民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「雀宮の由来」 リメイク by akira

2012年01月05日 21時34分27秒 | 民話(リメイク by akira)
  むかぁーし むかしのことだ。

 (この)宇都宮の町に たちの悪い病気が はやったことがあったと。
その病気ってのはな、高い熱が 何日も続いて、身体中に ブツブツができるんだと。
そんで、その病気にかかると、たいがい 死んじまう っていう、おっかねぇー 病気だったと。

 最初は、体力のねえ子供たち、そして、おじいさん おばあさん、
しまいには、元気のいい 若いモンまでが、その病気にかかって 死んでいったと。

 (そんな)ある日のこと 長老は 町のモンを みんな 集めて 言ったと。
 「なんかのたたりだんべか、どうしたらよかんべ。」
だけど、「ああでもねぇ、こうでもねぇ。」言うばっかりで、
ちっとも いい知恵が 浮かばなかったんだと。

 そんな時に、旅の途中らしい 偉そうなお坊さんが 通りがかったと。
長老は このお坊さんなら なんとかしてくれそうだ ってんで、呼びとめて 話を聞いてもらったと。
 お坊さんは 長老の話を 最後まで聞くとな、数珠を取り出して、なにやら お念仏を唱え始めたと。
(・・・・・・・)どれくらい たったかな。
突然 なんか閃いたように カッと目を見開くと、みんなに言ったと。

 「この病気は この町の 南の方から 入ってきているな。
そこに神社を建てて 祈願すれば、この病気は入って来なくなるぞ。」
 それを聞いて 町のモンは、「ほんとだんべか。」って、みんなで 顔を見廻したけどな、
 「まぁ やってみんべ。」って、いうんで、神社を建てることにしたと。

 神社ができると、町のモンは 毎日 みんなで、
 「早く 病気がなくなりますように。」 一生懸命 お願いしたと。
 すると、一ヶ月もしないうちに その病気にかかるモンが いなくなったと。 
そればかりじゃねぇ、寝込んでいたモンも 元気になって 起きられるようになったんだと。

 「あぁ~、あのお坊さんの言った通りじゃ・・・お礼を言わなきゃ。」
みんなで お坊さんを捜しに行ったんだけど(な) 見つからなかったんだと。

 それからっていうもの、その神社のことを 悪い病気を鎮(しず)めてくれた って いうんで、
「しずめの宮」って、呼ぶようになったんだと。
 だけど、それが いつのまにか「すずめの宮」って、呼ばれるようになったんだと。

 おしまい

「嫁が見たら蛙(かえる)になれ」 リメイク by akira

2012年01月01日 13時10分52秒 | 民話(リメイク by akira)
 むかーし むかしのことだ。

 あるところに、ばぁさんとよめさんがいたと。
ばぁさんは えれぇー 食い意地が張っていてな、よそから なんかもらっても、
ちーっとも よめさんには やんねぇで、全部 自分一人で 食っちまうんだと。

 ある時、ばぁさんが 用があって 出かけようとした時、
となりん家(ち)から、重箱に入った ボタモチをもらったんだと。
「おう、こりゃ、うんまそうな ボタモチだ。」って、すぐにでも食いたかったんだけどな、
ばぁさん、出かけなきゃなんねぇ。
「しょうがねぇ、あとで 食うべ。・・・それまで、嫁さんに見っかんねぇように、隠しとくべ。」
って 戸棚にしまいながら、ばぁさんは 重箱に向かって 
「いいか、ボタモチ、おめぇーたち、よく聞けよ。
もし 嫁が重箱開けたら、おめぇーたち、カエルに化けるんだぞ。」
って言って、出かけて行ったと。

 ところが、そのようすを、嫁さんが ずーっと見ていたと。
「なんだべ、ばぁさま、また 一人で 食う気だな。・・・どれどれ。」って、重箱 開けてみると、
なんとも うんまそうな ボタモチが一杯入っていたと。
嫁さん、思わず ひとつ つかんで、アングって 食ってみると、ほっぺた おっこちるほど、
うんまくって、アング アングって、とうとう 重箱まるごと 食っちまったんだと。

 そしたら 嫁さん、裏の田んぼから カエルいっぱい 捕まえてきて、
重箱の中に ギッシッ ギッシッ つめこんで、暴れねぇように フタをして、戸棚に戻しておいたと。

 しばらくして ばぁさん 帰って来て、
(どれどれ ボタモチ 食うべ)って、戸棚を開けて 重箱を取り出し フタを開けると、
中にいたカエルが ピョンコ ピョンコ 飛び出してきたと。

 ばぁさん、あわてて、
「こら、ボタモチ! 飛ぶんじゃねえ! おら、嫁じゃねえ、・・・ばぁだ!
カエルになんなくていい! あぁあっ、そんなに飛んだら、あんこが落っこちまうべ・・・。」
 って、あっちこっち 追っかけたけど、
とうとう ボタモチみーんな、田んぼに 飛び込んじまったんだと。

 いきがポーンとさけた。