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「ダ・ヴィンチ・コード」と「天使と悪魔」

2009-04-06 | 読書
ダン・ブラウンの「天使と悪魔」を一気に読んだ。その前に読んだ彼の「ダ・ヴィンチ・コード」で、日本人になじみの少ないキリスト教のドロドロした歴史を、彼の膨大な蘊蓄で知り得た。キリストを神の子とするために、いかにカソリック教会が反対するものたちを異端者審問や魔女狩りで虐殺し抹殺してきたかが、ミステリー仕立ての小説にもかかわらず、新鮮な知識として堆積した。こんどの「天使と悪魔」は、バチカン公国の教皇を決めるコンクラーベの間に、教皇の死そのものが毒殺であることが分かったり、新しい教皇の4人の候補者が次々に殺されるというあらすじもなかなか面白かったが、ブラウンがもっとも書きたかったのは、バチカンのローマ教会が科学をいかに敵視し、弾圧してきたかを赤裸々に告発したことだと思う。そしてさらに彼は教会の枢機卿に近代科学の人間性を無視した道をも告発させる。

 キリスト教とは比較的無縁の生活をおくってきたわれわれは、ローマ教会のこのような非道の歴史を知ることもなかったし、西洋近代科学を多くの人はただ人類の希望とだけ見てきた。しかし、キリスト教や近代科学を生んだ西欧では、両者のあいだの血で血を洗う戦いがあったことが、ブラウンの小説によって明らかになる。あらためてわれわれが教わってきた世界史とは何であったかを考えさせられた。

 ローマ教会=バチカン公国の衰退はもはや明らかだが、ブッシュが信奉していたキリスト教原理主義はいまだにアメリカの3分の1の州でダーウィンの進化論を教えることを禁じている。そして現代の異端者審問と魔女狩りは、アフガニスタンやイラクで続いている。同じ神を信じているユダヤ教やイスラム教と血で血を洗う諍いを続けている。

 しかし、勝利しつつある科学といえども、その発展が人類を不幸に導いていることも明らかになっている。ブラウンの小説は西欧の行き詰まりを面白い謎解きで描写しているが、人びとがその謎解きの面白さに本質を読み切れないおそれは強い。ダ・ヴィンチ・コードの映画は見ていないが、はたしてブラウンが書きたかった文明の底流に流れる葛藤を映画でどれほど表現できたのだろうか。

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