初めてダイレクトドライブ方式のレコードプレーヤーを考案したことで知られる。思えば、私が初めてオーディオシステムを揃えたときも、プレーヤーはTechnicsのものだった。つい数年前まで同社はアナログプレーヤーを作っていたのだから、ノウハウも残っているはずだ。次回の製品リリースの際は是非とも発売して欲しい。

 あと、LAPCにしろフルデジタル構成のアンプにしろ、これらを開発可能にしたのは大手家電メーカーとしての資本力であったのは間違いない(専業メーカーでは難しいだろう)。その意味では今回の復活劇は大いに意義があったと思う。ともあれ、スピーカーの練り上げ方にはもっと工夫が必要だった。往年のユニークな形状のリニアフェイズ型スピーカーも再登場をお願いしたいところだ。

 余談だが、今年(2015年)は同ブランドが発足してから50周年に当たる。そのせいか、会場で配布されたカタログは冊子形式の豪華なものだった。今回発売された製品を買う予定は無いが、このカタログだけは“永久保存版”としたい(笑)。

(この項おわり)
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