浅尾弥子のノンジャンル道

 
 富山県小矢部市のシンボルキャラクター・メルギューくんの
 お姿をお借りして、日々更新。

「三の隣は五号室」

2020-05-21 23:09:33 | BOOK
大体において、小説の主人公は、
人間もしくは動物であります。

シカァシ、この作品においては、
「第一藤岡荘」の「五号室」が、
それにあたります。



ん?
アパートの一室が、主人公???
ハハハ、そんなことが、できるわけ・・・あるのでっす。



「三の隣は五号室」

谷崎潤一郎賞受賞作(2016年)。
著者は、長嶋有さん。

「サイドカーに犬」(2001年)で文學界新人賞を受賞。
同作が芥川賞の候補作に挙がったことで、
その名を知ったかたも多いのでしょう。
半年後、「猛スピードで母は」で芥川賞受賞(2002年)。
当時、29歳でした。



とある町の、アパートの一室。

1代目の藤岡一平が住んでいたのは、1966年から1970年。
その後、二瓶夫妻、三輪密人、四元志郎、五十嵐五郎・・・と
引っ越してきては、それぞれの事情で、出てゆきます。

とはいえ、
時系列はバラバラ。

部屋のなかにある設備、物、音、あるいは乗り物などで、
話がくくられているので、
読者は、その都度、タイムスリップする形になります。

その感覚が、なんとも、心地いいのでっす。



地の文章が、また、いいんですな。
淡々と、その状況を説明しており、
余計な感情をはさんでいないから、
かえって、登場人物の心情が浮かび上がってきます。

「五号室」は、こんな風に、
住人を見守っていたのかなあ。



特段、何事かに秀でていない、
ごく一般的な市井の人々。
彼ら、彼女らの、ありふれた日常に、
ある時は、こころが逸り、ある時は、しみじみとします。

ミツコが、印象に残ったのは、六原夫妻。
う~ん。
互いを思いやる気持ちには、勝てないぜ。



なぜに、「三の隣は五号室」なのか~?
ちゃ~んと、謎解き(?)もされていますので、
気になるかたは、ぜひ、書店にて、お買い求めくださ~い。

「三の隣は五号室」
著:長嶋有
中公文庫

明日もがんばるぞ!
コメント
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