#photobybozzo

沖縄→東京→竹野と流転する、bozzoの日々。

【aug_04】南相馬市小高区

2012-08-05 | Mement_Mori
今年の4月16日に「警戒区域」が解除され、
「避難指示解除準備区域」(年間積算線量20mSv以下)
「居住制限区域」(年間積算線量20mSv超)
「帰還困難区域」(年間積算線量50mSv超)
と再編された南相馬市小高区。

その「避難指示解除解除準備区域」は一日も早い復旧へと解除を急いだ感もあるが、
南相馬市ボランティア活動センターの現場に赴いてみると、その現状にただただ心の涙があふれた。

ここからが旧警戒区域(20キロ圏内)という電光掲示板の手前には、
除染を試みたのであろう、一面に広がる向日葵畑。
背丈の低い向日葵が一様に太陽を見上げる光景は、なんとも愚直でいたたまれなかった。

旧区域内は、昼間の活動は可能だが、夜間の寝泊まりは禁止されている。
道路も1年前のまま。ところどころに亀裂がはいり、陥没しているところもある。
上下水道も復旧の見通し立たず。電気はなんとか復旧しているようだった。

常磐線の小高駅近くにボランティア活動センターがあり、
そこで7組ほどの活動班に分かれ、それぞれの現場作業にあたる。
今はその活動のほとんどが草刈り作業だ。土曜日の参加者は70名ほど。
団体で40名ほどのグループが来ていた。

ボクも含めた7名は小高区神山のお宅で、草刈り作業。
常磐線「桃内」からほど近い。線量1.25μSv/h。決して低くはない。
センター周辺が0.25μSv/hというから、相当な量である。

小高区の除染作業は来年末までかかる見通し。
除染もおこなわれていない地域の草刈り作業…果たして意味があるのか…と、
おそらく現場に足を踏み入れていない人は思うかも知れない。

人っ子ひとりいない。気配も感じない。生活音も聞こえない。
走ってるクルマは公務員かボランティア関係者だけ。
1年間放って置かれた土地に、太陽光は燦々と降り注ぐ。
放射能の権化のようなセイタカアワダチソウが、田んぼという田んぼににょきにょきと生えている。
庭先に、玄関先に、道路の割れ目に、商店街の崩れた塀の脇に…。

これでもか、これでもか、というぐらいの浸食度で、セイタカアワダチソウが、生えている。

同じ緑色だから、違和感は軽減されているけれど、
これが、青い…もしくは赤いセイタカアワダチソウだったら…。

1年間放置された結果、自分たちの土地が、自分たちの生活の場が、自分たちの古里が、
青い…もしくは赤いセイタカアワダチソウに占拠されていたら…。
いや、きっと小高区の住民には、このセイタカアワダチソウは青や赤に見えていることだろう。

キレイに稲穂が頭を垂れているはずだったこの季節に、
自分の田んぼ一面にセイタカアワダチソウが繁茂している…この光景。

悪夢以外の何物でもない…。きっと吐き気を催すだろう。

ボクらが草刈り作業をしている時に、そこの家主のおばあちゃんが労いに立ち寄ってくれた。
「ホントは私は一刻も早く戻ってきたいのよねえ、この家に」
「でもねえ、戻ってきても田んぼもダメだし、畑もダメだし、なにもすることないんだわさ」
「帰ってくるとさぁ、雑草に覆われた家になっててさぁ、どーっと悲しくなるんだぁ」
「だからねえ、こうやって草刈りしてくれるだけでも、ホント救われた気持ちになるんだぁ、ありがとうねぇ」

おばあちゃんの家族はバラバラの状態で、仮設住まいを強いられている…とのこと。
自宅を奪われ、家族の団らんを奪われ、生活の糧である田畑を奪われ…。

1年半という月日が無為に過ぎていく。これから先の5年、10年…というスパンで、今後も。
小高区に限らず…浪江町、双葉町、大熊町、富岡町、飯舘村、楢葉町、川内村、川俣町、葛尾村など
現在警戒区域、計画的避難区域、帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域とされている地域の被災者は、
自分たちの居住空間が掠奪され、生活の基盤すべてが掠奪されてもなお、辛抱に辛抱を重ねている。

そのことをわかっての「収束宣言」だったのだろうか?

そのことをわかっての「再稼働」だったのか?

そのことをわかっての「意見聴取会」であったのだろうか?

目には見えない放射能。しかし、おばあちゃんは言う。
「放射能で庭の植木が赤茶に枯れてるでしょ。普通はこんな枯れ方しないから」

見ると庭の植木が赤茶に縮こまったようなカタチで枯れていた。
もしこれが放射能によるものだとしたら…背筋が凍る思いがした。
確実に放射能はこの土地を穢しているのだ…。セイタカアワダチソウが田んぼに繁茂するように。

何事も行ってみて体感して、はじめてわかることがある。
今からでも遅くはない。ひとりでも多くの人が、南相馬小高区へ足を踏み入れることを。
そして、その真実で一刻も早くの「原発全廃」が宣言されることを。

この穢れに応えることができるのは、その一言しか、ないではないか!!








Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする