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映画「日本の青空」を見て

2008-02-24 | 政治
映画「日本の青空」を鑑賞した。戦争中、反政府の集会に参加して治安維持法違反第1号で特高警察に捕まり、拷問されたあげく懲役3年の刑に服した憲法学者鈴木安蔵が、戦後大内兵衛や森戸辰男などと憲法研究会を組織して、独自の憲法草案を作り政府やGHQに提出し、最終的に日本国憲法のGHQ案に大部分取り入れられた顛末を映画にしたものだ。現在の日本国憲法がアメリカから押しつけられたという非難を意識して、いやそうではない、日本人たちの憲法草案をGHQが取り入れたものであったと明らかにした映画である。かなり前から映画評は聞いていたので一度みたいと思っていた。

 この映画で新しく教えられたことが二つあった。一つは鈴木安蔵らの「日本国憲法草案」の自由と人権、民主主義の基本は、明治初期の植木枝盛や板垣退助らの自由民権運動があったことである。日本国憲法の国民主権と自由主義は植木枝盛の「東洋大日本国国憲按」をその始原としていることがよく分かった。植木枝盛の憲法私案には「国民主権」「抵抗権」「革命権」「不服従権」などが盛り込まれている自由民権運動の中でもっとも現代の民主主義に近い内容だったと言われている。

 昔、高校の日本史の卒業試験に自由なテーマで作文をせよという問題が出されて、明治維新は単なる支配階級間のクーデターに過ぎず、本来の民主主義革命は自由民権運動の中にあったが実現しなかったと書いたことを思い出した。日本では結局近代の革命を経験しないで、お隣の中国で孫文らが辛亥革命を起こして秦帝国を滅ぼしたことと日本の近代は対極にあった。しかし戦後アメリカの占領下という事情があったけれども、この日本国憲法の作成過程こそが日本の近代革命となったのだった。

 もう一つ教えられたことは、「女性たちが参政すれば戦争がない国が出来る」という信念で22条の男女同権と9条の戦争の放棄が書かれたことだ。自分の子供や夫を戦場に送りたいとは思わないのが女性だという。もう二度と戦争はいやだというのが当時の女性たちの偽りのない気持ちだっただろう。それはしかし、男性も多くはそうであったはずだ。日の丸の小旗を打ち振って出征兵士を万歳で送っていた国防婦人会の女性たち。映画はそれは女性が自分たちの声を出せなかった政治体制だったからだと言う。

 いま、形の上では男女同権が進んだ。女性の参政権をだれも否定する人はいなくなった。それでもコイズミ内閣の有事法制などの戦争政策に日本の女性たちはダメだというサインを送らなかった。またまた日の丸を振る国防婦人会がいつのまにか作られてきている。歴史は繰り返すのだろうか。それとも憲法を守って平和な日本を続けられるのだろうか。国民投票法が成立して5年たったら改憲案を提出しようと自民党は虎視眈々と狙っている。気を抜いてはいけない。憲法をむしろ世界に発信していくことこそ必要ではないか。5月4-5日、憲法九条を守る国際会議が開かれる。それに向けて広島から「平和の行進」が今月から始まった。

関東では春一番が吹いて寒くなった。日本の青空がいつまでも希望であり続けられるように。