Retrospective...

イラストレーター/ライター遠藤イヅルの困った嗜好をばらす場所

感覚的快適性能についての考察などを

2006-06-27 | フランス車全般。




先日のフレンチ・セダンを考える記事で、
「感覚的快適性能」という言葉を使ってみました。


ざっくり言うと、「快適」という感覚って人それぞれなんですよね。
これは、まさに感覚の問題であって、一概に決まっているモノではないです。


一般的なクルマに求められる快適さとは
ここちよいエアコン、よいオーディオ、気配りのある小物入れなどの諸装備、
胸の空く加速をもたらすエンジン...
と言った感じでしょう。それは当然、僕も欲しいです。。
では、ルノーなどのフランス車が持っている、「感覚的快適性能」って、何でしょうか。

それは「バイオリズム」などといった、
人間本来が持つ「内面的な部分」にまで心地よさを抱かせる性能...
とでも言えばいいのでしょうか、
それは数値では表しにくい部分だったりしますし、
絶対品質やハイテクの有無、装備量に比例しないのも特長ではないでしょうか。



フランス車の良さというのは、この
「感覚的」な心地よさだと思うのです。
乗り心地、揺れ方のリズム、ゆらぎ。
シートの気持ちよさ、操作系のタッチ、
車室内の「間合い」、「雰囲気」。デザイン。「居心地がいい」車内。
ヒーターの優しさ(そう...なぜかフランス車のヒーターは柔らかい)、
メーター類をはじめとする視覚的要素が運転を阻害しない...などなど、
これらの項目は、みな感覚でしか評価できないもの。


だから、この「快適さ」というものは外に出にくいし、わかりにくい部分でもあります。
多くのクルマが、新しい装備や目新しさにセールスポイントを置くのはそのため?
だから、例えば「快適さが一番のウリ」ともいえるルノーが我が国では売れにくい...
というのもまた、事実でしょう。
先日のwebCGの新型ルーテシアの記事から引用すると、
「(セールスポイントが)今の一般的なニーズから外れたところにある」
と有りますが、まさに、その通りです。


だけど、この「快適さ」を知ってしまうと、
びっくりギミックの床下収納折り畳み式の3列シートも、
派手なエアロパーツも、過剰とも言える自動装備も
あまり欲しくなくなって来ます。
クルマに求めるものが、そういうギミック的な部分ではなく
「内面的な快適さ」に移ってしまっていくからです。



話はちょっとそれますが、
仏車の心地よさにはある意味、日本的なところがあると思います。

たとえば、本来の日本家屋が持っている快適さというのは、
現代の、機器がもたらす快適というベクトルとは大きく外れています。
だけど、日本家屋は(建てられている状況次第だが)、
本来とても心地よいものだと云われています。
漆喰の壁は呼吸するかのように湿度を調整し、
室内には壁はあまり設けず移動式の障子・襖を設置して
風通しを考慮...などの機能もそうなのですが、
心地よい「間」の取り方なども含めて、
それらには感覚的な心地よさが散見されると思います。

夏、冷えた畳の上で寝ころんで、
夏の涼風を感じつつ寝ころんでいるような、そして
冬、縁側でひなたぼっこをしているような、そんな居心地のよさ。
思い出しただけでもこころがふわっとするようなこれらの感じというのは
数値では表せないし、技術が優れているからといって得られるものでもない...。
そんなことを思う、梅雨の晴れ間のある一日なのでした。







>>ひょっとしたら、ルノーやフランス車は
「1/fゆらぎ」を持っているのかもしれませんね。
「1/fゆらぎ」とは、 ろうそくの炎、そよ風、小川のせせらぎなどの様々な自然現象、
人の心拍の間隔、クラシック音楽、 手作りのものなどが持つ、「人間が心地よいと思う」
自然界に存在するリズムのことです。
「1/fゆらぎ」のリズムは、ラジオのノイズの「ザー」という音と
メトロノームの規則正しい音とのちょうど中間にあたるそうです。
これは、不規則さと規則正しさがちょうどいい具合に調和している状態...。仏車っぽい!?

