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沖縄→東京→竹野と流転する、bozzoの日々。

【高田渡】ブラザー軒 by 菅原克己

2008-09-07 | MUSIC
東一番丁、
ブラザー軒。
硝子簾がキラキラ波うち、
あたりいちめん氷を噛む音。
死んだおやじが入って来る。
死んだ妹をつれて
氷水喰べに、
ぼくのわきへ。
色あせたメリンスの着物。
おできいっぱいつけた妹。
ミルクセーキの音に、
びっくりしながら
細い脛だして
椅子にずり上がる。
外は濃藍色のたなばたの夜。
肥ったおやじは
小さい妹をながめ、
満足気に氷を噛み、
ひげを拭く。
妹は匙ですくう
白い氷のかけら。
ぼくも噛む
白い氷のかけら。
ふたりには声がない。
ふたりにはぼくが見えない。
おやじはひげを拭く。
妹は氷をこぼす。
簾はキラキラ、
風鈴の音、
あたりいちめん氷を噛む音。
死者ふたり、
つれだって帰る、
ぼくの前を。
小さい妹がさきに立ち、
おやじはゆったりと。
東一番丁、
ブラザー軒。
たなばたの夜。
キラキラ波うつ
硝子簾の向うの闇に。

    ●

高田渡を追跡。
YouTubeをチェックしまくる。

「坂崎幸之助商店」では、坂崎と電車の旅を、
「ニュース23」では、筑紫さんと「いせや」で語り…と
今頃になって、2005年の在りし姿を追いかけている。

2年前に山之口貘の詩から高田渡を知って、
CDを手にしてはいたけれども、
こうやってタカダワタル的なコメントの数々、
彼を取り囲む友人の表情などを見ていると、
その圧倒的な人柄に、また涙、涙、涙。

宮城県出身の詩人菅原克己さんの詩に
メロディをつけた「ブラザー軒」というのがあって、
これがまた、胸にがつんと響いてくる。

菅原克己「ブラザー軒」
高田渡一周忌…菅原克己「ブラザー軒」
【YouTube】高田渡/ブラザー軒

硝子暖簾のお店など、
今じゃどこにも見当たらないが、
戦争の犠牲になった父と妹が
今日も氷を食べに「ブラザー軒」へ
やってくる下りは、ホントに鼻先がつんと来る。

まして東一番丁…である。

「ブラザー軒」自体は、ちょっと記憶にはないけど
かつて小学生の夏休みに過ごした、
アーケードもない東一番丁の雰囲気が思い出されてくる。

そこには戦死した父と妹ではなく、
タカダワタルさんが、ひょっこりやってきて
ビールか焼酎をたのんでいる…ような気がする。

山之口貘さんといい、菅原克己さんといい、
ホントに素敵な詩人の詩を歌にされていたんだなあ…と
あらためてリスペクト。

しばらく追跡は止まらないだろう。





Comment (1)
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