今日は「メインの森をめざして」の著者、
加藤則芳さんの誕生日。
加藤さんは今、筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病と闘っている。
筋肉の働きが運動ニューロンの変性に伴い、重篤な萎縮と低下に至る病い。
原因不明なため手の施しようがなく、
おそらく加藤さんは今、呼吸筋の萎縮と最期の闘いをしていることだと思う。
ボクは彼の存在を朝日新聞のコラム「人生の贈りもの」で知った。
すでに病は進行中で、この掲載日の時点で握力はゼロ、首を持ち上げるのも大変な状態だった。
そのような状態の加藤さんが、発病前の2005年4月から10月の半年、
アメリカ東部のアパラチアン・トレイル3500キロを踏破した…という事実を知って
ロングトレイルとはいったいどのようなものなのか、興味を抱いたのだった。
187日間という、尋常じゃない日数をひたすら歩き通す。
一日平均23キロ。当時56歳だった加藤さん。肉体的にも非常に過酷なトレイルだが、
なにより精神的なアップダウンは相当なモノだったと思う。
持病の頭痛が時折彼を苦しめる。
長年歩き続けたためのカラダの軋みが膝や足首などに顕れる。
30キロ近いバックパックの重みに嫌が上でも体力の衰えを感じる。
一時は本当に足の痛みに耐えられず、踏破断念の決断を迫られた。
それでもなんとか精神的に克服し、見事メイン州の100マイルウェルダネスを迎える。
学生のころ触れたヘンリー・デイヴィッド・ソローの名著「メインの森」。
市場原理主義アメリカのもう一つの顔、自然への造詣の深さを加藤さんはこの本で知り、
日本にその素晴らしさを伝えるライターとして、方々の山々を歩いたのだった。
その念願の「メインの森」。
登りながら、なぜか涙があふれてきた。この悠揚とした拡がり、この神々しい光、この山々の滑らかなうねり。
多くの人に助けられ、心を分かち合い、ときに共に歩き、それでもたいがいは、たった独りで、3000キロを超える距離を、
時に悦びと感動に浸り、時に脚や頭痛に苛まれながらも歩きつづけ、ようやくここまで辿り着き、夢見続けてきたメインの
広漠とした森の風景美の中を歩いている自分。いままでのさまざまな苦しみの5年間。それ以前からの、誰にでもあるだろう
心のアップダウンの記憶。そういったあれこれを思い出し、涙が止まらなくなった。
そして、この3000キロ以上の距離を歩くなかで、分かち合ってきた多くのバックパッカーとの交流。
そしてサポートしてくれた人々への感謝の気持ち、曲がりなりにもプロとしてのボクが、
これだけの苦しい思いをして、ここに辿りつき、これだけの感動を得ながら歩いている。
おそらくはボク以上に苦しみ、自らの人生を磨くため、あるいはステップアップさせるため、
あるいは見つめ直すため、さまざまな目的のためにめげることなく、自らに課した課題をクリアしようとがんばり抜き、
この同じ風景を、この同じ感動を味わっているだろう、バックパッカーのあの顔、この顔を想うと、感慨を抑えきれなかった。
まだ終わったわけではないのに。まだ400キロも残っているのに…。
感動できるという幸せを、しみじみと感じる。感動する心の大切さを、あらためて胸に刻んだ。
感想する喜びを知れば、それが生きる糧となる。その喜びを知れば、感動を求める気持ちがより強くなり、
より強い好奇心を生み、さらなる成長へとつながっていく。
すべての子どもに、この感動する心の大切さを伝えたい。感動は人生のステップアップのための、
大切な要素になるべきなのだ。自らの課題を課し、それを乗り越える。乗り越えたときの感動が、
次なるステップアップにつながり、次なる喜びに広がっていく。決して苦しみの拡がりではない。
(「メインの森をめざして」527p)
人間は自然の一部であり、自然は人間の一部でもある。
そんな当たり前の事柄も、現代社会は隔絶しようとしている。
加藤さんは数々の著作で、その驕った人間存在に警鐘を鳴らしている。
なにより、自然の中を歩くことで得られる「今、此処」に在る自分の尊さが、
素直につづられていて、読んでいて何度も胸が熱くなった。
何度も困難に打ち勝ってきた加藤さん。
ALSをも奇跡の逆転劇で、復活してくれるのではないだろうか。
そんな底知れぬパワーを秘めた人なのだから。
加藤さん、63歳の誕生日、おめでとうございます!