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16 コメント

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スクールie、開講 (サボテンTS)
2006-06-27 22:11:51
昔からの日本の美意識、それは『あるがままを受け入れる』ではないかなんて思ったりします。日本の夏は暑く、湿気があって当たり前。ただ、それをどう受け止めるか。

そう考えると日本の自動車も、走っていれば揺れて振動して音が出て当たり前、ただそれをどう丸めるか、で良さそうなのに、パッと感じる路面当たりを曖昧にし、無闇に計測音を消す。四季があるのにそれを考慮しない内装。だから日本独自の自動車が生まれないのかもしれない・・・



本文とずれてしまったら申し訳ございませんが、色々考えさせられて有り難い記事でした。







・・・なんて重い感じだと、皆さんのコメントをブロックしてしまいそう。

そうなったらすみません。
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フと (サボテンX(←久しぶりに))
2006-06-27 22:14:29
なんか日本のメーカー、“快適”と“便利”の区別が付いてないのかもしれません。

 

ところでアヴァンタイムのシート透視図、どちらから?
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Unknown (mucchi@R9)
2006-06-28 13:40:08
すごーく同意。



思うに日本人て、根っこの部分では車が好きじゃないのかもしれない、と思います。

だからキラキラにしたりやたら高機能じゃないと駄目なのかも知れない、とか。
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決断力 (しんパチ)
2006-06-28 18:49:33
ieさんの言われるような感覚って、すごく大切なんだけど、「これでOK」っていう決断するにはとっても勇気がいるというか、難しい部分があると思うんですよ。

特に車みたいに多くの人が関わって完成させる物の場合、その判断を誰がいつやるか…そういう仕組みを作れないのが日本の企業体質なんだと思います。だから数値で判断できる部分を延ばしてきたんじゃないかなと。

もひとつ、フランス人とかは、共通の感覚として、あの乗り心地を持っているんでしょうね。

その一般性と決断をするべき人の配置、この辺が日本のメーカーと大きく違っているような気がします。



とかなんとか、とても感覚的な意見を適当に書いてしまったのですが(笑)、ieさん、この車とか、いかがです?

このシートでオープン…乗ってみたいです。

http://cgi.ebay.com/ebaymotors/1987-AMC-Renault-GTA-Convertible_W0QQitemZ290000686127QQihZ019QQcategoryZ6385QQssPageNameZWDVWQQrdZ1QQcmdZViewItem
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なんか、 (ubar)
2006-06-29 00:04:31
ieさんのおっしゃること分かります(^^



日本の組織って責任を与えているようで、実はいろんな人の許可やら承認やらが必要で、そうなると主観的な評価というのが通りにくくて、客観的な評価が必要になる。客観的に評価すると、数字で評価できる方が都合が良いのかなぁ、なんて思います。的外れですいません(^^;
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製品の難しさ (ie)
2006-06-29 00:55:04
サボテンTSさま>

>ただそれをどう丸めるか、で良さそうなのに

これほどまでに感性豊かな我が日本なのに、車作りはなかなか良くなりませんね。というか、ますます僕が望んでいる方向から逸脱している気がします。

ところで仏車の足回りのすばらしさは、簡単な構造なのにきわめて高い水準でバランスが取れているのですね。地面の入力に対してそれをまさに「どう丸めるか」という風に考えているのではないでしょうか。

クルマの懐が深いとでもいうのでしょうか...ああ、書きたいことはいっぱいありますw

>“快適”と“便利”の区別が付いてない

そんな感じします。それと、”高級”と”上質”の区別がイマイチついていないことも...。

>ところでアヴァンタイムのシート透視図

ググりますた(汗



mucchi@R9さま>

>思うに日本人て、根っこの部分では車が好きじゃない

それは言えるかもしれないですね。道具として、という点では同じなのでしょうけれど、そこから先の扱い方はまるで違いますし。ほんとうに好きならば、いったい何を望むか、ということで言えば、スバルのクルマに多くの「クルマが大好き!」と



しんパチさま>

>難しい部分があると思うんですよ。

ですよね...あれだけの部品があって、多くの人が関わって。でも、でも欧州メーカーの多くは、あれほどまで「このメーカーでしか作れない車」というのを生み出しています...これってすごいことですね、良く考えると...。

>共通の感覚として、あの乗り心地を持っている

それはあるかもです。日本の場合は、ちょっと前まではしまりのないフワフワな乗り心地が「よいもの」とされていたような気がします。

>どう

GTA...こういう手もありですねえ(爆



ubarさま>

お仕事のほう、いろいろ拝見するとナンデ?ドシテ?って僕も思うことばっかりです。頑張ってくださいね...

>客観的に評価すると、数字で評価できる方が都合が良い

そうですね。結局、評価ってそうなってしまうのでしょうね。的はずれでは無いですよ!すごく納得しました...

