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サンナシ小屋&京都から世界の愛する人たちへ

天使シリーズの「鬱屈」

2009-04-26 | 読書
「ダ・ヴィンチ・コード」や「天使と悪魔」の翻訳をした越前敏弥が翻訳をしたアンドリュー・テイラーの天使3部作といわれる小説の最後の「天使の鬱屈」を読んだ。この3部作は、高齢となった主人公の女性が昔を振り返りながら、1950年代、1970年代、1990年代の時代毎に1904年に起こったある事件が関係する人たちのその後を追いながら、それぞれの時代の歴史ミステリーを架空の人物に基づいて推理するという、かなり凝った構想の上にしかも時代をさかのぼるという逆経時的にシリーズを書いたものであるということが、読んだ後に気づいた。私が読んだ「天使の鬱屈」は、そのもっとも古い時代を書いた歴史推理小説で、しかももっとも新しく出版されたものだった。

 舞台はイングランドの田舎にある大聖堂の「囲い地」。教会の「囲い地」というものがどういうものかは、日本人には想像もしがたいが、どうやら聖職者たちの家族とその使用人以外は立ち入ることのできない巨大な扉と塀に囲まれた住宅地らしい。だからそこに住む人たちは、一種特権的な立場であり、閉鎖的な社会を構成している。キリスト教会に依存し、それを社会のすべてと感じる人が中世以来連綿と続いて存在したことは、先の「ダ・ヴィンチ・コード」や「天使と悪魔」でも書かれているが、キリスト教と無縁の生活をしてきた私にとっては、いまだ驚きである。

 謎とその謎解きは、あまりおもしろいミステリー小説とは言えない(聖職者という非生産的な人間たちの存在がぴんと来ないし、関心も持てない)が、食人や近親相姦などのグロテスクな事実が、オブラートにくるみながらも身近なところに存在することを予想もしない展開で読ませるのは、女性作家ならではの感がある。これから順に「天使の背徳」「天使の遊戯」と読みたい気持ちにさせられている。この小説で彼女は英国推理作家協会賞最優秀歴史ミステリー賞を受賞した。

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