加藤則芳さんの誕生日。
加藤さんは今、筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病と闘っている。
筋肉の働きが運動ニューロンの変性に伴い、重篤な萎縮と低下に至る病い。
原因不明なため手の施しようがなく、
おそらく加藤さんは今、呼吸筋の萎縮と最期の闘いをしていることだと思う。
ボクは彼の存在を朝日新聞のコラム「人生の贈りもの」で知った。
すでに病は進行中で、この掲載日の時点で握力はゼロ、首を持ち上げるのも大変な状態だった。
そのような状態の加藤さんが、発病前の2005年4月から10月の半年、
アメリカ東部のアパラチアン・トレイル3500キロを踏破した…という事実を知って
ロングトレイルとはいったいどのようなものなのか、興味を抱いたのだった。
187日間という、尋常じゃない日数をひたすら歩き通す。
一日平均23キロ。当時56歳だった加藤さん。肉体的にも非常に過酷なトレイルだが、
なにより精神的なアップダウンは相当なモノだったと思う。
持病の頭痛が時折彼を苦しめる。
長年歩き続けたためのカラダの軋みが膝や足首などに顕れる。
30キロ近いバックパックの重みに嫌が上でも体力の衰えを感じる。
一時は本当に足の痛みに耐えられず、踏破断念の決断を迫られた。
それでもなんとか精神的に克服し、見事メイン州の100マイルウェルダネスを迎える。
学生のころ触れたヘンリー・デイヴィッド・ソローの名著「メインの森」。
市場原理主義アメリカのもう一つの顔、自然への造詣の深さを加藤さんはこの本で知り、
日本にその素晴らしさを伝えるライターとして、方々の山々を歩いたのだった。
その念願の「メインの森」。
登りながら、なぜか涙があふれてきた。この悠揚とした拡がり、この神々しい光、この山々の滑らかなうねり。
多くの人に助けられ、心を分かち合い、ときに共に歩き、それでもたいがいは、たった独りで、3000キロを超える距離を、
時に悦びと感動に浸り、時に脚や頭痛に苛まれながらも歩きつづけ、ようやくここまで辿り着き、夢見続けてきたメインの
広漠とした森の風景美の中を歩いている自分。いままでのさまざまな苦しみの5年間。それ以前からの、誰にでもあるだろう
心のアップダウンの記憶。そういったあれこれを思い出し、涙が止まらなくなった。
そして、この3000キロ以上の距離を歩くなかで、分かち合ってきた多くのバックパッカーとの交流。
そしてサポートしてくれた人々への感謝の気持ち、曲がりなりにもプロとしてのボクが、
これだけの苦しい思いをして、ここに辿りつき、これだけの感動を得ながら歩いている。
おそらくはボク以上に苦しみ、自らの人生を磨くため、あるいはステップアップさせるため、
あるいは見つめ直すため、さまざまな目的のためにめげることなく、自らに課した課題をクリアしようとがんばり抜き、
この同じ風景を、この同じ感動を味わっているだろう、バックパッカーのあの顔、この顔を想うと、感慨を抑えきれなかった。
まだ終わったわけではないのに。まだ400キロも残っているのに…。
感動できるという幸せを、しみじみと感じる。感動する心の大切さを、あらためて胸に刻んだ。
感想する喜びを知れば、それが生きる糧となる。その喜びを知れば、感動を求める気持ちがより強くなり、
より強い好奇心を生み、さらなる成長へとつながっていく。
すべての子どもに、この感動する心の大切さを伝えたい。感動は人生のステップアップのための、
大切な要素になるべきなのだ。自らの課題を課し、それを乗り越える。乗り越えたときの感動が、
次なるステップアップにつながり、次なる喜びに広がっていく。決して苦しみの拡がりではない。
(「メインの森をめざして」527p)
人間は自然の一部であり、自然は人間の一部でもある。
そんな当たり前の事柄も、現代社会は隔絶しようとしている。
加藤さんは数々の著作で、その驕った人間存在に警鐘を鳴らしている。
なにより、自然の中を歩くことで得られる「今、此処」に在る自分の尊さが、
素直につづられていて、読んでいて何度も胸が熱くなった。
何度も困難に打ち勝ってきた加藤さん。
ALSをも奇跡の逆転劇で、復活してくれるのではないだろうか。
そんな底知れぬパワーを秘めた人なのだから。
加藤さん、63歳の誕生日、おめでとうございます!