結局最後とりまとめる人が、クルマが好きじゃない...ということだったりして...マツダやスバルのように、主査がクルマ好きだと「感覚評価」を大事にするそうです。

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難しくて当たり前 (サボテンTS)
2006-06-29 01:15:36
uberさんの言ってるコト、私も的を射てると思います。

ただ単に、数値で示す=誰にでも(つまり見識が深くなくても)分かりやすく、と同時に責任を回避できるというのが大きいのではないかと。
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ありがとうございます(^^ (ubar)
2006-06-29 21:46:13
ieさん、サボテンTSさん、ありがとうございます (^^

最近ちょっとヘコんでるので、的を外してるか分からないんですよ~(汗;



エンジニアとしては数値化されたほうがチューニングしやすいのではないかなぁと単に思っただけでした(^^;

でも、なんでもそうだと思うのですが感覚的に良いものの方が息が長い気がします。

ただ、感覚的にどうこうというのは、それを人に伝えるのが難しいのかなぁ。。

テストドライバーがうんぬん言っても、自分でいじるんではなくて別の人がいじるんだったらやっぱり難しいのかもしれません。
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感覚的不快性能 (寿)
2006-06-30 00:12:32
感覚的快適性能かー。

分かります。しかしこれ、みんながみんな感じるものではないと思うんですよ。

ieさんのように感覚の鋭敏な方が特に感じるものだと思います。

乗れば分かるといっても、乗っても分からない人っていっぱいいると思うんですよ。

それよりも目に見える表層の快適性能を求める人が大多数なのでは?

写真しか見てないですが、レクサスの内装とかひどいですよね。

わびさびの欠片も感じられません。

あれを良しとする人がいっぱいいるんですよ。

本物を知らないのではなく、本当にあれをいいという人が。

こないだ池袋のアムラックス行ってトヨタ車見てきましたが、気分が悪くなりました。

ひどすぎます。

乗ってもいいかなと思える車が1台もありませんでした。

また、古くはケータイのデザイン。

ひどかったですよね。最近、ものによってはちょっとマシになりましたが。

ちょっと信じられない感覚がいっぱいあるのです。



あまりに鋭敏な感覚は世間から必要とされません。

ムム?そういうことではないかな。

需要が少なく、ごく一部の層にしか必要とされないということですね。

量をはけるためには、消費者に迎合しなければなりません。

本質的、先鋭的に見せかけるという迎合の仕方もあります。

こういう手法はほんと気分悪いですよね。

孤高に見せかけて、その実バッチリ迎合しているもの。

見たくないです。



なんかとりとめもない長文すみません。

ただ、現在のネットワーク社会はフランス車に有利になってくるかもしれませんね。

フランス車ユーザーの思い入れって強いですから。

みなさん、その思い入れを語ってくださるので、感化される人も多くなりそうですね。



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Unknown (ie)
2006-06-30 02:18:53
サボテンTSさま>

>責任を回避できるというのが大きい

そうなんですよね。結局のところ、数値で表すのが実際はいちばん合理的で、わかりやすいんですよね。

クルマというものは特に、(決して悪口ではなく)「クルマはどうでもいい」という方も多いわけで、感覚性能を謳ったとしても売れないというのは仕方がないことなのかも知れません。だから?僕はいろんなひとに「仏車はいいですよ!」って、説いているのかもしれないです^^;



ubarさま>

>感覚的にどうこうというのは、それを人に伝えるのが難しいのかなぁ

そうなんですよね。ルノーを例に取れば、ディーラーの多くで営業マンに馬力やら安全性のトークをされる。でも、ほんとうのフランス車のアメニティはそういうことではない、という事を説明して欲しいと願います。



寿さま>

>みんながみんな感じるものではないと思う

>表層の快適性能を求める人が大多数

そうなんですよね。そうなのです。

繰り返しちゃうけど、だからこそ僕は訴えているのかもしれないです。

何か、どんどん大事なモノを無くしている気がするのです。それはクルマに限らず、いろんなことにおいて。

>量をはけるためには、消費者に迎合しなければなりません

我が国では、某ホンダの現行オデッセイや今度のストリームのように一時の受け狙いのようなデザインになってしまったり、それをまんまパクって売りまくるトヨタのクルマが良く売れますよね。だけど、彼の地では、車作りは今でも真摯です。あくまでも足回りとエンジンに、基本的にはオカネかけていると思います。それは消費者が求めているレベルが(高い低いの比較ではなく)違うのでしょうね。そこには迎合という感覚はあまり感じません。本気で作っている感じがしますものね。



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